魔王の子育て日記

教祖

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ここら辺で魔王を見ませんでしたか?

母は偉大なり その8

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 魔族二人は声のトーンと言葉の端に感じた女性らしさに困惑しながら、近づく足音に耳を傾ける。
 最初は何気ない足音だった音は、徐々に音としての重みを増していき、近くで地面に鍬を突き立てているのではないかと思えるほど地面をえぐる音が響いてきた。
 そして、ついに薄暗い店の中でも輪郭が確認できるほどの距離まで声の主はやってきた。
 店の奥から小走りでやってきたソレ・・に、魔王は呟く。
 「かべ……?」
 呟くと同時、奥の暗がりから黒い圧倒的体積を誇る何かが飛び出してきた。
 それはそのまま女店主の眼前で足を止める。
 ようやくあらわになった店主の姿は、二人の想像をはるかに超えるものだった。
 何よりも目を引く巨大な体躯、それは古い作りで本来大きすぎる玄関を、頭が当たらぬよう頭を下げなければならなかったほど。加えて元から大きかったであろうその体を覆い隠すように肉の鎧をまとっている。7
 その上に鎮座する頭部に組み込まれている、鋭い光を放つ漆黒の瞳。見つめられればすべてを見透かされそうだ。
 そして体のいたるところに見え隠れする古傷の後は、大小相当数あり、恐ろしく浅黒い肌に映える。
 そんな男が薄暗い家から小走りで出てきたのだ。
 並の人間なら、驚きのあまりすぐにこの場から走り去るだろう。
 魔界で体の大きな種族と長く親しんできた二人だったからこそ、こうして今も言葉を失うだけで済んでいるが、人型の生き物でここまでの大きさの者は二人でさえも初めてだ。
 一方女店主はと言えば、古くからの旧友と出会ったように目を輝かせている。
 驚きに体をこわばらせる二人の視線の先で、男が女店主に向かって巨木のような両腕をゆっくりと近づけていく。
 はたから見れば、女店主が襲われているように見える。
 「な、あぶね!」
 男の風貌ととっさの出来事に、魔王は思わず手を伸ばし魔術を発動させようとした。
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