魔王の子育て日記

教祖

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波乱

来訪者への極意~魔王監修~ その3

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 「で、パインに連れてきてもらった人間に俺が熱弁を繰り広げて、魔族との確執もなくなって大団円。あいつらには赤ん坊を連れ帰ったと同時に、魔族との友好関係を上に打診してもらうってどうよ?」 
 「本気で仰っているのなら、前魔王さまに私は伏して謝罪をしなければなりませんね」
 魔王の描く絵空事にパインはこめかみに手を当てざるを得ない。
 赤ちゃんを取り返すために偵察隊を送り込んでいる人間と、この場のやり取りだけで和解できるわけがない。そもそもそれを取り持つのも、翻訳するのも人任せではないか。
 程度は違えど他の者たちも苦い表情を浮かべている。
 「本気も本気だぞ。人間は理解力が高い。無益な争いは無くすべきだと心の底では思ってるはずだ」 
 「自分達の子供を攫っていくような種族に、憎しみ以外の感情を持てる生き物は存在しないと思いますが」
 「そこは俺の圧倒的な弁舌力と人間の限りない心の広さに任せておけ!」
 「その二点が一番の不安要素ですが」
 「くどい! ――――これは魔王としての命令だ。俺の前に人間たちを連れてきてくれ。後は俺が上手くやるから」
 「「「かしこまりました」」」
 魔王が『命令』と口にした途端に他の者たちは今までの反応が嘘のように言葉に従った。
 一国の主が下した判断に家臣が逆らえる道理は存在しないのだ。
 
 朱雀一行を引き連れて、パインは階段を上がっていく。
 赤子の命を引き合いに出したからか、先程の一件以降大人しく付き従っていることに心中で安堵する。
 一方で、仕方がなかったとはいえ、赤子の命を天秤に掛けるような発言をしてしまった自分自身にパインは激しい嫌悪を抱いていた。
 ふと、後ろに続く兵士たちの列を見る。鮮烈な紅が階段を覆いつくす異様な様の中に一点、巨大な影が見えた。
 否、全身に黒の防具を纏い大剣を背に負った人間であるということを一呼吸置いてから認識した。
 あの姿どこかで――――。
 脳内の片隅に追いやった記憶を手繰るも、なかなか糸口が掴めない。歯痒さを感じながら歩みを進めれば、目の前には重厚な扉が現れた。
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