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~ 第三章 反撃の狼煙 ~
捻じれまくった迷路の先で④
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それぞれの運命に立ち向かい、歳月を経て再びここでまた道が交わったのかと思うと胸が震える。
天賦の才があったのだろう。
容姿に恵まれているのも間違いない。
しかしだからと言って、その両方を持っている者が必ずこの場に立てるのかと言ったら、答えは「否」だ。
ここに至るまで、平坦で楽な道のりなどなかったと容易に想像できる。
血を吐くような研鑽を重ね、妬みや僻みに耐え、虎視眈々とチャンスを狙い、傷つくことも恐れず勝負に挑む。
「運も実力のうち」と言うが、きっとたゆまぬ努力を重ねた人だけが引き寄せることの出来る切符なのだ。
更にその切符を手にしたとしても完璧な成功が約束された訳でもなく、次の場所でまたひたすら努力を続けなくてはならないと思うと眩暈がする。
「負けてられないな……」
玲旺は思わず口にした。
希少な宝石のように輝ける人たちに、負けないほどの強さと賢さを手に入れなければ。
あっという間に淘汰されてしまわないように。
現状維持ではなく、常に前へ進むために。
死ぬまで終わらない茨の道を、歩き続ける覚悟を自分も持とう。
玲旺はスポットライトを浴びる三人を見て、眩しそうに目を細めた。
ランウェイの先端で氷雨たちはポージングをしながら、目に映る風景を全て焼き付けるかのように会場内を見渡している。
彼らは思い描いた未来に立てているのだろうか。それともここはまだ通過点なのだろうか。
気高い立ち姿は凛々しく、見る者の心を奪う。
「改めて思うが、凄い奴と手を組んでるんだな。仕事相手に相応しいと思ってもらえるように、俺ももっと精進しなきゃ」
どうやら久我も玲旺と似たような事を考えていたようで、視線は氷雨に縫い留められたまましみじみ呟いた。
氷雨がデビューした当時から憧れていた久我にとって、玲旺以上にあの三人が揃った舞台は感慨深いものがあるのだろう。
「相応しいと思ってもらえるように……か。本当にそうだね。前に氷雨さんが、俺のための武器になるって言ってくれたんだ。だから俺はそれに応えたい。安心して背中を任せられる存在でいたいよ。氷雨さんが思い切り戦えるように。戦友だって胸を張って言えるように」
玲旺は自分の胸に手を当てて誓いを刻む。
久我はその時のことを思い出したのか、ふふっと笑って玲旺に顔を向けた。
「懐かしいな、覚えてるよ。ちょっと妬けたからね。あの時、俺はお前の盾になるって言ったんだ。今でもその気持ちは少しも変わらない。お前を守るためなら何だってするよ」
玲旺にだけ聞こえるように、耳元で久我が囁く。低く甘い声で「俺はお前の盾になる」と言われると、体温が一気に上がってしまう。
「……妬いたんだ」
「そりゃぁね」
少しだけ首をすくめた久我が、再び氷雨たちに視線を戻した。
ポージングを終えた氷雨が、正面に視線を残しながらランウェイを鮮やかにターンする。ふわっとなびいた銀糸の髪がキラキラと反射して輝き、その動きに合わせるようにワイドパンツの裾がひらりと広がった。
氷雨と揃いの衣装に身を包んだ湯月も、隣のランウェイを歩く快晴も、打ち合わせなどしていないはずなのにピタリと呼吸の合った動きを見せる。
同じ歩幅で、同じスピードで。
静かな会場を並んで歩く三人は人間離れした美しさを放ち、神々しくて禍々しい。
息を飲んで見守っていると、突然インカムから通信が入った。
『音響、直りました。いつでも流せます!』
天賦の才があったのだろう。
容姿に恵まれているのも間違いない。
しかしだからと言って、その両方を持っている者が必ずこの場に立てるのかと言ったら、答えは「否」だ。
ここに至るまで、平坦で楽な道のりなどなかったと容易に想像できる。
血を吐くような研鑽を重ね、妬みや僻みに耐え、虎視眈々とチャンスを狙い、傷つくことも恐れず勝負に挑む。
「運も実力のうち」と言うが、きっとたゆまぬ努力を重ねた人だけが引き寄せることの出来る切符なのだ。
更にその切符を手にしたとしても完璧な成功が約束された訳でもなく、次の場所でまたひたすら努力を続けなくてはならないと思うと眩暈がする。
「負けてられないな……」
玲旺は思わず口にした。
希少な宝石のように輝ける人たちに、負けないほどの強さと賢さを手に入れなければ。
あっという間に淘汰されてしまわないように。
現状維持ではなく、常に前へ進むために。
死ぬまで終わらない茨の道を、歩き続ける覚悟を自分も持とう。
玲旺はスポットライトを浴びる三人を見て、眩しそうに目を細めた。
ランウェイの先端で氷雨たちはポージングをしながら、目に映る風景を全て焼き付けるかのように会場内を見渡している。
彼らは思い描いた未来に立てているのだろうか。それともここはまだ通過点なのだろうか。
気高い立ち姿は凛々しく、見る者の心を奪う。
「改めて思うが、凄い奴と手を組んでるんだな。仕事相手に相応しいと思ってもらえるように、俺ももっと精進しなきゃ」
どうやら久我も玲旺と似たような事を考えていたようで、視線は氷雨に縫い留められたまましみじみ呟いた。
氷雨がデビューした当時から憧れていた久我にとって、玲旺以上にあの三人が揃った舞台は感慨深いものがあるのだろう。
「相応しいと思ってもらえるように……か。本当にそうだね。前に氷雨さんが、俺のための武器になるって言ってくれたんだ。だから俺はそれに応えたい。安心して背中を任せられる存在でいたいよ。氷雨さんが思い切り戦えるように。戦友だって胸を張って言えるように」
玲旺は自分の胸に手を当てて誓いを刻む。
久我はその時のことを思い出したのか、ふふっと笑って玲旺に顔を向けた。
「懐かしいな、覚えてるよ。ちょっと妬けたからね。あの時、俺はお前の盾になるって言ったんだ。今でもその気持ちは少しも変わらない。お前を守るためなら何だってするよ」
玲旺にだけ聞こえるように、耳元で久我が囁く。低く甘い声で「俺はお前の盾になる」と言われると、体温が一気に上がってしまう。
「……妬いたんだ」
「そりゃぁね」
少しだけ首をすくめた久我が、再び氷雨たちに視線を戻した。
ポージングを終えた氷雨が、正面に視線を残しながらランウェイを鮮やかにターンする。ふわっとなびいた銀糸の髪がキラキラと反射して輝き、その動きに合わせるようにワイドパンツの裾がひらりと広がった。
氷雨と揃いの衣装に身を包んだ湯月も、隣のランウェイを歩く快晴も、打ち合わせなどしていないはずなのにピタリと呼吸の合った動きを見せる。
同じ歩幅で、同じスピードで。
静かな会場を並んで歩く三人は人間離れした美しさを放ち、神々しくて禍々しい。
息を飲んで見守っていると、突然インカムから通信が入った。
『音響、直りました。いつでも流せます!』
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