魔王の子育て日記

教祖

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魔界へ

とりあえず一杯 その3

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 城内の一室、魔王の部屋にはメイド5人と爺が集っていた。
 執務室が二まわりほど小さくなったような魔王の部屋は、魔王の意向で前魔王が使っていたままの状態で残されている。
 前魔王は派手な装飾の類を嫌い、部屋の柱や絨毯、シャンデリアに至るまでシンプルを貫き、無駄な装飾は一切排除。しかも部屋はモノクロで統一されていた。
 白い大理石の上に敷かれた黒い絨毯の上に置かれた長机は、大人が裕に十人は座れる物で、そこには真紅に染まった液体の入ったティーカップが湯気を立てている。
 そこに全員が座り終え、爺のあいさつを待っていた。
 
 ありえない。
 なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで……っ!
 
 「なんでこうなるんですか!」
 
 魔王の部屋にハリルの叫びがこだます。
 それに同期するように目の前の二人が息を止めた。
 「なんでも何も、代々日に二度のお茶の時間には城内の給仕の者たちみんなでお茶をするのが決まりであろう」
 「そうじゃなくて!」
 ビシッと効果音の着きそうなキレのある動きで正面に座る二人の人物を指差すと、ハリルは叫んだ。
 「なんでこんなのと一緒にお茶しなきゃいけないんですか! 私は嫌です! 皆さんも不快に思わないんですか!?」
 右へ左へ視線を巡らせ、ハリルは同調を求めた。
 「私はまあ別に」
 「私も~」
 バンゼイン=アルベントル。
 優しさを具現化したような彼女に、能天気が服を着て歩いているようなコリユス=アルト=リリンが賛同した。
 「アタシも。むしろいろいろ聞いてみたいし」
 含みのある笑みを浮かべるセリアに見つめられ、二人はすくみ上がる。
 「本当のことを知らないからそんなことが言えるんです! 人間なんて野蛮で愚かで卑しい生き物なんですよ!」
 「まあまあ。その話は後にして、早くお茶にしよう。せっかくの淹れたてが冷めてしまっては勿体無い」
 「むう……」
 納得がいかない様子のハリルだったが、爺の言葉に従い再び席についた。
 「ではみんな、頂こう」
 爺は右手を胸に当て、祈りを捧げた。それに習うようにハリルたちも続く。
 しかし例の二人は何が起こったのかわからず困惑するばかりだ。
 
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