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第四章 幸せに
挙式 ヴァイオレットSide
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挙式はシンプルだった。
花嫁衣装だけはエリオットが宝石とレースや刺繍を贅沢に使ってくれとリクエストしてくれたため、非常に豪華で素晴らしかった。しかし、花嫁衣装以外は民のことを考えて贅沢は控えた。私も純斗もアパートで暮らしていた身だ。質素な方が落ち着いた。
貧富の差もなく教育が受けられる世の中になって欲しい。働きながら自分で学費を稼ぐことの難しさ、生活していくことの難しさ。そのいずれも私も純斗も知っていた。彼は売れっ子若手俳優で人気者になっていたが、私の働くファーストフード店に通っていた頃はそれほど仕事があったわけではなかったと思う。
どこまでも広がる青空はあの日が、無かったかのように爽やかに広がっていた。夏の淡いオレンジや淡い黄色の薔薇が大輪の花びらを広げて強い香りを漂わせている。
エリオットが指輪をはめてくれた。シンプルで小さなダイヤモンドがあしらわれ、中央に透明な輝きを誇る大きめのダイヤがある指輪だ。
前回、私はどこで間違えたのだろう。
私はヒューと前回恋に落ちて、罠に嵌められて婚約破棄されて、無惨に処刑された。
色々反省点はある。
今回の人生は贈り物だ。身の引き締まる思いで、私はハープスブートの王妃となった。多くの人に助けられて生き延びた結果だ。
謙虚に人を見つめて、人から目を逸らさず、何より己から目をそらさず、驕らずに自己研鑽に励もう。一歩一歩、歩いて行こう。
私の目の前にはエリオットがいて、私たち二人が星空を見上げて焚き火越しに語り合った夜からずっと、同じアパート、同じ大学、私のバイト先と二人がそれぞれ駆け抜けた日々を後ろに、私たちは前を向いて歩くのだろう。共に互いを信じ合える人だと確信できる。
レースのヴェールをあげたエリオットが、私にキスをした。ステンドグラス越しに光が降り注ぎ、綺麗に整えられたブロンドの髪型と碧い瞳の彼は別人であるかのように心ときめく輝きを放っていた。彼の瞳の奥に未来が見えるようだった。
多くの参列者が祝福してくれた。あの日の後悔を共に後ろに置いて、私たちは前に進もうと思った。
エリオットにエスコートされて歩いて大聖堂を出る時、ヒューと魔導師ジーニンと目があった。私は万感の思いで彼らにうなずいた。
今までありがとう。
これからもよろしくお願いします。
私たちが駆け抜けたあの夏は終わる。大学の構内に咲いた鮮やかなブルーサルビアの花とその香りが消える頃、私はハープスブートの聖女に戻ろう。
ブルーサルビアの花言葉は「永遠にあなたのもの」、サルスベリの花言葉は「あなたを信じる」だ。
一歩、一歩、歩くたびに胸が高鳴る。純白の花嫁衣装は一度きりだ。前回着ることなく命を散らせた聖女は最愛のハープスブートの王と結ばれた。
さらりとした夏の空気と一緒に、太陽の煌めきと共に希望の光が舞い降りてきた。
花嫁衣装だけはエリオットが宝石とレースや刺繍を贅沢に使ってくれとリクエストしてくれたため、非常に豪華で素晴らしかった。しかし、花嫁衣装以外は民のことを考えて贅沢は控えた。私も純斗もアパートで暮らしていた身だ。質素な方が落ち着いた。
貧富の差もなく教育が受けられる世の中になって欲しい。働きながら自分で学費を稼ぐことの難しさ、生活していくことの難しさ。そのいずれも私も純斗も知っていた。彼は売れっ子若手俳優で人気者になっていたが、私の働くファーストフード店に通っていた頃はそれほど仕事があったわけではなかったと思う。
どこまでも広がる青空はあの日が、無かったかのように爽やかに広がっていた。夏の淡いオレンジや淡い黄色の薔薇が大輪の花びらを広げて強い香りを漂わせている。
エリオットが指輪をはめてくれた。シンプルで小さなダイヤモンドがあしらわれ、中央に透明な輝きを誇る大きめのダイヤがある指輪だ。
前回、私はどこで間違えたのだろう。
私はヒューと前回恋に落ちて、罠に嵌められて婚約破棄されて、無惨に処刑された。
色々反省点はある。
今回の人生は贈り物だ。身の引き締まる思いで、私はハープスブートの王妃となった。多くの人に助けられて生き延びた結果だ。
謙虚に人を見つめて、人から目を逸らさず、何より己から目をそらさず、驕らずに自己研鑽に励もう。一歩一歩、歩いて行こう。
私の目の前にはエリオットがいて、私たち二人が星空を見上げて焚き火越しに語り合った夜からずっと、同じアパート、同じ大学、私のバイト先と二人がそれぞれ駆け抜けた日々を後ろに、私たちは前を向いて歩くのだろう。共に互いを信じ合える人だと確信できる。
レースのヴェールをあげたエリオットが、私にキスをした。ステンドグラス越しに光が降り注ぎ、綺麗に整えられたブロンドの髪型と碧い瞳の彼は別人であるかのように心ときめく輝きを放っていた。彼の瞳の奥に未来が見えるようだった。
多くの参列者が祝福してくれた。あの日の後悔を共に後ろに置いて、私たちは前に進もうと思った。
エリオットにエスコートされて歩いて大聖堂を出る時、ヒューと魔導師ジーニンと目があった。私は万感の思いで彼らにうなずいた。
今までありがとう。
これからもよろしくお願いします。
私たちが駆け抜けたあの夏は終わる。大学の構内に咲いた鮮やかなブルーサルビアの花とその香りが消える頃、私はハープスブートの聖女に戻ろう。
ブルーサルビアの花言葉は「永遠にあなたのもの」、サルスベリの花言葉は「あなたを信じる」だ。
一歩、一歩、歩くたびに胸が高鳴る。純白の花嫁衣装は一度きりだ。前回着ることなく命を散らせた聖女は最愛のハープスブートの王と結ばれた。
さらりとした夏の空気と一緒に、太陽の煌めきと共に希望の光が舞い降りてきた。
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