されど御曹司は愛を誓う

雪華

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~ 第一章 売られた喧嘩 ~

第十六話 If

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 しばらくすると、今度はテレビ局の衣装係がショールームを訪れる。ドラマに使用する衣装の貸し出し業務を滞りなく終えた頃には、もう昼を過ぎていた。
 時計を見ながら、吉田が玲旺に声をかける。

「やっと一段落したね。俺はこれから展示会の打ち合わせも兼ねたランチミーティングに行くんだけど、桐ケ谷部長もどう? あ、でも久我さんに撮影が決まった経緯を説明するんだっけ」
「うん。そろそろ来ると思うから、俺はここで待ってるよ。サンプルの検品もやっておくから、吉田くん行ってきちゃって」

 玲旺がにこやかに答えると、どこかソワソワしたような吉田は大きくうなずいた。

「ありがとう、一時間くらいで戻るね。じゃあ、行ってきます」

 浮かれたような足取りでショールームを出ていく吉田を、玲旺が少し不思議そうに見送る。ほどなくして、吉田と入れ替わるように久我が姿を見せた。

「お疲れ。昼飯まだだろ? 買ってきたから、食べながら話そう」

 そう言って、久我がサンドイッチ専門店の紙袋を目の高さに掲げる。今まで気にならなかったのに、大好物のテイクアウト品を見たら途端に空腹を感じた。

「それってエビアボカド?」
「もちろん」
「やった。ありがとう」

 嬉しそうに笑顔を見せた玲旺の髪に久我が指を差し入れて、かき上げるように優しく撫でる。それから奥のブースへ移動し、商談用の机にクラフト紙で出来たサンドイッチ入りのボックスを並べた。

 玲旺が四つある椅子のうちの一つに腰を降ろすと、久我は向かいではなく隣の席に並んで座る。
 机を挟まない分距離が近くて、玲旺はそれだけで浮かれたような気持になった。紙袋から珈琲を取り出す久我の邪魔になるとわかっていながら、玲旺はじっとしていられず久我の肩に頭を乗せる。

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