されど御曹司は愛を誓う

雪華

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~ 第二章 賽は投げられた ~

始動⑤

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 今後の戦略と聞いた生徒たちは、既に伸びている背筋を更にピンと伸ばす。玲旺は咳払いをしてから、一歩前に進み出た。

「今回はオファーを受けて下さり、本当にありがとうございました。近日中に皆さんを、合同コレクションの参加モデルとして正式に発表いたします。それからSNSの発信についてですが、少し情報を絞ろうかと思いまして」

 練習前の貴重な時間なので、手短に済ませようと玲旺は早口で話を進めていく。

「参加モデルとして発表した際に、皆さんのパフォーマンスを見たことがないクリアデイ陣営は、『高校生の新人たちか』って、ちょっと軽く見ると思うんです。世間一般の方々も、フローズンレインは急なイベント開催で、プロのモデルを揃えられなかったんだろうなとか、協賛の桜華大に気を使ってるのかなとか、悪意はなくても勝手な想像を膨らませるはずです」

 軽く見られると言われ、明らかに面白くなさそうな顔をする生徒たちを見渡しながら、玲旺は更に続けた。

「なので、そのイメージを利用しましょう。本番当日まで油断させたいので、ウオーキングの練習風景は一切伏せてください。SNSに載せるのは休憩中の和やかな場面など、学生らしさを前面に出したものだけにして欲しいんです。なぜなら、当日皆さんが『新人なんかじゃなく、既にプロとして第一線で戦う立派な演者なんだ』と、クリアデイや世間の度肝を抜くために。ギャップがあればあるほど、鮮烈な印象を残します。ね? 見たいでしょ。今まで舐めてた奴らが、口をあんぐり開けてるところ」

 玲旺がやろうとしていることを徐々に理解した生徒らが、ワクワクした目でこちらを見る。ちゃんと伝わっているなと確信を持ちながら、玲旺は「絶対に勝つ」と言う意思を込めて、ニッと笑って見せた。

「わざと幼く演じる必要はないし、嘘も吐かなくて良い。ただ、実力を隠すだけ。それで『お遊戯会かよ』とか『学園祭じゃねーぞ』って野次が来たとしたら、作戦は成功しているってことなので一切気にしないで。もちろん皆さんに誹謗中傷が行くようなことがあれば、フローズンレインが盾になって全力で守りますので安心してください」

 玲旺が説明を終えると、固唾を呑んで聞いていた生徒たちから、ワッと一斉に歓声が上がった。

「すっげぇ面白そう! いいじゃん、その作戦。能ある鷹は爪を隠すって言うし、やってやろうよ。当日、目ん玉剥いて驚くクリアデイの奴らを想像するだけで、超テンション上がるよな」

 宮原は立ち上がり、拳を握って周囲に同意を求めた。他の生徒らも興奮しながら、「やってやろう」と口々に言い、鼓舞するように手を叩く。

「よしっ。クリアデイに勝って、氷雨さんに焼き肉奢って貰おうぜ。みんな気合い入れて行くぞ!」

 普段まじめな深影や大人しい黛まで、宮原の呼びかけに「おー!」とときの声を上げながら一緒になって拳を突き上げた。
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