魔王の子育て日記

教祖

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ここら辺で魔王を見ませんでしたか?

母は偉大なり その2

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 「まったく。先を急ぎますよ。魔王様のせいで無駄に時間を食ってしまいました」
 「でもよ~、せっかく人間界にきたんだし、何かやんねーと損だろ?」
 「目的は粉ミルクでしょう! だがら魔王様を人間界に連れて来たくなかったんです」
 「悪かったって。ほら、さっさと買って帰ろうぜ」
 機嫌の悪いパインをどうにかなだめようと、再び粉ミルク探し へと促す。
 いつもなら、元はと言えば、パインが自分をおいて早足で歩いて行ったのが悪いと反論するところだが、実際に寄り道をしてしまっていたことと、待たせている赤ちゃんへの罪悪感で反論する気にはならなかった。
 パインは、しばらくいつもの仏頂面をさらに険しくしていたが、諦めたようにため息を吐いた。
 「百貨店のようなところを見つけてください」
 「よしきた! 百貨店かー、そうだなー、おっ、あそこなんかありそうじゃねーか?」
 魔王が指差した先には、軒先に箒やら、タライやらが置かれた、こじんまりとした一軒家があった。
 目を凝らしてみれば、大きめの木箱に大量の箒が刺さっていたり、大中小それぞれのサイズのタライが天井に届きそうなほどうず高く積まれており、もし買い手がついたらどう渡すのか疑問に思えるほどになっている。
 一目見て、普通の一軒家ではないと判断した二人は足早に店へ近づいていった。
 近づいてみると、明らかに商店であることがわかる。
 二階建てで、上の窓からはベビーベットと思しき木製の柵が見える。
 おそらく二階は生活スペースになっているのだろう。
 軒先には、箒やタライの他にも調理器具や生活用品などが所狭しと並べられ、百貨店であることは間違いないようだ。
 しかし、店主と思しき人影はない。
 やむを得ず、パインは店の中に入り、呼びかけた。
 「すいませーん!」
 「はーい! ちょっと待っててー」
 快活な声が呼びかけに応じ、パインたちが店を一回り見終わると同時に、奥のドアを引いて女性が現れた。
 「「っ!」」
 二人は目を見開き、硬直した。
 身長は低めでパインと頭一個分違う。
 肩に触れる程度の長さの赤みがかった髪で、前髪をピンで留めて額を露わにしている。
 大きな瞳と小ぶりな顔の輪郭が生み出す顔は、俗に童顔と呼ばれるもので、綺麗というより可愛らしいと言うべきだろう。
 そして彼女の背中には、産まれてひと月、多くてふた月ほどしか経っていないであろう赤ちゃんが年季の入ったたすきでおぶわれている。
 が、二人が目を奪われているのはそこではない。
 彼女の胸元には、圧倒的質量を誇る二つの塊が揺れていたのである。
 大きさを比較するならば、後ろでスヤスヤと寝息を立てる赤ちゃんの頭より二周りは大きい。
 その二つの塊が、女性の歩みに応じて上下に揺れる。背中の赤ちゃんも首が座っていないのか、小さく揺れているが、その比ではない。
 「何をお探し? お安くしとくよ。ん? どしたの、お二人さん。そんなぼーっとして」
 声と同じ快活な笑みを浮かべて女性は二人の前に歩み出てきた。
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