魔王の子育て日記

教祖

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波乱

痕跡 その2

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 その上席、すなわちこの国の2番手――――陰陽が書いたという巻物。おそらく手に持っているだけで国主の城の目前までは何事もなく歩みを進められるであろう程の代物。
 言わば国家機密文書に等しいそれを目の前で広げられている状況だ。総雲の反応が大袈裟ではないことは言うまでもない。
 「ですが――――」
 「では村正殿も一緒に見てくれ。共犯、という訳ではないが一人よりも安心だろう? 何かあれば私が無理やり見せたと報告するから問題はない」
 「私も拝見してよろしいのですか? このようなもの、一生のうちに見れるだけでも何たる光栄でしょう」
 「そこまでおっしゃるなら、謹んで拝見いたします」
 「ああ、存分に見るがいい」
 どこか楽し気に朱雀は二人を両脇につかせて、巻物の中身を見せた。
 「「これは……」」 
 その内容に総雲と村正は言葉を失った。
 朱と黒、2色の墨を用いて書かれた文字の羅列。無骨な太字の黒墨の文字の各所が綺麗な細字の朱墨が斜線や引き出し線を用いて修正されていた。
 「相変わらずだな。ようが書いたものをいんが修正している。書き直すのではなく修正しているところが実に陰湿で陰らしい」
 朱雀は顔を曇らせた。兜に包まれ見えるはずのないその表情も、2人にはその声音で大方予想できた。
 「術に関わることで立ち止まることがあれば、これを開いてみろと渡されたが……」
 色も文体も異なっており苦戦しながらも、三人で文字を追ってみる。
 時候の挨拶に始まり、とりとめのない内容が続き、8割は中身のない内容だった。
 「なにやら文のようですな。本当に私どもが拝見してよろしかったのですか?」
 「私も驚いている。まさかこのような紙屑を押し付けてこようとは……」
 確かに落胆の籠った細く短い溜息を吐く朱雀。先は読まず巻物を巻きなおそうとした朱雀――――を総雲が制す。
 「お待ちください。終盤に毛色の違う内容が」
 「「ほう」」
 再び広げられた巻物の終盤には、こう書かれていた。
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