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~ 第二章 賽は投げられた ~
braver④
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そんな話をしていたら、いつの間にか博雅出版スタジオの前に到着していた。
「では、三人で先にスタジオに向かっちゃってください。私はここから近いコインパーキングに車を停めてきますから」
倉持が後部座席を振り返ると同時に、スライドドアが開かれる。
玲旺たちが車から外に出ると、黛も心細そうに助手席からそろそろと降りて来た。肩から下げたスクールバッグの持ち手をギュッと握り締め、不安そうに撮影スタジオを見上げる。
頼りなさは感じるが、長身でスラリとした立ち姿は、やはり見映えが良い。
「一番大きなスタジオだって言ってたから、先に行きましょ。黛クン、挨拶さえちゃんとすれば、あとは倉持さんが来るまで隅っこに隠れててもいいからね」
黛が真剣な面持ちで「はい」とうなずく。慣れた調子で先を行く氷雨の後を、黛と二人並んで付いて行った。
「あっ。氷雨さん、桐ケ谷さん、お疲れ様ですー! 今日はよろしくお願いします。……あれっ、すっごく良さげな子も一緒ですね」
プレスルームで一度会ったことのあるスタイリストの早川が、元気よく駆け寄ってきて目ざとく黛を見つけた。
「あ、あの、初めまして。黛と申します」
緊張気味に頭を下げる黛を見て、早川が「可愛い」を連発する。
「この子も今日撮りますか? 飛び入りでも良いですよ、早速張り切ってコーデ考えます」
「ふふふ。いいでしょ、この子。でも今日は見学だけなの。ねー、それより僕が着る服はどぉれ? 人にコーデしてもらうの、大好きなのよねぇ」
氷雨はラックにかかった服を興味深そうに見た。どれもフローズンレインから発表されたばかりの、夏まっ盛りのアイテムだ。先日プレスルームで貸し出した衣装らしく、見覚えのあるものばかりだった。
早川は大袈裟にくしゃっと顔をしかめ、参ったと言わんばかりに泣き真似をする。
「デザイナーさん本人にコーデ提案なんて、ほんっと緊張するし胃が痛くなりますよぉ。でもまぁ、ありきたりなスタイリングじゃ面白くないので、氷雨さんに挑戦するつもりで頑張りましたけどね」
泣き真似から一転、早川はふふんと鼻を鳴らして胸を張った。氷雨も「そうこなくっちゃ」とにんまり笑う。
ああ、ここはファッションが好きで好きでたまらない人たちの集まりなんだなと、玲旺は鼓動が速まる胸を押さえた。気づけば緊張より高揚の方が勝っている。黛も玲旺の影に隠れながら、目をキラキラさせていた。
「お疲れ様です」
提案されたコーディネートにはしゃいでいた氷雨の背後から、ふいに声がする。その声に真っ先に反応した氷雨が、勢いよく振り返った。
「では、三人で先にスタジオに向かっちゃってください。私はここから近いコインパーキングに車を停めてきますから」
倉持が後部座席を振り返ると同時に、スライドドアが開かれる。
玲旺たちが車から外に出ると、黛も心細そうに助手席からそろそろと降りて来た。肩から下げたスクールバッグの持ち手をギュッと握り締め、不安そうに撮影スタジオを見上げる。
頼りなさは感じるが、長身でスラリとした立ち姿は、やはり見映えが良い。
「一番大きなスタジオだって言ってたから、先に行きましょ。黛クン、挨拶さえちゃんとすれば、あとは倉持さんが来るまで隅っこに隠れててもいいからね」
黛が真剣な面持ちで「はい」とうなずく。慣れた調子で先を行く氷雨の後を、黛と二人並んで付いて行った。
「あっ。氷雨さん、桐ケ谷さん、お疲れ様ですー! 今日はよろしくお願いします。……あれっ、すっごく良さげな子も一緒ですね」
プレスルームで一度会ったことのあるスタイリストの早川が、元気よく駆け寄ってきて目ざとく黛を見つけた。
「あ、あの、初めまして。黛と申します」
緊張気味に頭を下げる黛を見て、早川が「可愛い」を連発する。
「この子も今日撮りますか? 飛び入りでも良いですよ、早速張り切ってコーデ考えます」
「ふふふ。いいでしょ、この子。でも今日は見学だけなの。ねー、それより僕が着る服はどぉれ? 人にコーデしてもらうの、大好きなのよねぇ」
氷雨はラックにかかった服を興味深そうに見た。どれもフローズンレインから発表されたばかりの、夏まっ盛りのアイテムだ。先日プレスルームで貸し出した衣装らしく、見覚えのあるものばかりだった。
早川は大袈裟にくしゃっと顔をしかめ、参ったと言わんばかりに泣き真似をする。
「デザイナーさん本人にコーデ提案なんて、ほんっと緊張するし胃が痛くなりますよぉ。でもまぁ、ありきたりなスタイリングじゃ面白くないので、氷雨さんに挑戦するつもりで頑張りましたけどね」
泣き真似から一転、早川はふふんと鼻を鳴らして胸を張った。氷雨も「そうこなくっちゃ」とにんまり笑う。
ああ、ここはファッションが好きで好きでたまらない人たちの集まりなんだなと、玲旺は鼓動が速まる胸を押さえた。気づけば緊張より高揚の方が勝っている。黛も玲旺の影に隠れながら、目をキラキラさせていた。
「お疲れ様です」
提案されたコーディネートにはしゃいでいた氷雨の背後から、ふいに声がする。その声に真っ先に反応した氷雨が、勢いよく振り返った。
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