魔王の子育て日記

教祖

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人間界へ

LET’S人間界 その4

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 「さて、ではどうしましょうか。私一人が行ってきても構いませんが、できれば荷物持ちの男手が欲しいですね」
 「無視ですか。そうですか」
 いつの間にか泣き止んでいた赤子に愚痴をこぼしだした魔王を尻目に、パインは話を進める。
 「だったら俺が!」
 「いや、私が!」
 名乗りを上げた爺と兵士リングスは、パインのお供につくため、お互いにいがみ合いを開始した。
 「兵士長! ここは俺が行きます! 力だけが取り柄ですから」
 制服の袖ボタンを外しさらけ出されたリングスの上腕二頭筋が、医務室の照明に照らし出された。
 「リングスよ。お前も連日城外の警護にあたり疲労が溜まっているだろう。そこで明日はお前に休みをやろうと思っているのだが?」
 「何を言ってるんですか! 俺ごときに休みなど不要です。むしろ兵士長が休まれてはいかがですか?」
 「いやいや。わしに休みなぞ必要ない。仕事が生き甲斐の老いぼれだからな。だがこれでも兵士長を任された身。そこらの若造に力で引けは取らんぞ?」
 
 「「どうですかパイン殿!」」
 
 二人はパインにお供選びを委ねた。
 その周りには、メイドたちの冷たい視線が赤外線のごとく張り巡らされていることを二人は知らない。
 「そうですね……」
 パインは骨董品でも鑑定するように二人を眺めた。
 するとそこに疑問の声を投げるメイドが一人。
 「あのー、一つ不思議に思うことがあるだけどいい? パインさん」
 「なんですか? セリア」
 セリア=アルベント=アズール。パインの一つ下の18歳で、城内メイド中二番目の若手である。
 魔王同様真っ黒な髪は男の見まごうほどに短く切られ、健康的な小麦色の肌とあいまってとても活動的な印象を受ける 。
 「人間界に行くのって門通るじゃん? 前に聞いたことあんだけど、それってめちゃくちゃ魔力使うんじゃないの?」
 「ええ確かに。本来なら魔術に長けた者が10人がかりで門の召喚を行います。しかし、魔力制御の技術が著しく発達した現代、それは必要ありません」
 パインはそう言うと、どうやったらそんなに入るのか検討もつかないエプロンドレスのポケットから何かを取り出した。
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