魔王の子育て日記

教祖

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人間界へ

LET’S人間界 その2

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 「魔王様? なぜ私と真逆の方へ?」
 あまりの即答に怒りより先に驚きが勝ったパインは、目を見開いて魔王を凝視した。
 少し小道を進み、木々に体が半分隠れてしまった状態で魔王は応えた。
 「だって、こういう時にパインについてくと、ろくなことなかったもん」
 「なっ、人をまるで疫病神のように……。心外です!」
 「メドゥーサの蛇の森とか、もはや迷宮だったぞ!」
 「あれは、ただ道なりに進んだだけで……」
 「俺には道無き道を突き進んだ記憶しかないんだが?」
 魔王の言う森とは、魔界の南にあるメドゥーサ領地の深い森である。
 中にはおびただしい数の蛇が蠢いており、毒を有するものもいる。
 そんな森を当時13歳の魔王と、お供のパインは泣き喚きながら走り回ったのだった。
 理由は魔王の家出。外の世界を見るべく、魔術を用いて転移したものの、術の甘さから座標が定まらず、市街地から遠く離れた山道へと向かってしまったのだ。
 その際に魔王城へ帰るべく、帰り道を選択したのが他でもないパインその人だったわけだ。
 「何にしても、今もこうして二人揃って大地を踏みしめているということは、私の判断は決して間違ってはいなかったのではないですか?」
 「そもそも、別の道を進んでれば直接市街地で保護されてたんじゃねーのかよ?」
 「それを言うなら、魔王様が家出なんて為されなければよかったのでは?」
 「ぐっ……」
 思わぬ墓穴を掘った魔王は、来た道をおずおずと引き返し、元の広場へと戻ってきた。
 「今回は、頼むぞ……」
 「お任せください。必ずや安全な道へお導き致します」
 ではこちらへ――――と促されるまま魔王は、パインの先導の元、左の道へと歩み始めた。
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