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魔界へ
そんなこんなんで出てくるわけ・・・・・・ほんまや その3
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「どうしてだよ」
「逆にあの魔法陣でどうやったらそんな自信満々で呪文が言えるんだ」
「俺の気合が足りなかったのか・・・・・・」
「足りないのは他にあるぞ、きっと」
「後なんかないのか? 他に皇族言葉でそれっぽいやつ」
「もう諦めたらどうだ?」
「やだ!」
「やれやれ。じゃあ、姿を顕せ。とかどうだ? えっと、アペヤーだな」
「アペヤー! 発音が違うのか? アピヤー! アピャー! アッピャ!」
「さあ、気が済んだだろう。もう帰るぞ。」
流石に付き合いきれないと、 森の奥の幻の鳥のような聖護を置いて源太は先の小道へと足を進めた。
「なあ源太」
「ん?」
「これ・・・・・・なんだ?」
声音が変わった。
演技にしては自然すぎるように感じた源太は、仕方なく足を止め後ろを振り向いた。
「は? 何言って・・・・・・おいっ! なんだそれ?」
「わからねえ」
今まで聖護の落書きが書かれていたところには、明らかにこの世のものではない禍々しさを放つ門が立っていた。
赤黒い枠の中には、底知れぬ漆黒の闇が蠢いている。
枠には、百合の花が彫られ可憐さと禍々しさがあいまって、魔族の女王のような立ち姿。
そして何よりも、門自体から放たれるオーラのようなものが、これがあるべきものではないことを告げている。
「まさかとは思うけどよ、これ本物なんじゃねーか?」
「本物って、あり得ないだろ」
「じゃあこの突然出てきた門は何だよ?」
「何って・・・・・・わかるわけがない」
こんなものは生まれて始めて見た。そして見て最初に気づいた。これには関わらない方がいい。
源太は無意識のうちに後ずさっていた。
「もしこれが本物なら、この先には魔界があるのか・・・・・・」
「おい。馬鹿な気を起こすなよ」
「馬鹿じゃねーよ。行きたいだけだ」
「それがバカだと言っているんだ! 何かあったらどうする気だ。そもそもこれはどこに繋がっているかもわからないんだぞ!」
「だから入ってみれば」
「入ってすぐに殺されるかもしれないぞ?」
「そんなの入ってみなきゃわかんねーよ」
「お前は命をなんだと思ってるんだ? 悪いことは言わない。今すぐこれを村長達に言うんだ。もしこれが本物なら、相応の対処をしてくれるはずだ。そして俺たちはこのことを忘れる。それで全て丸く収まる」
「そしたら、もうこんなチャンスはねーだろ」
「なんでお前はそこまでして魔界に行きたいんだ! 命が大事じゃないのか? 噂によれば、あっちの世界では容赦無く同類を殺して、それを糧にして新たな食材を求めるという狂気の沙汰が日常茶飯事だそうだ。そんな場所にどうして?」
「魔族にーー美雪ねーちゃんと同じ血が流れてる奴らに会ってみてえ」
「なっ・・・・・・」
何を馬鹿なことを言ってるんだ!
そう言おうとしたがすぐにやめた。
聖護の顔が真剣そのものだったからだ。ただ真っ直ぐに想いを述べた聖護に、源太は何も言えなくなってしまった。
「もちろんこいつが魔界に繋がってるとは決まっちゃいねーよ? だからとりあえず見るだけでいい。これがどこに繋がってるのか調べさせてくれ。危なそうならすぐに戻る」
頼む。行かせてくれ。
ここまで真剣に願いを述べてきたのは出会ってから今までで初めてのことだった。
「ダメだ」
「そんな」
「お前一人じゃ何にもできないだろ。俺も行く」
「え? でも・・・・・・いいのか?」
「ああ。それにここで一人で行かせて帰ってこなかったら俺が後味悪いだろ」
源太は見せつけるように笑った。
「源太」
「よし、行くぞ・・・・・・」
「おう!」
二人は意を決して漆黒へと体を滑り込ませていった。
「逆にあの魔法陣でどうやったらそんな自信満々で呪文が言えるんだ」
「俺の気合が足りなかったのか・・・・・・」
「足りないのは他にあるぞ、きっと」
「後なんかないのか? 他に皇族言葉でそれっぽいやつ」
「もう諦めたらどうだ?」
「やだ!」
「やれやれ。じゃあ、姿を顕せ。とかどうだ? えっと、アペヤーだな」
「アペヤー! 発音が違うのか? アピヤー! アピャー! アッピャ!」
「さあ、気が済んだだろう。もう帰るぞ。」
流石に付き合いきれないと、 森の奥の幻の鳥のような聖護を置いて源太は先の小道へと足を進めた。
「なあ源太」
「ん?」
「これ・・・・・・なんだ?」
声音が変わった。
演技にしては自然すぎるように感じた源太は、仕方なく足を止め後ろを振り向いた。
「は? 何言って・・・・・・おいっ! なんだそれ?」
「わからねえ」
今まで聖護の落書きが書かれていたところには、明らかにこの世のものではない禍々しさを放つ門が立っていた。
赤黒い枠の中には、底知れぬ漆黒の闇が蠢いている。
枠には、百合の花が彫られ可憐さと禍々しさがあいまって、魔族の女王のような立ち姿。
そして何よりも、門自体から放たれるオーラのようなものが、これがあるべきものではないことを告げている。
「まさかとは思うけどよ、これ本物なんじゃねーか?」
「本物って、あり得ないだろ」
「じゃあこの突然出てきた門は何だよ?」
「何って・・・・・・わかるわけがない」
こんなものは生まれて始めて見た。そして見て最初に気づいた。これには関わらない方がいい。
源太は無意識のうちに後ずさっていた。
「もしこれが本物なら、この先には魔界があるのか・・・・・・」
「おい。馬鹿な気を起こすなよ」
「馬鹿じゃねーよ。行きたいだけだ」
「それがバカだと言っているんだ! 何かあったらどうする気だ。そもそもこれはどこに繋がっているかもわからないんだぞ!」
「だから入ってみれば」
「入ってすぐに殺されるかもしれないぞ?」
「そんなの入ってみなきゃわかんねーよ」
「お前は命をなんだと思ってるんだ? 悪いことは言わない。今すぐこれを村長達に言うんだ。もしこれが本物なら、相応の対処をしてくれるはずだ。そして俺たちはこのことを忘れる。それで全て丸く収まる」
「そしたら、もうこんなチャンスはねーだろ」
「なんでお前はそこまでして魔界に行きたいんだ! 命が大事じゃないのか? 噂によれば、あっちの世界では容赦無く同類を殺して、それを糧にして新たな食材を求めるという狂気の沙汰が日常茶飯事だそうだ。そんな場所にどうして?」
「魔族にーー美雪ねーちゃんと同じ血が流れてる奴らに会ってみてえ」
「なっ・・・・・・」
何を馬鹿なことを言ってるんだ!
そう言おうとしたがすぐにやめた。
聖護の顔が真剣そのものだったからだ。ただ真っ直ぐに想いを述べた聖護に、源太は何も言えなくなってしまった。
「もちろんこいつが魔界に繋がってるとは決まっちゃいねーよ? だからとりあえず見るだけでいい。これがどこに繋がってるのか調べさせてくれ。危なそうならすぐに戻る」
頼む。行かせてくれ。
ここまで真剣に願いを述べてきたのは出会ってから今までで初めてのことだった。
「ダメだ」
「そんな」
「お前一人じゃ何にもできないだろ。俺も行く」
「え? でも・・・・・・いいのか?」
「ああ。それにここで一人で行かせて帰ってこなかったら俺が後味悪いだろ」
源太は見せつけるように笑った。
「源太」
「よし、行くぞ・・・・・・」
「おう!」
二人は意を決して漆黒へと体を滑り込ませていった。
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