魔王の子育て日記

教祖

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夜の魔王

考え魔王 その6

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 正直な話、二人にはその後ヴィエルが風呂から戻ってくるまでの記憶はほとんどなかった。
 頭から離れないのは、見た者に死期を悟らせるあの笑顔だけ。
 放心状態の中で、医務室へ様子を見に来たメイド達が自分達を見て言葉を失っていたことは覚えている。
 「何があったんだ……」
 「パインさんまで……」
 「どーしたのお」
 「あら」
 四者四様の寝間着姿でメイド達は状況理解に努めた。
 各々思案を巡らせたが、ただ一つの事実から確信した。

 「ヴィエル(さん)がいないから、魔王様が何かやったんだろうな」

 不思議と結論に至るまでの時間とその時に浮かべた表情は皆同じだったという。
 
 
 「すみません、ヴィエル。私がが付いていながら魔王様の知能の低さを甘く見ていました」
 「ひでえ……」
 平伏する魔王の傍ら、それ以上に深々と首を垂れるパイン。
 「そんなっ、お二人とも頭を上げてください。確かにちょっとびっくりしましたけど、大したことありませんから」
 パインにまで頭を下げられ、ヴィエルはいたたまれない気持ちに包まれた。
 結果、被害者のほうが気を遣うという不思議な空間が完成したのだった。
 「いえ、今回ばかりは私の責任問題でもあります。反省文でも雑用でも構いません。何かの形で償わせてください」
 「なにもそこまで……」
 ヴィエルは浴場で先の件は腹の奥に収めていた。
 一城の主と側近が自分のような給仕係の仕事を手伝ってくれたのだ。感謝こそあれ、不満を漏らす理由はない。
 併せてパインという者がどれだけ責任感が強く、自分で決めたことは他人が何をしたところで梃子でも動かないことは周知の事実。
 ここは――――攻め方を変えよう
 「では、一つお願いが」
 「はい、なんでしょう」
 
 「赤ちゃんの子育て日記を一緒につけてもらえませんか」
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