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魔王と侵入者
出会い魔王 その5
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「ここ、から、いえ、わかる、する、ですか」
「ああ、大丈夫だ。しかし、本当に日が傾いているとは」
「来るとき、まだ朝だったぞ」
門を抜けると、二人の頭上には夕方を越えて宵の口に差し掛かろうかという藍色が広がっていた。
「あっち、もう、くらい、です。あかり、ある、ですか」
「石灯なら持ってるけど。っつうか、暗いってどういうことだよ。こっち来てそんな暗くなるほど時間経ってねーよ。まあ、こっちは空の色も変わんねーから正確な時間はわかんねーけどさ」
「恐らく昼過ぎか、遅くても黄昏までは行かない程度の時間のはずだが」
二人そろって首をひねる。
集会覗きから今までの間、どれほど多く見積もってもまだ門限を気にせずに遊べる時間帯以上に時間がたっているとは思えなかった。
「こっち、じかん、すすむ、する、はやい、です」
「時間が早い? 進み方が違うのか」
「こっち、しんぞう、いっかい、いっこく。あっち、よんかい、いっこく。よんばい、です」
「「よんばい!?」
聖護は石灯を手近な岩にたたきつけ、淡い緑黄色の光を灯しながら、改めて今まで自分がいた場所が自分の世界とは異なることを実感した。
「さっき、あめ、ふる、した、です。かえり、き、つける、です」
女の忠告を聞き、思いのほか深いぬかるみに小さく頷く二人。
「わざわざ、ありがとな。メイドのねーちゃん」
「恩に着る」
各々、謝辞を述べる。
ひと悶着あったが、わざわざ見送りまでしてくれたことに対しての純粋な感謝の気持ちからくるものだった。
だが、それは幻想だった。
「おれい、いらない、です。おまえ、たち、いえ、かえる、しない、めんどう、です。きょう、こっち、きた、だれか、いう、するな、です。したら、けす、まほう、かけた、です。」
「「っ!?」」
目の前にいるのは、自分たちは違う生き物。本来視認することさえ適わない存在。
それが、意外にも良心的に接してくれたことに対して安心していた。
敵だ。史実に基づく必要もなく、目の前にいるのは敵なのだ。
考えてみれば、言動は厚意的であったが、女の瞳は常に冷たかった。
「へんじ、する、です」
「わかった。だれにもいわねーよ」
「今日はただ遊んで遅くなった。一日中森で遊んで興が乗ってしまった。それ以外に何もない」
それでいい――――女は静かに頷いた。
流れるように二人に背を向け、門に囲われた闇の中へ女の体はいった。
それに続くように門は虚空との境界を曖昧にしてゆき、気が付くと消えていた。
「ああ、大丈夫だ。しかし、本当に日が傾いているとは」
「来るとき、まだ朝だったぞ」
門を抜けると、二人の頭上には夕方を越えて宵の口に差し掛かろうかという藍色が広がっていた。
「あっち、もう、くらい、です。あかり、ある、ですか」
「石灯なら持ってるけど。っつうか、暗いってどういうことだよ。こっち来てそんな暗くなるほど時間経ってねーよ。まあ、こっちは空の色も変わんねーから正確な時間はわかんねーけどさ」
「恐らく昼過ぎか、遅くても黄昏までは行かない程度の時間のはずだが」
二人そろって首をひねる。
集会覗きから今までの間、どれほど多く見積もってもまだ門限を気にせずに遊べる時間帯以上に時間がたっているとは思えなかった。
「こっち、じかん、すすむ、する、はやい、です」
「時間が早い? 進み方が違うのか」
「こっち、しんぞう、いっかい、いっこく。あっち、よんかい、いっこく。よんばい、です」
「「よんばい!?」
聖護は石灯を手近な岩にたたきつけ、淡い緑黄色の光を灯しながら、改めて今まで自分がいた場所が自分の世界とは異なることを実感した。
「さっき、あめ、ふる、した、です。かえり、き、つける、です」
女の忠告を聞き、思いのほか深いぬかるみに小さく頷く二人。
「わざわざ、ありがとな。メイドのねーちゃん」
「恩に着る」
各々、謝辞を述べる。
ひと悶着あったが、わざわざ見送りまでしてくれたことに対しての純粋な感謝の気持ちからくるものだった。
だが、それは幻想だった。
「おれい、いらない、です。おまえ、たち、いえ、かえる、しない、めんどう、です。きょう、こっち、きた、だれか、いう、するな、です。したら、けす、まほう、かけた、です。」
「「っ!?」」
目の前にいるのは、自分たちは違う生き物。本来視認することさえ適わない存在。
それが、意外にも良心的に接してくれたことに対して安心していた。
敵だ。史実に基づく必要もなく、目の前にいるのは敵なのだ。
考えてみれば、言動は厚意的であったが、女の瞳は常に冷たかった。
「へんじ、する、です」
「わかった。だれにもいわねーよ」
「今日はただ遊んで遅くなった。一日中森で遊んで興が乗ってしまった。それ以外に何もない」
それでいい――――女は静かに頷いた。
流れるように二人に背を向け、門に囲われた闇の中へ女の体はいった。
それに続くように門は虚空との境界を曖昧にしてゆき、気が付くと消えていた。
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