魔王の子育て日記

教祖

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魔界へ

とりあえず一杯 その4

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 祈りを終え、皿の上に載った長方形の長い辺を斜めに分断した台形のような形の黄緑色の物体を手にとって、爺が問うた。
 「これはハルールか?」
 「はい。珍しくボアが手に入ったので練り込みました」
 お茶菓子担当のバンゼインが答えた。
 「ほう」
 よく見れば、ハルールの中にはルビー色の透明感のある粒がちらほら見える。
 「では早速。おっとお客様が先。さあ召し上がれ」
 爺が笑顔でお茶を進めるが、二人は手をつけようとしない。
 「やれやれ。もしかしてお茶の飲み方もわからないんですか? これだから人間は」
 ハリルはそう言うと大袈裟に両手を上に向けて首を横に振った。
 「いや、そうではない。彼らは疑っているのだろう。毒でも入れられているのではとな」
 「はぁ!? バカにするのも大概にしなさいよ! アンタら程度毒なんか盛らなくてもこの手で一捻りよ!」
 頬をひくつかせて敵意を剥き出しにして握り拳を作って見せると、二人は抱き合ってぶるぶると震え出した。
 「そんなに威嚇してやるな。可哀想ではないか」
 「そうですよ。この子達もいきなりこんなところに来て困っているでしょうし」
 「バンゼインさんは優しすぎるんですよ」
 「なんて言ってるのかよくわからないけど、多分この子達悪い子じゃないと思うよぉ?」
 「コリユスさんまで……」
 もう分かりましたよーーため息を吐きながらハリルも了承した。
 「我々がお茶に口をつければ、彼らも安心できるでしょう」
 爺が洗練された動きでカップを口へ運び一口飲むと、二人はアイコンタクトをとったのちゆっくりとお茶を口へと運んだ。
 「「@&☆……」」
 あまりの驚きにカップから口を離して中に注がれている真紅の液体を凝視した。
 「美味しいでしょう?」
 二人は言葉は理解できていないようだが、言わんとしたことは伝わったようで、ぎこちなくではあるがコクリと頷いた。
 言葉が伝わったわけではないが会話が成立したことに対して、嬉しそうに爺は小さく頷きハルールをかじった。
 メイドたちも自分の淹れたお茶を美味しいと言ってもらえたのが嬉しく思わず口がほころぶーー若干一名を除いて。
 
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