魔王の子育て日記

教祖

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波乱

痕跡

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 「ここが二人の言っていた門が現れた場所か」
 「左様でございます。しかし、このような場所に魔界への門があったなど、私には想像もつきません」
 朱雀一行は聖護達の証言をもとに村はずれの雑木林に足を運んだ。
 集会所と村を繋ぐ雑木林をまっすぐに切り開いた一本道。その中腹に聖護達の言う開けた場所があった。
 陽はほぼ頂点と言って差しつかえないところまで登り、さすがの雑木林でも陽光を遮ることは叶わない。
 「すまないな村正殿。真夏の昼時の炎天下に案内役を任せてしまった。だが、あの二人が門を発現させた状況に可能な限り近づけたいのだ。暫し付き合ってくれ」
 「私ごときの身を案じていただき、感謝に堪えません。どうか私のことはお気になさらず。私にできることがあれば何なりとお申し付けください」
 「分かった。何かあれば声を掛けよう」
 ――――皆、一帯を捜索だ。どんなことでもかまわない。気になることがあれば報告せよ。はじめ!
 朱雀の一声で今まで組まれていたきれいな隊列は一瞬で散り散りとなり、兵士たちは周囲の捜索に動き出した。
 「総雲、聖術・・の心得はあるか?」
 「みそぎは終えましたが生憎適性が見られず、切り込むことしかできかねます。知識として最低限は教え込まれましたが……。お力になれず申し訳ございません」
 朱雀の問いに総雲は首を垂れる。
 「そうか、気にするな。となれば私一人でやるしかないか。奴ら・・の言うことは信用ならないのだがな」
 これまでの会話で初めての独り言を口にした朱雀は防具の間から一本の巻物を取り出した。
 華美ではないが明らかに質の良さがうかがえる淡い紫の布地が陽光に照らされて映える。
 「っ! 朱雀様。お持ちの巻物のその色、陰陽おんみょう様の……」
 「おお、よく分かったな。奴らから押し付けられてな。ほれ」
 話しながら朱雀は巻物の封を解き、広げ始めた。以外にも全長は短く、細身の朱雀の肩幅より少し長い程度。
 「私ごときが拝見してもよろしいのでしょうか」
 「はっ、こんな巻物一本で咎められたりしない。私の上席でも所詮一人の人間だ。同じ人間の書いたものを読んで罰せられる方がどうかしている」
 かかかっ、と快活に朱雀は笑った。しかし、それに同調することは総雲には適わない。
 忘れてはならない。目の前にいるこの男は、この国で国主から数えて三番目の地位に座する人間なのだ。
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