27 / 75
第二章 二度目の人生 リベンジスタート
マルグリッドSide
しおりを挟む
私はマルグリッド・エリーナ・ルネだ。暖炉の火を見つめながら、私は疑問を口にした。
「ねえ、お父様。なぜヴァイオレットは生き残ったのかしら?」
父は穏やかな声で答えてくれた。使用人たちは部屋にはいない。夕食の後、私たちはルネ伯爵家の者だけでくつろいでいた。久しぶりに帰宅した兄のポールもいた。
「彼女はきっと聖女になれる。特別な力があるから生き残れたんだ。公爵令嬢の彼女が無事で本当に良かった。バリドン公爵も胸を撫で下ろしているだろう。当家の侍女がぶつかったのだ。彼女にもしものことがあったら大変だった」
父はほっとしたようにつぶやいてワインを一口飲んだ。バリドン領で採れた葡萄から醸造されたお気に入りにワインだ。
「あんな不細工のどこがいいのかしら」
私は思わず本音を言った。この場には家族しかいないから平気だ。
「マルグリッド、人の美醜について語るものではありません。美を感じる感覚は人それぞれですが、ヴァイオレット公爵令嬢はとても美しいですよ」
母は私をたしなめた。周りの人は私のことを愛らしいと言ってくれる。だが、同じようにヴァイオレット公爵令嬢のことも誉めそやす。私はそれが非常に気に入らない。
「聖女の定義は何でしょうか」
私はふと父に聞いた。
「他の者にはない特別なスキルがあって、人を守ったり、国を豊かにできる人のことだ」
父はワインを飲みながら私に教えてくれた。
「私も聖女になりたいわ、お父様」
父と母は笑い出した。兄も吹き出した。
「聖女になるには素質が必要なの。生まれ持った力が求められるのよ。マルグリッドは聖女にならなくても、あなたなら十分に人を救える力を持っているわ」
母は優しく私に教えてくれた。
――『聖女にならなくても』なんて、そんな慰めの言葉は要らないわ。分かった。決めた。彼女に近づこう。そして、彼女が手にしたモノはいつか全てことごとく私がもらうわ。
私は誰にこの話を相談しようと思いながら、暖炉の火を見つめた。
あの侍女はクビにしてもらおう。私が同年齢で1番になりたいから、バリドン公爵令嬢を傷物にしようとしたなんて、誰かに漏らされたら困る。お母様の宝石を幾らかあげて黙るように念押ししておこう。
でも、予想外の展開で面白くなりそうだ、と私は思った。
やりがいがあるわ。
「ねえ、お父様。なぜヴァイオレットは生き残ったのかしら?」
父は穏やかな声で答えてくれた。使用人たちは部屋にはいない。夕食の後、私たちはルネ伯爵家の者だけでくつろいでいた。久しぶりに帰宅した兄のポールもいた。
「彼女はきっと聖女になれる。特別な力があるから生き残れたんだ。公爵令嬢の彼女が無事で本当に良かった。バリドン公爵も胸を撫で下ろしているだろう。当家の侍女がぶつかったのだ。彼女にもしものことがあったら大変だった」
父はほっとしたようにつぶやいてワインを一口飲んだ。バリドン領で採れた葡萄から醸造されたお気に入りにワインだ。
「あんな不細工のどこがいいのかしら」
私は思わず本音を言った。この場には家族しかいないから平気だ。
「マルグリッド、人の美醜について語るものではありません。美を感じる感覚は人それぞれですが、ヴァイオレット公爵令嬢はとても美しいですよ」
母は私をたしなめた。周りの人は私のことを愛らしいと言ってくれる。だが、同じようにヴァイオレット公爵令嬢のことも誉めそやす。私はそれが非常に気に入らない。
「聖女の定義は何でしょうか」
私はふと父に聞いた。
「他の者にはない特別なスキルがあって、人を守ったり、国を豊かにできる人のことだ」
父はワインを飲みながら私に教えてくれた。
「私も聖女になりたいわ、お父様」
父と母は笑い出した。兄も吹き出した。
「聖女になるには素質が必要なの。生まれ持った力が求められるのよ。マルグリッドは聖女にならなくても、あなたなら十分に人を救える力を持っているわ」
母は優しく私に教えてくれた。
――『聖女にならなくても』なんて、そんな慰めの言葉は要らないわ。分かった。決めた。彼女に近づこう。そして、彼女が手にしたモノはいつか全てことごとく私がもらうわ。
私は誰にこの話を相談しようと思いながら、暖炉の火を見つめた。
あの侍女はクビにしてもらおう。私が同年齢で1番になりたいから、バリドン公爵令嬢を傷物にしようとしたなんて、誰かに漏らされたら困る。お母様の宝石を幾らかあげて黙るように念押ししておこう。
でも、予想外の展開で面白くなりそうだ、と私は思った。
やりがいがあるわ。
11
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
いい子ちゃんなんて嫌いだわ
F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが
聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。
おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。
どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。
それが優しさだと思ったの?
子育てが落ち着いた20年目の結婚記念日……「離縁よ!離縁!」私は屋敷を飛び出しました。
さくしゃ
恋愛
アーリントン王国の片隅にあるバーンズ男爵領では、6人の子育てが落ち着いた領主夫人のエミリアと領主のヴァーンズは20回目の結婚記念日を迎えていた。
忙しい子育てと政務にすれ違いの生活を送っていた二人は、久しぶりに二人だけで食事をすることに。
「はぁ……盛り上がりすぎて7人目なんて言われたらどうしよう……いいえ!いっそのことあと5人くらい!」
気合いを入れるエミリアは侍女の案内でヴァーンズが待つ食堂へ。しかし、
「信じられない!離縁よ!離縁!」
深夜2時、エミリアは怒りを露わに屋敷を飛び出していった。自室に「実家へ帰らせていただきます!」という書き置きを残して。
結婚20年目にして離婚の危機……果たしてその結末は!?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
公爵令嬢は嫁き遅れていらっしゃる
夏菜しの
恋愛
十七歳の時、生涯初めての恋をした。
燃え上がるような想いに胸を焦がされ、彼だけを見つめて、彼だけを追った。
しかし意中の相手は、別の女を選びわたしに振り向く事は無かった。
あれから六回目の夜会シーズンが始まろうとしている。
気になる男性も居ないまま、気づけば、崖っぷち。
コンコン。
今日もお父様がお見合い写真を手にやってくる。
さてと、どうしようかしら?
※姉妹作品の『攻略対象ですがルートに入ってきませんでした』の別の話になります。
悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。
二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。
けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。
ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。
だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。
グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。
そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ヒュントヘン家の仔犬姫〜前世殿下の愛犬だった私ですが、なぜか今世で求愛されています〜
高遠すばる
恋愛
「ご主人さま、会いたかった…!」
公爵令嬢シャルロットの前世は王太子アルブレヒトの愛犬だ。
これは、前世の主人に尽くしたい仔犬な令嬢と、そんな令嬢への愛が重すぎる王太子の、紆余曲折ありながらハッピーエンドへたどり着くまでの長い長いお話。
2024/8/24
タイトルをわかりやすく改題しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結・7話】召喚命令があったので、ちょっと出て失踪しました。妹に命令される人生は終わり。
BBやっこ
恋愛
タブロッセ伯爵家でユイスティーナは、奥様とお嬢様の言いなり。その通り。姉でありながら母は使用人の仕事をしていたために、「言うことを聞くように」と幼い私に約束させました。
しかしそれは、伯爵家が傾く前のこと。格式も高く矜持もあった家が、機能しなくなっていく様をみていた古参組の使用人は嘆いています。そんな使用人達に教育された私は、別の屋敷で過ごし働いていましたが15歳になりました。そろそろ伯爵家を出ますね。
その矢先に、残念な妹が伯爵様の指示で訪れました。どうしたのでしょうねえ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる