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ひヾき 最終章
或る像
しおりを挟む中高の修学旅行でしか行ったことがないのだけれど、関西の某所には私が大好きな像がある。
好きな理由は自分でもわからなかったのに、高校の修学旅行で見た時はずいぶん長い時間ひとり眺めていた。
おそらくもう見られないか、この次見るのはいつになるか全くわからないのを、私は知っていたのだと思う。
ただただ、そのお姿と肢体を忘れないようにと、脳に焼き付けていた。
その種の像としては小さく華奢で、実際に目にした時は、こんなに小さかったのか!と思った。
しかし、小さいその御身の内に炎のような激しい熱が潜んでいた。そのお姿に封じられているのは原子力のようなエネルギーだった。
莫大なエネルギーであるのに表立つと災いとなるため封印されているように感じた。
お顔は凛々しい。お内裏様にも通じるように若々しく美しいのに、微妙に歪んでいる。そして涼しげな瞳には苦悶がみえた。
高校二年生だった私は、別れの言葉を心から述べ、そしてその場を離れた。単なる像とはとても思えなかったから。
そんな出来事を忘れるのに充分な年月が流れたある日、私はクローズアップした二つの瞳の夢をみた。顔も鼻も口もない、左右が寄った美しい切れ長の瞳だった。しかしなぜこんな夢をみたのかその時にはわからなかった。
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