魔王の子育て日記

教祖

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波乱の幕開け

悪餓鬼の末路 その2

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 「さて、話を聞かせてもらおうか」
 「えっと…‥」
 朱雀が説明を促す。
 大人たちの問い詰める眼差しに目を泳がせる二人。逃げ場はない。
 場所は戻り、迎賓館の大広間。向かい合う膳の間に子供二人を座らせ、大人二十名余りが取り囲む形で、尋問が始まる。
 良い澱む聖護をよそに、先陣を切ったのは以外にも源太だった。
 「武神様のお話を直接お聞きしたく、このような愚行に至りました。誠に申し訳ございません」
 「そ、そうです! 武神……様なんて話でしか聞いたことなかったから、もしかしたら見れるかもしれないと思って忍び込みました。すいませんでした!」
 源太に倣い聖護も頭を下げた。
 朱雀が小さくため息をつき、村長たちも呆れの表情を浮かべた――――村正を除いて。
 「もういい。盗み聞きも盗み見も褒められることではない。そもそも、私がここに来ること自体、大人たちが秘密裏に進めてきた話なのだから、お前たちが知り得ることはできなかったはずだ。どこから情報を得たのかはあえて聞かないでおいてやろう。しかし此度の件、内容が内容だ。脅す気はないが、口外し他の街などに漏れ混乱が広がろうものなら厳しい罰が与えられるであろう」
 「「……はい」」
 「この件については深く心の奥にしまい、口に出さぬと堅く誓え。今後はこのようなことも控えよ。いいな?」
 「「はい」」
 「では、学校に早く行け。遅れた理由を聞かれたら私の名前を――――」
 
 「口をはさみ、誠に申し訳ございませんが、二人にはまだ聞かなければならぬことがあるのです」
 間もなく終結するかに思われた悪餓鬼達の一件は、村正の一言によって新たな局面を見せた。
 予想外の展開に大広間の時が止まった。
 「――――どういうことだ」
 「先程私が朱雀様にお話しするつもりであった話になります。この二人が魔界へ行き、そこで人間の赤ん坊を見た、と」 
 「「「!?」」」
 止まった時は凍り付いた。
 人間は都合のいい生き物だ。耳障りの良い言葉は聞き逃さず、耳の痛い事は聞こえない。一つの防衛本能だ。
 故に心の核に触れるような言葉というのは、噛み砕き、咀嚼し、理解するのに時間を要する。
 その時間はその深さ――――どれだけ聞きたくない話かに比例する。
 十秒。長短は個人の主観によるところがあるだろうが、紛れもなくその間、大広間の時間は止まっていたのだ。
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