魔王の子育て日記

教祖

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ここら辺で魔王を見ませんでしたか?

母は偉大なり その5

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 「お、戻って来たね」
 「どこに行ってたんですか!? またどこかに行かれたのかと心配したんですよ!」
 「あの子どもに粉ミルク渡してきただけだ」
 「粉ミルクを!?」
 「どうせ一缶ぽっちじゃ足りねーだろ。他にも粉ミルク売ってる店あんだろ?」
 「それはそうですが……」
 パインとしては一缶だけでも魔術で増やせるため問題なかったのだが、思わぬ予定変更となってしまった。
 二人が話し込んでいる中、女店主は魔王の腕に粉ミルクがないことに気づいた。
 「あれ? お客さん粉ミルクはどうしたの? あ! もしかして義喜に渡してくれたの? うわー。ほんとに申し訳ないことさせちゃったね」
 女店主は魔王の腕に粉ミルクが抱えられていないことから全てを察し、二人に頭を下げた。
 「いや、べつに、だいじょうぶ。きに、する、いらない」
 パインは両手をワイパーのように動かして、女店主に頭を上げさせる。
 「そうは言っても……。よし、ちょっと待ってて」
 何を思い立ったのか、女店主は店の奥にある扉から中へ入り、文字の書かれた看板を持ってくると、店の前に立てた。立てられた看板には準備中と書かれている。
 「よしっと。そんじゃお客さん、悪いんだけど一緒に佐伯さんの店に行ってくれる?」
 「みち、おしえる、すれば、いい」
 「だだでさえ迷惑かけちゃったから道案内くらいさせておくれよ。それに私、あそこの店主と仲良いから役に立てると思うよ」
 最初は断るつもりだったが、この好意に甘える方が女店主の気が済むのならとパインは女店主の申し出を受けることにした。
 「でも、いい、ですか?」
 「任せなさい!」
 女店主が胸を叩くと、津波のように大きく揺れた。
 その様子を見た魔王はパインに問うた。
 「なんか話がまとまったみたいだけどどうなったんだ?」
 「店主さんが他に粉ミルクのある店に連れて行ってくれるそうです」
 「そりゃ助かるな。んじゃ、時間もねーし行くとすっか」
 「そうですね。みせ、あんない、おねがい、する、です」
 パインは女店主に向き直り、道案内を頼んだ。
 「はいよ! ついて来て!」
 二人は女店主を先頭に目的の店へと向かった。
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