されど御曹司は愛を誓う

雪華

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~ 第二章 賽は投げられた ~

強引な招待状⑩

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「桜華高校の制服はフォーチュン製だし、うちの会社とも何かと馴染み深いからな。きっといい返事がもらえるよ。それにしても、桐ヶ谷の発想力にはいつも驚かされるなぁ。逆境でも、お前がいれば怖くないと思えるよ」

 優しく見つめる久我の瞳に、自分の影が映り込んでいる。
 今、自分はどんな表情をしているだろう。
 この決断が正しいのか、皆をムリヤリ泥船に乗せてやしないか、答え合わせが出来るのはまだずっと先だ。玲旺は苦しくなって思わず胸を押さえた。

「俺の独断でみんなを巻き込んじゃって、本当にいいのかな」
「自分の勘を信じろ。お前はいつでも『これで良いんだ』って顔をしておけ。大丈夫、障壁は俺が全部取り除くから」

 玲旺の背中に腕が回され、一瞬だけ抱き寄せられた。励ますように背中を叩くと、すぐに体は離される。そんな些細な行動一つで、気が狂いそうなほど愛おしくなった。

 あぁ、この人に認められていたい。ずっと、欲してもらいたい。
 隣に居て恥じない自分でいたい。
 いつかこの人を導けるほどの力を得たい。

「そうだね、胸を張ってなきゃ。この対決を避けちゃいけないって思った自分の勘を信じるよ。あと、もちろんみんなのことも信じてる」

 高鳴る心臓から送り出される血液が熱い。その熱を閉じ込めるように、玲旺は胸に置いていた手を握り締めた。
 ふいに久我の手のひらが、玲旺の握った拳の上に重ねられる。言葉は何も発しなかったが、ぬくもりだけで充分に気持ちが伝わった。

「玲旺様。私もあなた様の行く手を阻むもの、全て消し去ってみせます。安心して望む道をお進みください」

 藤井が一歩引いた位置から、玲旺に向かって頭を下げる。玲旺は苦笑いしながら、久我と藤井を交互に見た。

「ありがとう。久我さんも藤井も頼りにしてる。けどさ、自分でも何とかできるようになりたいから、二人とも最初から綺麗な道を用意しなくていいよ」
「玲旺様……」

 藤井は感極まったように鼻をすすり、久我は「そっか」と照れたように頭を掻く。通話を終えた氷雨が、はははと笑った。

「二人ともホント過保護ねぇ。いいじゃないの、桐ケ谷クンが思いっきり転んだって。それも経験なんだから」
「うん。でも俺、転ぶつもりもないけどね」
「わぁ、ナマイキ。でも、それでこそ僕たちのボスって感じだけどね」

 ツンと澄まして強気に笑った玲旺を、どこか嬉しそうに氷雨が眺める。それから「さてと」と言って、椅子から立ち上がった。

「緑川学長から芸能科の生徒へオファーする許可を貰ったわ。授業を見学してみるかって聞かれたから、今から行くって言っちゃった。久我クンと桐ケ谷クンはどうする? 一緒に来る?」

 首をかしげて問いかける氷雨に、玲旺は間髪入れずに答える。

「もちろん行くよ」
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