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第2話 堕ちていくタレント
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そんな慎吾だが、人気が出始めた頃、彼は必死だった。今までに考えもしなかった幸運を掴もうともがいていた時期でもある。
ただ、スタイルや顔が良いと言うだけで、すぐに人気が出てくるほど、この世界は甘くはない。慎吾はそのようなタレントを多く見てきた。
甘いマスクの顔だけに頼り、あまり努力をしないそういう者は、夏の夜の線香花火のようにいつかは消えていく運命だからだ。
一時期には、あの絶大な人気を誇っていた春日川悠介さえも、いつのまにか消えて、今ではこの世界から忘れられていった。
悠介は確かに、男さえも惚れ惚れとするような男で、そんな顔とスタイルを誇っていた。その彼に目をつけた数社の会社は、彼にCMの依頼をしていた時がある。
当時のそのCMは評判であり、その商品は飛ぶように売れた。その商品は若い女性をターゲットにしていただけに、売上は伸びて、あっと言う間に評判は広がっていった。しかし、或るスキャンダルを起こした彼は、その深い穴に墜ちていった。
それはタレントには、あってはならない不祥事だった。彼を慕い近づく女性は少なくない。まだ、名前が売れる前ならそれでも良かったかも知れない。しかし、タレントとして顔や名前が売れてくると、その行為は許されないからである。
彼の所属する中堅の事務所では、そのことに口を酸っぱくして注意をしていたが、しかし悠介はそれを軽く見ていた。
この業界では、多くのタレントがひしめいており、そんなライバルを蹴落とそうと、戦々恐々として凌ぎを削っていた。
悠介はそんなライバル会社からのハニートラップにまんまと引っかかってしまったからだ。
その相手が成人ならある程度は許せるのだが、そうでなければ警察沙汰になる。それは一番にしてはいけない行為だった。
少女は小遣い稼ぎのつもりであり、悪気はなかったが年齢を偽り、言われるままに悠介とラブホテルの門を潜っていった。
どこからのたれこみがあり、それをリークしていた週刊誌の記者にその写真を撮られていた。それが翌週の週刊誌で大々的に暴露されてしまったのである。
事務所がそれをカバーしようとしたが、後の祭りだった。そんなタレントを世間が許すわけがない。その日を境にして彼のCMは消え、そしてタレントとしての道さえも絶たれてしまった。
そういうことを常に意識し、名前が売れ出してきた慎吾は用心深かった。そして彼は心に念じていた。
(俺は、このような馬鹿なことは決してしないさ、その為に身体を張って、血が滲むような努力をしてきたのだから……)と、その週刊誌の記事をじっと見つめ、爪を噛みながら自分の大きなポスターを見て、そう心に誓っていた。
ただ、スタイルや顔が良いと言うだけで、すぐに人気が出てくるほど、この世界は甘くはない。慎吾はそのようなタレントを多く見てきた。
甘いマスクの顔だけに頼り、あまり努力をしないそういう者は、夏の夜の線香花火のようにいつかは消えていく運命だからだ。
一時期には、あの絶大な人気を誇っていた春日川悠介さえも、いつのまにか消えて、今ではこの世界から忘れられていった。
悠介は確かに、男さえも惚れ惚れとするような男で、そんな顔とスタイルを誇っていた。その彼に目をつけた数社の会社は、彼にCMの依頼をしていた時がある。
当時のそのCMは評判であり、その商品は飛ぶように売れた。その商品は若い女性をターゲットにしていただけに、売上は伸びて、あっと言う間に評判は広がっていった。しかし、或るスキャンダルを起こした彼は、その深い穴に墜ちていった。
それはタレントには、あってはならない不祥事だった。彼を慕い近づく女性は少なくない。まだ、名前が売れる前ならそれでも良かったかも知れない。しかし、タレントとして顔や名前が売れてくると、その行為は許されないからである。
彼の所属する中堅の事務所では、そのことに口を酸っぱくして注意をしていたが、しかし悠介はそれを軽く見ていた。
この業界では、多くのタレントがひしめいており、そんなライバルを蹴落とそうと、戦々恐々として凌ぎを削っていた。
悠介はそんなライバル会社からのハニートラップにまんまと引っかかってしまったからだ。
その相手が成人ならある程度は許せるのだが、そうでなければ警察沙汰になる。それは一番にしてはいけない行為だった。
少女は小遣い稼ぎのつもりであり、悪気はなかったが年齢を偽り、言われるままに悠介とラブホテルの門を潜っていった。
どこからのたれこみがあり、それをリークしていた週刊誌の記者にその写真を撮られていた。それが翌週の週刊誌で大々的に暴露されてしまったのである。
事務所がそれをカバーしようとしたが、後の祭りだった。そんなタレントを世間が許すわけがない。その日を境にして彼のCMは消え、そしてタレントとしての道さえも絶たれてしまった。
そういうことを常に意識し、名前が売れ出してきた慎吾は用心深かった。そして彼は心に念じていた。
(俺は、このような馬鹿なことは決してしないさ、その為に身体を張って、血が滲むような努力をしてきたのだから……)と、その週刊誌の記事をじっと見つめ、爪を噛みながら自分の大きなポスターを見て、そう心に誓っていた。
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