28 / 133
人間界へ
LET’S人間界 その6
しおりを挟む
「パイン殿? その~、もしやその魔力結晶、魔力切れなのではないか、な?」
そこへ声を掛けたのは、今までリングスとパインのお供をかけて争っていた爺だった。
その爺の顔にはなぜか引きつった笑みが浮かんでおり、誰の目から見ても足が震えているのがわかる。
「魔力切れ? 私はこれを購入してから一度も使った記憶がありませんが」
「では、その、確かめてみてはどうかな? わしの予想が正しければ、魔力切れだと思うが」
何を根拠に……と訝しげな目を爺に向けながらパインは渋々と言った様子で両手で持った魔力結晶に呼びかけた。
「調査」
呼びかけに応じるかのごとく魔力結晶がほのかな紫色の光を帯び、その上に魔界文字が三つ浮かび上がった。
「三桁まで減ってる……」
これにはさすがのパインも驚きを隠せなかった。
「これは一体どういうことです?」
「いや、私にもさっぱり、ですな、ははは、は、はは」
もはや誰の目にも明らかな爺の動揺に、怒りよりも呆れが先行してしまったパインは、おもわずこめかみに手を当ててしまった。
「爺、この魔力結晶はあなたが使ったんですか?」
「いえ、それは、えっと、その、す、すみませんでした!!」
一通りの接続詞を紡ぎ出したものの、パインの眼力の前には成す術なくあえなく撃沈した爺であった。
予想通りの展開だなーと傍観するメイド&兵士&赤子に絶賛愚痴り中の魔王が周りを囲む中、粛々と魔力結晶をめぐる尋問が幕を開けた。
そこへ声を掛けたのは、今までリングスとパインのお供をかけて争っていた爺だった。
その爺の顔にはなぜか引きつった笑みが浮かんでおり、誰の目から見ても足が震えているのがわかる。
「魔力切れ? 私はこれを購入してから一度も使った記憶がありませんが」
「では、その、確かめてみてはどうかな? わしの予想が正しければ、魔力切れだと思うが」
何を根拠に……と訝しげな目を爺に向けながらパインは渋々と言った様子で両手で持った魔力結晶に呼びかけた。
「調査」
呼びかけに応じるかのごとく魔力結晶がほのかな紫色の光を帯び、その上に魔界文字が三つ浮かび上がった。
「三桁まで減ってる……」
これにはさすがのパインも驚きを隠せなかった。
「これは一体どういうことです?」
「いや、私にもさっぱり、ですな、ははは、は、はは」
もはや誰の目にも明らかな爺の動揺に、怒りよりも呆れが先行してしまったパインは、おもわずこめかみに手を当ててしまった。
「爺、この魔力結晶はあなたが使ったんですか?」
「いえ、それは、えっと、その、す、すみませんでした!!」
一通りの接続詞を紡ぎ出したものの、パインの眼力の前には成す術なくあえなく撃沈した爺であった。
予想通りの展開だなーと傍観するメイド&兵士&赤子に絶賛愚痴り中の魔王が周りを囲む中、粛々と魔力結晶をめぐる尋問が幕を開けた。
0
お気に入りに追加
114
あなたにおすすめの小説


【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。

白い結婚をめぐる二年の攻防
藍田ひびき
恋愛
「白い結婚で離縁されたなど、貴族夫人にとってはこの上ない恥だろう。だから俺のいう事を聞け」
「分かりました。二年間閨事がなければ離縁ということですね」
「え、いやその」
父が遺した伯爵位を継いだシルヴィア。叔父の勧めで結婚した夫エグモントは彼女を貶めるばかりか、爵位を寄越さなければ閨事を拒否すると言う。
だがそれはシルヴィアにとってむしろ願っても無いことだった。
妻を思い通りにしようとする夫と、それを拒否する妻の攻防戦が幕を開ける。
※ なろうにも投稿しています。
【電子書籍発売に伴い作品引き上げ】私が妻でなくてもいいのでは?
キムラましゅろう
恋愛
夫には妻が二人いると言われている。
戸籍上の妻と仕事上の妻。
私は彼の姓を名乗り共に暮らす戸籍上の妻だけど、夫の側には常に仕事上の妻と呼ばれる女性副官がいた。
見合い結婚の私とは違い、副官である彼女は付き合いも長く多忙な夫と多くの時間を共有している。その胸に特別な恋情を抱いて。
一方私は新婚であるにも関わらず多忙な夫を支えながら節々で感じる女性副官のマウントと戦っていた。
だけどある時ふと思ってしまったのだ。
妻と揶揄される有能な女性が側にいるのなら、私が妻でなくてもいいのではないかと。
完全ご都合主義、ノーリアリティなお話です。
誤字脱字が罠のように点在します(断言)が、決して嫌がらせではございません(泣)
モヤモヤ案件ものですが、作者は元サヤ(大きな概念で)ハピエン作家です。
アンチ元サヤの方はそっ閉じをオススメいたします。
あとは自己責任でどうぞ♡
小説家になろうさんにも時差投稿します。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる