魔王の子育て日記

教祖

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綻び

土の中ではしたたかに

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 始業の鐘が鳴った。
 いつもは授業の始まりを告げるそれ・・は、今日に限って全く別のものに感じる。
 聖護は嘘をついているとき、瞬きが多くなる。
 注意しなければ分からない程度だったけれど、あの瞬きは眼が渇いてるからじゃない。
 つまりそれは、昨日の話が事実であると肯定したということ。
 どうしてそうなったのかは分からない。でも、薄暗いあの道でさえはっきりと分かった、二人の強張った顔。
 何かの悪巧みとは思えない。
 二人は美雪さんの赤ちゃんがどこにいるか知ってる。間違いない。
 おじいちゃんは家で村長としての顔は見せたりしない。
 だから今回が初めてだった。集会の話をしてきたことも、村長としておねがいをされたことも。
 「美雪の子が何者かに連れ去られた。情報があったら、どんなことでも教えておくれ」
 まさか、こんなすぐに情報が舞い込んでくるとは思ってなかったけど。
 二人が毎回集会を覗き見ていることは知っていたし、美雪さんの件を知っていることには驚いたりしない。
 けど、不思議に思うことが一つ。
 どうしてすぐに報告しなかったんだろう。
 二人はしょうもない事はするが、根は真面目で人を傷つけるような事はしない。
 たしかに昨日は日も暮れていたけど、美雪さんの心情を考えれば、本人か村長であるおじいちゃんにすぐに報告したほうが良いことは分かるはず。
 わざわざ情報を隠しているとは思えない。とすれば、言わないのではなく言えない・・・・んだ。
 理由は分からないけど、少なくとも今、本人達の口から伝えることができないんだろう。
 私から問い詰めたところで、適当にはぐらかされるのがオチだ。
 どうするべきか――――
 美雪さんと二人を天秤に掛けているように思えて、胃の上あたりが重くなる。
 別に裏切るわけじゃない。考えがあるんだろう。それも分かってあげたい。
 だけど――――
 まだ私には子供はいないけど、いずれお母さんになったときにこの状況に立たされたら、きっとこうして欲しいと思うから。
 「言おう」
 声にすらならない、口を動かしただけだったけど心は決まった。
 天秤は美雪さんに傾いた。
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