魔王の子育て日記

教祖

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魔界へ

そんなこんなんで出てくるわけ・・・・・・ほんまや

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 「魔族と会う、だと……。 お前は本気で言ってるのか?」
 「ああ、もちろん」
 あっけらかんと言う聖護に源太は目を見開く。
 「どうやって行くというんだ。魔族の住む魔界と人間界とはどこにもつながる道のない、全く別の世界なんだぞ」
 「そんなのは知ってるさ。俺だって馬鹿じゃねーよ」
 何処か含みのある笑みを浮かべた聖護の犬歯が、陽光を反射してギラリと光る。
 「何を考えている?」
 「いやなに、ちょっと魔術でも使ってみようかと」
 「お前、魔術が使えるのかっ!」
 「いや、使えるわけねーだろ。本の見過ぎだろ源太」
 「は?」
 思わせぶりに言って置きながら、なんでこっちがバカにされなければならないのだ。
 源太は疑問符で頭がいっぱいになった。
 「あのな、魔力がなけりゃ魔術なんか使えるわけねーだろ。俺だってただの人間だ。」
 まるで途方もない夢を語る子供を諭すように聖護は言った。
 「じゃあどうやって?」
 「気合いだ! 気合さえあればなんだってできる」
 「……」
 べしんっ!
 源太は無言のまま聖護の左肩を平手で打った。
 「ってぇ!? 何すんだよ、源太!」
 「お前に期待した俺が馬鹿だった」
 聖護に制裁を加えた源太は一人で街への道を早足で歩き出した。
 「なんだよー。一度言って見たかったんだよー。無理な事をさもできるように言うカッコいい台詞~」
 悪気はなかったんだよ~と聖護は源太の後を追い、隣に並んだ。
 「お前のセリフよりも、お前に馬鹿を見るような目で見られたことの方が頭に来ているんだ!」
 「それはほら、演技の途中だったからよ。まあ、悪かったって。な?」
 「まったく。次に同じようなことがあれば容赦しないからな」
 「肝に命じます」
 あっさりと謝罪を述べた聖護にため息を吐くと、源太の歩調は元に戻った。
 「大体お前、人間が魔術を全く使えないって言ったが、実際はある程度なら使えるように研究が進んでいるんだぞ?」
 「え、本当かよ!?」
 「ああ。なんでも魔法陣とかいう円の中に特殊な文字の書かれた模様みたいなものを使っているそうだ。それを使うと、人間でも魔術に近いものが使えるんだそうだ。広報紙に書いてあった」
 「なるほどなー。よく知ってんな、大工の息子」
 「お前が何も知らなすぎるんだよ、教師の息子」
 そう。何を隠そうこの源太は街の大工頭、源次の息子なのだ。
 大工頭の跡取りとして幼い頃から数字に強く、そして社会情勢に詳しくなるため様々な教育を施されてきたのだ。その一つが、まだ十二歳にして毎朝届けられる世の中に起こった大きなニュースをまとめた広報紙を読むことというわけだ。
 一方の聖護は、この言動でありながらなんと教師の息子である。
 父が隣の街の教師、母が主婦兼編み物教室の講師として週に何度か講習会を行うという、いかにも健康優良児が育つにふさわしい場所で育ったのは、健康な不良児。
 周囲の人は皆、何故あの親からこの子が……と困惑した。
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