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波乱の幕開け
余裕の裏側
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「朱雀様、今の一件なんとお礼を申し上げてよいか……」
足早に朱雀の正面に移動すると、村正は言葉を詰まらせる。
「いや、見ていた通り紙切れを持たせただけだ」
「そのようなことはございません。あの紙にどれ程の価値がありましょうか。仮に朱雀様には気にも留めぬ物であったとしても、二人の不安を取り去ってくださいました」
それが何よりもありがたく存じます――――と、畳に手をつき平伏する。
「あの紙も貰い物でな。これで頭を下げられては、こちらが困ってしまう」
「寛大なお言葉をありがとうございます」
「だが、二人が術を受けていなかったのは本当に良かった。魔術については、分かっていないことの方がはるかに多い。未知の術でも掛けられていれば、私の手には負えなかった」
本当に良かった―――繰り返された言葉と共に吐き出された溜息には、安堵の色が覗えた。
快活な笑顔の裏には、朱雀なりの思いがあったのだ。
「朱雀様のお心遣い、二人に代わって私が確かに頂戴いたしました。本当にありがとうございます」
「何はともあれ、これにて情報共有はできた。皆、ありがとう。我々は、これより先程の二人が門を見つけたという場所に行き、状況を把握したい。村正殿、案内を頼む」
「かしこまりました」
「総雲も同行してくれるか? 明日の段取りなどの話がしたい」
「謹んでご同行いたします」
「他の二名の村長、それから美雪は家でゆっくり休んでくれ」
朱雀は律儀に全員に言葉を掛け、それぞれが返答し、報告会は幕を閉じた。
朱雀と兵士達は手早く装備を整え、元の兜姿に戻る。
「では皆、明後日またここで」
「「「はい」」」
朱雀の一声で各々迎賓館を後にした。
足早に朱雀の正面に移動すると、村正は言葉を詰まらせる。
「いや、見ていた通り紙切れを持たせただけだ」
「そのようなことはございません。あの紙にどれ程の価値がありましょうか。仮に朱雀様には気にも留めぬ物であったとしても、二人の不安を取り去ってくださいました」
それが何よりもありがたく存じます――――と、畳に手をつき平伏する。
「あの紙も貰い物でな。これで頭を下げられては、こちらが困ってしまう」
「寛大なお言葉をありがとうございます」
「だが、二人が術を受けていなかったのは本当に良かった。魔術については、分かっていないことの方がはるかに多い。未知の術でも掛けられていれば、私の手には負えなかった」
本当に良かった―――繰り返された言葉と共に吐き出された溜息には、安堵の色が覗えた。
快活な笑顔の裏には、朱雀なりの思いがあったのだ。
「朱雀様のお心遣い、二人に代わって私が確かに頂戴いたしました。本当にありがとうございます」
「何はともあれ、これにて情報共有はできた。皆、ありがとう。我々は、これより先程の二人が門を見つけたという場所に行き、状況を把握したい。村正殿、案内を頼む」
「かしこまりました」
「総雲も同行してくれるか? 明日の段取りなどの話がしたい」
「謹んでご同行いたします」
「他の二名の村長、それから美雪は家でゆっくり休んでくれ」
朱雀は律儀に全員に言葉を掛け、それぞれが返答し、報告会は幕を閉じた。
朱雀と兵士達は手早く装備を整え、元の兜姿に戻る。
「では皆、明後日またここで」
「「「はい」」」
朱雀の一声で各々迎賓館を後にした。
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