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魔界へ
とりあえず一杯
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いつの間に闇を抜けたのか二人はわからなかった。
門から出て放心状態のままの時間が数秒だったのかあるいは数分だったのか。
ただ目の前に広がるのは、薬品の匂いが充満するおそらく簡易医療を行うであろう場所である。
正面にはベットが5つ、左には3つ、自分達が出てきた門の後ろには薬品と思しき瓶が並んだガラス戸の棚がある。
「魔界、なのか?」
「俺の思ってたのはもっといろんなところがトゲトゲして、基本的に物が赤と黒で統一されてるいかにもってとこなんだけどなー」
やっぱ、魔界じゃねーのかーー
心底残念そうに溜息を吐くと、左側のベッド群の右から数えて2つ目と3つ目の間にある窓へと近寄った。
「んで、ここはどこなんだーっと……」
近寄ってから数秒、一言どころか身動き一つしなくなった聖護に不信感を抱いた源太は、同じく窓へと近づいた。
「どうかしたのか? これは……」
赤と紫を混ぜたような色の空には蝙蝠ともカラスとも似つかないような生き物が空を飛び、それを太陽のような光を放つ天体が浮かび上がらせている。
しかし、光量が足りないのか全体的に少し薄暗い印象を受ける。
少し先には、今いる建物を取り囲むように堀が作られ、城と堀の間に張られた水は度々水面が隆起し、中に何かがいることを告げている。
堀と今いる建物とを繋ぐ唯一の道は、堀に付けられた門から伸びる幅の広い橋が一つだけ。
堀の外に広がるのはレンガ造りの建物で、二階建てや三階建ての立派なものだ。
その建物も、門から一直線上には建てられておらず、何やらこの建物の持ち主が相当な権力者であろうということはすぐに分かる。
「なんで空がこんな色してんだよ?」
「あの鳥のような生き物はなんだ?」
現実とあまりにも乖離した窓の外の景色に二人の疑問は絶えない。
そして二人は信じるしかなかった。
「やっぱここって、魔界、だよな」
「ああ。まだ信じられないがな」
ここが魔界であるということを。
そのとき、この医務室に足早に近づく足音が。
ガラガラ……
「@#/&☆♪→、\$%*〒☆♪→\$」
何かを探すように部屋を歩き回り、目的を達したのか足音はまっすぐ出口へと向かう。
ガラガラ……
扉を締める音がすると、足早に足音は遠ざかっていった。
「行ったのか?」
「多分」
足音が完全に聞こえなくなったことを確認した二人は、とっさに隠れた窓側のベッド群の真ん中のベッドカーテンを開けた。
「なんか、俺の思ってた魔族の雰囲気と違かった」
予想外に女性的な、それも若々しい声が聞こえてきたことで二人は驚きを隠せなかった。
「ああ。なんというか人間らしい声というか、可愛らしい声だったな……」
どこか遠くを見つめるように源太は呟いた。
「へー」
「なんて、な。所詮は魔族だ。きっと醜い姿をしていることだろうな。はははは!」
聖護のジト目に耐えきれなくなった源太はわざとらしく笑った。
「まあいいけど。とりあえずどうする? もう戻るか?」
「うむ……」
外の様子を見る限り、まずここが魔界であることは間違いない。おまけにこの建物内には魔族がいる。本来ならどうやっても残る理由はない。無いのだが……
「やっぱり見てみたいよな? 本物の魔族」
「むっ、確かにそれはあるが……」
「万が一見つかったら、何されるがわかんねえってか?」
「そうだ。好奇心はあるが迂闊に行くとは言えない」
「なら答えは簡単だ」
「? どういうことだ?」
「見つからなけりゃいい」
門から出て放心状態のままの時間が数秒だったのかあるいは数分だったのか。
ただ目の前に広がるのは、薬品の匂いが充満するおそらく簡易医療を行うであろう場所である。
正面にはベットが5つ、左には3つ、自分達が出てきた門の後ろには薬品と思しき瓶が並んだガラス戸の棚がある。
「魔界、なのか?」
「俺の思ってたのはもっといろんなところがトゲトゲして、基本的に物が赤と黒で統一されてるいかにもってとこなんだけどなー」
やっぱ、魔界じゃねーのかーー
心底残念そうに溜息を吐くと、左側のベッド群の右から数えて2つ目と3つ目の間にある窓へと近寄った。
「んで、ここはどこなんだーっと……」
近寄ってから数秒、一言どころか身動き一つしなくなった聖護に不信感を抱いた源太は、同じく窓へと近づいた。
「どうかしたのか? これは……」
赤と紫を混ぜたような色の空には蝙蝠ともカラスとも似つかないような生き物が空を飛び、それを太陽のような光を放つ天体が浮かび上がらせている。
しかし、光量が足りないのか全体的に少し薄暗い印象を受ける。
少し先には、今いる建物を取り囲むように堀が作られ、城と堀の間に張られた水は度々水面が隆起し、中に何かがいることを告げている。
堀と今いる建物とを繋ぐ唯一の道は、堀に付けられた門から伸びる幅の広い橋が一つだけ。
堀の外に広がるのはレンガ造りの建物で、二階建てや三階建ての立派なものだ。
その建物も、門から一直線上には建てられておらず、何やらこの建物の持ち主が相当な権力者であろうということはすぐに分かる。
「なんで空がこんな色してんだよ?」
「あの鳥のような生き物はなんだ?」
現実とあまりにも乖離した窓の外の景色に二人の疑問は絶えない。
そして二人は信じるしかなかった。
「やっぱここって、魔界、だよな」
「ああ。まだ信じられないがな」
ここが魔界であるということを。
そのとき、この医務室に足早に近づく足音が。
ガラガラ……
「@#/&☆♪→、\$%*〒☆♪→\$」
何かを探すように部屋を歩き回り、目的を達したのか足音はまっすぐ出口へと向かう。
ガラガラ……
扉を締める音がすると、足早に足音は遠ざかっていった。
「行ったのか?」
「多分」
足音が完全に聞こえなくなったことを確認した二人は、とっさに隠れた窓側のベッド群の真ん中のベッドカーテンを開けた。
「なんか、俺の思ってた魔族の雰囲気と違かった」
予想外に女性的な、それも若々しい声が聞こえてきたことで二人は驚きを隠せなかった。
「ああ。なんというか人間らしい声というか、可愛らしい声だったな……」
どこか遠くを見つめるように源太は呟いた。
「へー」
「なんて、な。所詮は魔族だ。きっと醜い姿をしていることだろうな。はははは!」
聖護のジト目に耐えきれなくなった源太はわざとらしく笑った。
「まあいいけど。とりあえずどうする? もう戻るか?」
「うむ……」
外の様子を見る限り、まずここが魔界であることは間違いない。おまけにこの建物内には魔族がいる。本来ならどうやっても残る理由はない。無いのだが……
「やっぱり見てみたいよな? 本物の魔族」
「むっ、確かにそれはあるが……」
「万が一見つかったら、何されるがわかんねえってか?」
「そうだ。好奇心はあるが迂闊に行くとは言えない」
「なら答えは簡単だ」
「? どういうことだ?」
「見つからなけりゃいい」
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