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ここら辺で魔王を見ませんでしたか?
母は偉大なり その4
しおりを挟む「@&☆♪→\$%!」
「え? お兄さんはさっきトヨさんの店の前にいた……」
聞きなれない言葉が背後から聞こえたので振り返ってみると、さっき店の前にいたお兄さんがいた。
そしてどうやら僕に用があるらしい。
お兄さんは歩み出ると僕に粉ミルクの缶を差し出してきた。
なんだろう? くれるのかな? でもお兄さん達もいるみたいだったし。
僕が受け取らずにいると、お兄さんは粉ミルク地面に置いて、ジェスチャーを始めた。
粉ミルクを指差してから、両手で体の前に大きな円を書いて、もう一度粉ミルクを指差して、今度は僕を指差して、何かキメ顔で頷いた。
どういうことだろう。そういえばこのお兄さんって言葉話せないのかな? それともこの国じゃないところで生まれた人で、さっき僕を呼び止めたのが、お兄さんの国の言葉なのかな?
だめだ。全然わからない。
僕が困った顔をしていると、お兄さんは粉ミルクを拾って僕の胸にグイグイ押し付けてきた。
「そんな貰えないよ! お兄さんたちが先だったんだから」
僕の話なんてお構いなし(まあ、意味がわからないからしょうがないんだけど)で押し付けてくるから僕も遂に受け取ってしまった。
「#&☆♪→\$%〒!」
「ちょっと待って!」
手を上げて戻って行こうとするお兄さんの腕を掴んで引き止めた。
粉ミルクを譲ってもらったうえにお金までお兄さん持ちなんてだめだ。
第一お母さんにそんなこと知れたらただじゃ済まない。
ポケットからお母さんにもらった粉ミルク代を出してお兄さんの手の中に押し込んだ。
「#&☆♪→\!」
予想通りこんなものいらないと突っ返されそうになったけど、そこは僕も譲れない。
なんとか受け取ってもらって、お兄さんにお礼を言った。
「ありがとう」
お兄さんはキメ顔を作って僕の頭を撫でると、来た道を戻っていった。
お兄さんが人混みで見えなくなってから僕も家の方に足を向けた。
なんだか帰りはやけに足が軽いな。
ダメだと思った粉ミルクが手に入ったから? それとも憧れのお兄さんに出会ったからかな……
軽い足取りで僕は家に帰った。
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