99 / 131
波乱
痕跡 その4
しおりを挟む
「わずかだが草が剥げている」
「はい。周囲は生い茂っている雑草の類が、横一線に無くなっておるのです」
見れば、確かに一部分だけ雑草が生えていなかった。
兵士に呼ばれたのは、この場所の中央。
子供らが遊びでやったことも考えられなくはないが、意図が見えない。しかし、不自然に正確な直線であるがゆえに、人為的な力が加えられていることは間違いないだろう。
「ここに門が現れたのでしょうか?」
「わからない。だが可能性は否定できない。少し待て」
兵士の問いに困惑しながらも答えると、朱雀は巻物を取り出したように懐に手を伸ばし、形代を1枚取り出した。
「術が使われていれば何か起こるはずだ」
草の剥げた部分へ人型に切り抜かれた白紙が触れると、たちまち深紫に染まり、やがて端から解けるように朽ち果てた。
「「「っ!?」」」
朱雀たちの他、周りで事の行く末を横目に見ていた兵士達も、この光景は直視せざるを得なかった。
「どうやら間違いないようだ。よもや朽ち果てようとは……」
「聖護達におっしゃっていた通り、魔術の痕跡があったということですね」
集会所での話を思い出し村正が朱雀に確認する。
「ああ。だが、魔力が桁違いだ。形代も陰陽から持たされたのだが、変化の度合いも色の濃淡程度だと言われていた。やはり相当な手練れのようだ。魔王の息がかかっている可能性は高いだろう」
「左様でございますね――――」
淡々と告げられた事実に総雲は心を決めた。
ここには戻れないかもしれない。状況は異なろうとも自分は再び戦場へ赴くのだ。
命のやり取りが待っているかもしれない。それでも――――
「もう一度聞くが、一緒に来てくれるのか? 此度は戦ではなく偵察と人質の奪還だ。場合によっては辺りを敵に囲まれるやもしれん」
総雲の声音に籠った思いを朱雀は汲み取っていた。
故に敢えて問う。自ら志願して敵地へ赴くだけの理由があるのか、命を危険に晒す価値がその理由にあるのかを。
「ご配慮痛み入ります。ですが私は決めたのです。迷いはございません」
総雲の心は志願した時から決まっていた。過去の清算には命を懸けて臨もうと。
「愚問だったな。では始めるか」
皆、急ぎ私の後ろに控えよ――――!
朱雀は巻き上げていた巻物を再び伸ばすと、全て兵士達に号令を掛け背後に控えさせた。
「はい。周囲は生い茂っている雑草の類が、横一線に無くなっておるのです」
見れば、確かに一部分だけ雑草が生えていなかった。
兵士に呼ばれたのは、この場所の中央。
子供らが遊びでやったことも考えられなくはないが、意図が見えない。しかし、不自然に正確な直線であるがゆえに、人為的な力が加えられていることは間違いないだろう。
「ここに門が現れたのでしょうか?」
「わからない。だが可能性は否定できない。少し待て」
兵士の問いに困惑しながらも答えると、朱雀は巻物を取り出したように懐に手を伸ばし、形代を1枚取り出した。
「術が使われていれば何か起こるはずだ」
草の剥げた部分へ人型に切り抜かれた白紙が触れると、たちまち深紫に染まり、やがて端から解けるように朽ち果てた。
「「「っ!?」」」
朱雀たちの他、周りで事の行く末を横目に見ていた兵士達も、この光景は直視せざるを得なかった。
「どうやら間違いないようだ。よもや朽ち果てようとは……」
「聖護達におっしゃっていた通り、魔術の痕跡があったということですね」
集会所での話を思い出し村正が朱雀に確認する。
「ああ。だが、魔力が桁違いだ。形代も陰陽から持たされたのだが、変化の度合いも色の濃淡程度だと言われていた。やはり相当な手練れのようだ。魔王の息がかかっている可能性は高いだろう」
「左様でございますね――――」
淡々と告げられた事実に総雲は心を決めた。
ここには戻れないかもしれない。状況は異なろうとも自分は再び戦場へ赴くのだ。
命のやり取りが待っているかもしれない。それでも――――
「もう一度聞くが、一緒に来てくれるのか? 此度は戦ではなく偵察と人質の奪還だ。場合によっては辺りを敵に囲まれるやもしれん」
総雲の声音に籠った思いを朱雀は汲み取っていた。
故に敢えて問う。自ら志願して敵地へ赴くだけの理由があるのか、命を危険に晒す価値がその理由にあるのかを。
「ご配慮痛み入ります。ですが私は決めたのです。迷いはございません」
総雲の心は志願した時から決まっていた。過去の清算には命を懸けて臨もうと。
「愚問だったな。では始めるか」
皆、急ぎ私の後ろに控えよ――――!
朱雀は巻き上げていた巻物を再び伸ばすと、全て兵士達に号令を掛け背後に控えさせた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
114
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる