魔王の子育て日記

教祖

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魔王と侵入者

出会い魔王 その3

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「「「!?」」」

 中心人物と思われる男が放った一言は、部屋の魔族全員に息を飲ませた。
 部屋に後から飛び込んできた男の頭上には、ほかの魔族とは格の違う禍々しさを放つ、角が生えている。
 見た目や話し方から、格の違いを感じるこの男は、一体何と言ったのか。   
 意味はわからないが、驚愕の表情が自分達に向けられたことで大方予想はついた。
 「門の話だよな」
 「だろうな」
 お互いに向き合うことなく言葉を交わす。
 それだけで、認識を共有した。
 改めて自分達は危機的状況にいるという事実。
 そして、生殺与奪の全ては目の前の魔族達が握っていることを。
 「@☆♪\%→♪この者達がやったというのですか!?」
 先ほど部屋に飛び込んできた女が、二人を指差し驚きを顕にした。
 先程の男の言葉が余程あり得ない話だったのだろうか。見たところ普段あまり表情を変えることのないように見受けられたが。
 源太は微かに身を震わせつつも、冷静に状況を確認していた。
 ひとまず、ありのままを伝えるしかないだろう。
 しかし、絵で伝えるには限界がある。どうしたものか。
 
 「もん、さいしょ、みえる、した、ですか」

 その言葉が自分に向けられたものであったことに気付いたのは、聖護に肩を叩かれた後。
 この空間に自分たち以外に理解できる言語を話せる者など存在しないという先入観がある中、たった1度繰り返されただけで認識できたのは僥倖だと言えるだろう。
 「なんで話せる…‥」
 「べんきょう、した、です。しつもん、こたえる、して、ください」
 拙さはある。
 だが、そこにほほえましさなどは無く、最小限の言葉からでも確固たる意志を感じた。
 
 逃がさない、と

 真実を口にしたところで素直に信じてくれるのだろうか。
 なにせ、自分たちでさえも今ここにいるのが夢ではないかという疑念を払いきれずにいるのだ。
 下手をすれば、虚言を吐く危険分子として処理・・されかねないのではないか。
 冷たいものが背中に這ってくるのを感じながら、源太は重くなった口を開くしかなかった。 
    
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