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第一章 魔法学園での出会い
10.課外活動(4)
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かれこれ何十分、こいつと戦っているだろうか。
数分、数十分? 時間感覚が狂ってしまいそうな緊張感と死の恐怖をなんとか気合で押さえつけて私とレネちゃんは戦っていた。
弱点の火属性魔法をぶつけてもダメ、杖剣で斬り落とそうとしてもダメ。私達の一撃では風龍の身体に致命傷を与えることはできない。
どの一撃なら通るのか─。
「ユナッ!!」
レネちゃんの声で現実に引き戻された私を待ち受けていたのは、爪を振り下ろそうとしている風龍だった。
「あっぶな……!」
振り下ろされた風龍の爪を間一髪杖剣で受け流し、瓦礫に押し潰されたのかと勘違いするほどの衝撃をなんとか殺し切る。
「さっきまで三十メテルは離れてたのに……」
あんな巨体からは考えられない程のスピードをしている。パワーも油断していたら一瞬でつぶされてしまうだろう。
ギリギリ動きが目で見えるのが救いだろうか。
「このままじゃ埒が明かないわ。何か有効打はないの?」
「有効打って言われても……ちょっと待って」
基本的にどの魔物にも弱点というのは存在する。
吸血鬼だったら光属性の魔法だったり、心臓部分にある魔石だったりと明確に弱点は存在している。
「基本的に龍種の魔石は心臓部分にある! その位置は風龍でも守りが薄くなってるはず……!」
どの魔物でも心臓部分や魔石といった弱点は皮膚が薄くなっていたり、そこだけ魔法による防御がなかったりと明確になっている。
いかに、龍種といった上位種でも絶対にその前提条件は間違いないはずだ。
「レネちゃん、お腹の上あたりの鱗が薄いところを狙って! そこに魔石があるはずだから!」
「ええ、わかったわ! その部分に集中的に攻撃をすればいいのよね!?」
「うん! 私もカバーするから!」
レネちゃんはそのまま杖剣に魔法付与を施すと、自身の何十倍もの大きさである風龍に立ち向かっていく。
「魔法付与─『雷光』!」
途端、彼女の杖剣と身体は雷を纏ったかのように光り始める。
まるで落雷のような速さになったレネちゃんは私の目では追うことができないほどだった。
地響きのような音がした踏み込みで跳び、一瞬で風龍に肉薄する。
風龍も一瞬見失ったのか、いきなり目の前に現れたレネちゃんに驚いていた。
「はああああああああああああああ!!!」!」
そのままレネちゃんは無防備になった心臓部分を斬り落とすために雷を纏った杖剣を振り下ろそうとする。
しかし、流石というべきか風龍は咄嗟に風龍の息吹を吐こうとする。
「させない! ─『炎球』!」
火属性初級魔法『炎球』を風龍の口に向けて放つ。
そして、口の中に魔法が入った途端、爆発が起きそのまま風龍は狼狽える。
「グルァアアアアアアアア!!!!!!!!」
その隙を一流の魔法剣士が見逃すわけもなく─。
「風龍にはなんの恨みもないけれど、私達もここを生き抜かなければならないのよ。だから」
─ここであなたを倒すわ。
そう告げる声は、風龍が咆哮を上げる中でもやけに鮮明に聞こえた。
「ガアアアアアアアアアアアア!!」
そのまま、悲鳴のような声を上げながら風龍は絶命した─
「はあ、はあ……なんて強さだったのよ、こいつ」
「レネちゃんの一撃じゃなかったら絶対勝ててなかったよ。ありがと!」
「私も、あなたがいなかったら勝ててないわ。これは二人で掴んだ勝利よ。……さ、帰る支度をしましょう」
ように思われた。
途端、急激に上がり出す付近の魔力濃度。
それも学園迷宮で感じたような、古代魔法級の魔力の濃さ。
「まさか……!」
いや、そんなことはない。
だって、あいつはさっき死んだはずだ。
─じゃあ、目の前で生きている風龍はなんだ?
風龍は、先ほど自分の命を脅かした銀髪の少女を殺すため、先程とは比べ物にならないような魔力を込めながら風龍の息吹を吐こうとする。
しかし、レネちゃんは疲れと帰り支度をしているか気付いてる様子はない。
「レネちゃん! 避けてえええええ!!!」
「え、どうしたの? ……って、え?」
レネちゃんが気付いた時にはもう風龍は風龍の息吹を吐く準備を完了していた。
対して、レネちゃんは固まって動くことができていない。いや、威圧で動くことができていないのだろう。
「くっそ……! 間に合えええええ!」
私とレネちゃんの距離は十メテル以上は離れている。足で動いても間に合うわけがない。
「レネちゃん、ごめん! ─『微風』!」
咄嗟に、風属性初級魔法『微風』をレネちゃんにぶつける。
「きゃあ!」
なんとか『微風』はレネちゃんに届きそのまま十メテルほど吹き飛ばされた。
その直後、レネちゃんがいたところを正しく暴風と呼ぶに相応しいほどの風が襲い、地面を抉っていった。
その風は、十メテルは離れている私でも吹き飛ばされないように踏ん張るので精一杯なほどの強風だった。
十秒ぐらい経った後、何とか暴力のような風を耐え切るとそのまま奴は蹲っているレネちゃんに向かってまた魔法を使おうとする。
「ッ!? させない!」
腰に下げていた杖剣を振り抜き、そのまま大切な幼馴染を守るために地面を思いっきり踏み込んで奴に肉薄する。
「ぐふっ……」
しかし、振りぬいた杖剣が届くことはなくそのまま奴はその巨体に似合った巨大な尻尾で払ってくる。
その尻尾は奴を狙っていたことで完全に無防備になっていた脇腹に綺麗に入り、そのまま数十メテル程先にあった大木にぶつかったことで何とか止まった。
(しま……った。もろに食らった……せいで脇腹が……)
痛みに耐えられず、立ち上がることはできない。
その間にも風龍はゆっくりと私に向かってくる。
(立ち上がらないと……せめてフィルナちゃんとララちゃんが先輩を呼んでくるまで時間を稼がないと……)
最後の力を込め立ち上がろうとするも、すでに全身ボロボロで体がいうことを聞かない。
その間にも風龍は渾身の風龍の息吹を放つ準備をする。
(ああ、私達ここまでなのかな……)
仲のいい友達がいて、優しい家族がいて、目標だったロザナタリアにも入学できた。
やり残したこともあったけれど、楽しめた人生だったじゃないんだろうか。
(お父さんお母さん、ごめん。先に死んじゃうかも)
遠ざかる意識の中─。
一つの疑問が私の中に浮かんできた。
(本で読んだ英雄『星月』様なら、こんなところであきらめたのか? いや、諦めないはずだ)
それは、英雄を志した私の心が投げかけたものだった。
その疑問を皮切りに、心の中に数々の疑問と熱意が浮かんでくる。
(私は、親友を救うのを諦めたのか? いや、まだ助けられるはずだ)
(本当に、死ぬのを受け入れたのか? 私にはまだやりたいことがあるのに)
そして。
(私は英雄になるのを諦めたのか? いや─)
「諦めるはず、ないでしょ!! ─『掴み取る結末』!」
いきなり、私の頭の中に浮かび上がった『呪文』を咄嗟に叫んだ。
その瞬間、私の体は白く光り始める。
同時に、体の傷は治り先程まで動かすことも難しかった私の体に力がよみがえってくる。
「これってまさか……! 『独自魔法』!?」
『独自魔法』。
限られた魔法使いにしか使えないとされている、その魔法使いを象徴たらしめる圧倒的な魔法。
発現条件は不明とされているが、魔法使いとしての強い想いが条件とされている。
一流の魔法使い全員が持っているわけではないが、歴史に名を残すような魔法使いはほぼ己の『独自魔法』を持っていたとされている。
そう、ユナは今『英雄』と同じ領域に立ったのだ。
「この力なら、あいつを倒せる……! 勝負だ─」
「ガウウウウウウウウウ!!」
先程からは考えられないような踏み込みで、ユナは風龍に立ち向かっていった。
数分、数十分? 時間感覚が狂ってしまいそうな緊張感と死の恐怖をなんとか気合で押さえつけて私とレネちゃんは戦っていた。
弱点の火属性魔法をぶつけてもダメ、杖剣で斬り落とそうとしてもダメ。私達の一撃では風龍の身体に致命傷を与えることはできない。
どの一撃なら通るのか─。
「ユナッ!!」
レネちゃんの声で現実に引き戻された私を待ち受けていたのは、爪を振り下ろそうとしている風龍だった。
「あっぶな……!」
振り下ろされた風龍の爪を間一髪杖剣で受け流し、瓦礫に押し潰されたのかと勘違いするほどの衝撃をなんとか殺し切る。
「さっきまで三十メテルは離れてたのに……」
あんな巨体からは考えられない程のスピードをしている。パワーも油断していたら一瞬でつぶされてしまうだろう。
ギリギリ動きが目で見えるのが救いだろうか。
「このままじゃ埒が明かないわ。何か有効打はないの?」
「有効打って言われても……ちょっと待って」
基本的にどの魔物にも弱点というのは存在する。
吸血鬼だったら光属性の魔法だったり、心臓部分にある魔石だったりと明確に弱点は存在している。
「基本的に龍種の魔石は心臓部分にある! その位置は風龍でも守りが薄くなってるはず……!」
どの魔物でも心臓部分や魔石といった弱点は皮膚が薄くなっていたり、そこだけ魔法による防御がなかったりと明確になっている。
いかに、龍種といった上位種でも絶対にその前提条件は間違いないはずだ。
「レネちゃん、お腹の上あたりの鱗が薄いところを狙って! そこに魔石があるはずだから!」
「ええ、わかったわ! その部分に集中的に攻撃をすればいいのよね!?」
「うん! 私もカバーするから!」
レネちゃんはそのまま杖剣に魔法付与を施すと、自身の何十倍もの大きさである風龍に立ち向かっていく。
「魔法付与─『雷光』!」
途端、彼女の杖剣と身体は雷を纏ったかのように光り始める。
まるで落雷のような速さになったレネちゃんは私の目では追うことができないほどだった。
地響きのような音がした踏み込みで跳び、一瞬で風龍に肉薄する。
風龍も一瞬見失ったのか、いきなり目の前に現れたレネちゃんに驚いていた。
「はああああああああああああああ!!!」!」
そのままレネちゃんは無防備になった心臓部分を斬り落とすために雷を纏った杖剣を振り下ろそうとする。
しかし、流石というべきか風龍は咄嗟に風龍の息吹を吐こうとする。
「させない! ─『炎球』!」
火属性初級魔法『炎球』を風龍の口に向けて放つ。
そして、口の中に魔法が入った途端、爆発が起きそのまま風龍は狼狽える。
「グルァアアアアアアアア!!!!!!!!」
その隙を一流の魔法剣士が見逃すわけもなく─。
「風龍にはなんの恨みもないけれど、私達もここを生き抜かなければならないのよ。だから」
─ここであなたを倒すわ。
そう告げる声は、風龍が咆哮を上げる中でもやけに鮮明に聞こえた。
「ガアアアアアアアアアアアア!!」
そのまま、悲鳴のような声を上げながら風龍は絶命した─
「はあ、はあ……なんて強さだったのよ、こいつ」
「レネちゃんの一撃じゃなかったら絶対勝ててなかったよ。ありがと!」
「私も、あなたがいなかったら勝ててないわ。これは二人で掴んだ勝利よ。……さ、帰る支度をしましょう」
ように思われた。
途端、急激に上がり出す付近の魔力濃度。
それも学園迷宮で感じたような、古代魔法級の魔力の濃さ。
「まさか……!」
いや、そんなことはない。
だって、あいつはさっき死んだはずだ。
─じゃあ、目の前で生きている風龍はなんだ?
風龍は、先ほど自分の命を脅かした銀髪の少女を殺すため、先程とは比べ物にならないような魔力を込めながら風龍の息吹を吐こうとする。
しかし、レネちゃんは疲れと帰り支度をしているか気付いてる様子はない。
「レネちゃん! 避けてえええええ!!!」
「え、どうしたの? ……って、え?」
レネちゃんが気付いた時にはもう風龍は風龍の息吹を吐く準備を完了していた。
対して、レネちゃんは固まって動くことができていない。いや、威圧で動くことができていないのだろう。
「くっそ……! 間に合えええええ!」
私とレネちゃんの距離は十メテル以上は離れている。足で動いても間に合うわけがない。
「レネちゃん、ごめん! ─『微風』!」
咄嗟に、風属性初級魔法『微風』をレネちゃんにぶつける。
「きゃあ!」
なんとか『微風』はレネちゃんに届きそのまま十メテルほど吹き飛ばされた。
その直後、レネちゃんがいたところを正しく暴風と呼ぶに相応しいほどの風が襲い、地面を抉っていった。
その風は、十メテルは離れている私でも吹き飛ばされないように踏ん張るので精一杯なほどの強風だった。
十秒ぐらい経った後、何とか暴力のような風を耐え切るとそのまま奴は蹲っているレネちゃんに向かってまた魔法を使おうとする。
「ッ!? させない!」
腰に下げていた杖剣を振り抜き、そのまま大切な幼馴染を守るために地面を思いっきり踏み込んで奴に肉薄する。
「ぐふっ……」
しかし、振りぬいた杖剣が届くことはなくそのまま奴はその巨体に似合った巨大な尻尾で払ってくる。
その尻尾は奴を狙っていたことで完全に無防備になっていた脇腹に綺麗に入り、そのまま数十メテル程先にあった大木にぶつかったことで何とか止まった。
(しま……った。もろに食らった……せいで脇腹が……)
痛みに耐えられず、立ち上がることはできない。
その間にも風龍はゆっくりと私に向かってくる。
(立ち上がらないと……せめてフィルナちゃんとララちゃんが先輩を呼んでくるまで時間を稼がないと……)
最後の力を込め立ち上がろうとするも、すでに全身ボロボロで体がいうことを聞かない。
その間にも風龍は渾身の風龍の息吹を放つ準備をする。
(ああ、私達ここまでなのかな……)
仲のいい友達がいて、優しい家族がいて、目標だったロザナタリアにも入学できた。
やり残したこともあったけれど、楽しめた人生だったじゃないんだろうか。
(お父さんお母さん、ごめん。先に死んじゃうかも)
遠ざかる意識の中─。
一つの疑問が私の中に浮かんできた。
(本で読んだ英雄『星月』様なら、こんなところであきらめたのか? いや、諦めないはずだ)
それは、英雄を志した私の心が投げかけたものだった。
その疑問を皮切りに、心の中に数々の疑問と熱意が浮かんでくる。
(私は、親友を救うのを諦めたのか? いや、まだ助けられるはずだ)
(本当に、死ぬのを受け入れたのか? 私にはまだやりたいことがあるのに)
そして。
(私は英雄になるのを諦めたのか? いや─)
「諦めるはず、ないでしょ!! ─『掴み取る結末』!」
いきなり、私の頭の中に浮かび上がった『呪文』を咄嗟に叫んだ。
その瞬間、私の体は白く光り始める。
同時に、体の傷は治り先程まで動かすことも難しかった私の体に力がよみがえってくる。
「これってまさか……! 『独自魔法』!?」
『独自魔法』。
限られた魔法使いにしか使えないとされている、その魔法使いを象徴たらしめる圧倒的な魔法。
発現条件は不明とされているが、魔法使いとしての強い想いが条件とされている。
一流の魔法使い全員が持っているわけではないが、歴史に名を残すような魔法使いはほぼ己の『独自魔法』を持っていたとされている。
そう、ユナは今『英雄』と同じ領域に立ったのだ。
「この力なら、あいつを倒せる……! 勝負だ─」
「ガウウウウウウウウウ!!」
先程からは考えられないような踏み込みで、ユナは風龍に立ち向かっていった。
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