【完結】世界転生バイトですが、裏切られて捨てられた公爵令嬢の聖女と私を煽てるあなたは恋愛詐欺師ですか?知りませんが、幸せな花嫁になるので!

西野歌夏

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第二章 二度目の人生 リベンジスタート

マルグリッドSide

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 私はマルグリッド・エリーナ・ルネだ。暖炉の火を見つめながら、私は疑問を口にした。

「ねえ、お父様。なぜヴァイオレットは生き残ったのかしら?」

 父は穏やかな声で答えてくれた。使用人たちは部屋にはいない。夕食の後、私たちはルネ伯爵家の者だけでくつろいでいた。久しぶりに帰宅した兄のポールもいた。

「彼女はきっと聖女になれる。特別な力があるから生き残れたんだ。公爵令嬢の彼女が無事で本当に良かった。バリドン公爵も胸を撫で下ろしているだろう。当家の侍女がぶつかったのだ。彼女にもしものことがあったら大変だった」

 父はほっとしたようにつぶやいてワインを一口飲んだ。バリドン領で採れた葡萄から醸造されたお気に入りにワインだ。

「あんな不細工のどこがいいのかしら」

 私は思わず本音を言った。この場には家族しかいないから平気だ。

「マルグリッド、人の美醜について語るものではありません。美を感じる感覚は人それぞれですが、ヴァイオレット公爵令嬢はとても美しいですよ」

 母は私をたしなめた。周りの人は私のことを愛らしいと言ってくれる。だが、同じようにヴァイオレット公爵令嬢のことも誉めそやす。私はそれが非常に気に入らない。

「聖女の定義は何でしょうか」

 私はふと父に聞いた。

「他の者にはない特別なスキルがあって、人を守ったり、国を豊かにできる人のことだ」

 父はワインを飲みながら私に教えてくれた。

「私も聖女になりたいわ、お父様」

 父と母は笑い出した。兄も吹き出した。

「聖女になるには素質が必要なの。生まれ持った力が求められるのよ。マルグリッドは聖女にならなくても、あなたなら十分に人を救える力を持っているわ」

 母は優しく私に教えてくれた。

 ――『聖女にならなくても』なんて、そんな慰めの言葉は要らないわ。分かった。決めた。彼女に近づこう。そして、彼女が手にしたモノはいつか全てことごとく私がもらうわ。

 私は誰にこの話を相談しようと思いながら、暖炉の火を見つめた。

 あの侍女はクビにしてもらおう。私が同年齢で1番になりたいから、バリドン公爵令嬢を傷物にしようとしたなんて、誰かに漏らされたら困る。お母様の宝石を幾らかあげて黙るように念押ししておこう。

 でも、予想外の展開で面白くなりそうだ、と私は思った。

 やりがいがあるわ。


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