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第三章 囚われの身から幸せへ
三角関係!? ヴァイオレット目線
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初めて会った爽やかな青年に抱きしめられた。ヒューと同じ褐色の髪をしていて、煌めく瞳で私を見つめる感じは確かに何となく面影が無いとも言えない。驚くほどスタイルも良く、足が長くて背が高い。髪の毛をかきあげる仕草も似ていなくもない。つまり、どことなくヒューに似ているのだ。
「大丈夫だ。ヴァイオレット、俺はここにいるから」
低い声もどことなくヒューの言い方に似ていはいる。人を包み込むような包容力も似てはいる。生まれ変わってもこれほどの美青年だとは思わなかった。
私の心臓はドキドキしてしまった。思わず顔を見上げる。
「本当にヒューなの?」
「そうだ。全部記憶が蘇った。ショッピングモールのフードコート、レキュール辺境伯でのプロポーズ、それから僕たちのその初めての……「分かった!!分かったわ!記憶が蘇って良かったわ!」」
私はそれ以上言わせなかった。皆の前では、特に純斗がいる前ではその話はダメだ。
人気若手俳優の顔をした純斗が嬉しいようななんだかイラつくような、複雑な顔をして抱き合っている私たちを見つめている。魔導師ジーニンはわけが分からない顔をして見つめていたが、ヒュー王子がどうやら戻ったようだと安堵の表情を浮かべた。
「整理すると、2回目の人生で私はヒュー王子を異世界転生させたということですね。1回目の人生で私が異世界転生させた人は2人いました。ヴァイオレットお嬢様と、ラントナス家最後の王位継承者のレキュール辺境伯です。私は彼にも異世界転生クラスを使いました。ですが、どうしても彼が見つからないのです」
魔導師ジーニンは、人気若手俳優っぷり全開で私を腕組みして見つめている純斗に気づいていない。
私は咳払いをした。純斗のことをどのタイミングで伝えれば良いのか分からない。
「俺だ。ジーニン。ラントナス家最後の王位継承者のレキュール辺境伯は俺だったんだ」
純斗はヒューだと名乗るスーツを着た青年と私の間に足を踏み入れて、私たちを引き離すようにしながら、魔導師ジーニンに宣言した。
「えっ!」
サミュエルと魔導師ジーニンは、一瞬で「まずいっ」と言った表情になった。
「レキュール辺境伯は聖女に惚れていらっしゃったでしょう?」
サミュエルのつぶやいた言葉に私が真っ赤になった。
「そうだ」
純斗は毅然とした態度で、ヒューと名乗ったスーツ姿の青年に挑むように言った。
「今日は僕が学校に送ろうか。ポルシェやフェラーリでなくても行けるよ」
私は純斗の言葉に目をしばたいた。
「事務所の迎えの車がもうすぐ着く。デカいワゴン車だから、ゆったりだよ」
何のバトルなのか分からない感じになってきた。私はドキドキのため息をついた。中学生がスマホで私を撮りながら「聖女ってモテるんだね」と訳知り顔で言ってきた。
私はすかさず中学生をきっと睨んで「大人を揶揄わないの!早く学校に行きなさい!」と追い払った。
私はこの後、ラスボスと対決しなければならない。カール・ハンリヒ大帝とその弟のルノー・ガクセン・ハンリヒとも。
擬魂追跡の結果が聞けなかったのと、最後にソフィー妃が私の身近にと言いかけた言葉が、ものすごく気になっていた。
「大丈夫だ。ヴァイオレット、俺はここにいるから」
低い声もどことなくヒューの言い方に似ていはいる。人を包み込むような包容力も似てはいる。生まれ変わってもこれほどの美青年だとは思わなかった。
私の心臓はドキドキしてしまった。思わず顔を見上げる。
「本当にヒューなの?」
「そうだ。全部記憶が蘇った。ショッピングモールのフードコート、レキュール辺境伯でのプロポーズ、それから僕たちのその初めての……「分かった!!分かったわ!記憶が蘇って良かったわ!」」
私はそれ以上言わせなかった。皆の前では、特に純斗がいる前ではその話はダメだ。
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「整理すると、2回目の人生で私はヒュー王子を異世界転生させたということですね。1回目の人生で私が異世界転生させた人は2人いました。ヴァイオレットお嬢様と、ラントナス家最後の王位継承者のレキュール辺境伯です。私は彼にも異世界転生クラスを使いました。ですが、どうしても彼が見つからないのです」
魔導師ジーニンは、人気若手俳優っぷり全開で私を腕組みして見つめている純斗に気づいていない。
私は咳払いをした。純斗のことをどのタイミングで伝えれば良いのか分からない。
「俺だ。ジーニン。ラントナス家最後の王位継承者のレキュール辺境伯は俺だったんだ」
純斗はヒューだと名乗るスーツを着た青年と私の間に足を踏み入れて、私たちを引き離すようにしながら、魔導師ジーニンに宣言した。
「えっ!」
サミュエルと魔導師ジーニンは、一瞬で「まずいっ」と言った表情になった。
「レキュール辺境伯は聖女に惚れていらっしゃったでしょう?」
サミュエルのつぶやいた言葉に私が真っ赤になった。
「そうだ」
純斗は毅然とした態度で、ヒューと名乗ったスーツ姿の青年に挑むように言った。
「今日は僕が学校に送ろうか。ポルシェやフェラーリでなくても行けるよ」
私は純斗の言葉に目をしばたいた。
「事務所の迎えの車がもうすぐ着く。デカいワゴン車だから、ゆったりだよ」
何のバトルなのか分からない感じになってきた。私はドキドキのため息をついた。中学生がスマホで私を撮りながら「聖女ってモテるんだね」と訳知り顔で言ってきた。
私はすかさず中学生をきっと睨んで「大人を揶揄わないの!早く学校に行きなさい!」と追い払った。
私はこの後、ラスボスと対決しなければならない。カール・ハンリヒ大帝とその弟のルノー・ガクセン・ハンリヒとも。
擬魂追跡の結果が聞けなかったのと、最後にソフィー妃が私の身近にと言いかけた言葉が、ものすごく気になっていた。
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