御伽噺のその先へ

雪華

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第三章 夏の宵

お望みとあらば、その期待に応えようか②

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 おどけた紗良に付き合って、御堂も軽口を叩く。予想していなかった御堂からのカウンターに、紗良は頭から湯気を出して固まった。顔を真っ赤にさせる紗良を見て、御堂も焦ったように頭をぐしゃぐしゃと掻きむしる。

「何なんだよもう。ふざけるなら最後までそのノリでいけよな。お前が照れるとヘンな空気になっちまうだろうが」

 気恥ずかしさに居たたまれなくなり、大きくため息をつくと御堂は立ち上がった。

「何か飲み物とってくる。一人で課題進めてて」
「ええっ、どの公式使うかわかんないよ」
「そこに書いてあるから勝手に探せ」

 ローテーブルの横に積んである何冊かのノートを顎で示すと、御堂は逃げるように部屋の扉をぴしゃりと閉めた。残された紗良はまだ熱い頬を手で押さえながら、仕方なく言われた通りにノートの山を漁りだす。
 どの教科も綺麗な文字でわかりやすくまとめてあったが、肝心の数学が見当たらない。
 ふと、綴じノートの中に一冊だけリングノートが紛れている事に気付いて、思わず手に取った。

 紗良は何気なくそのノートを開いて、首を傾げる。罫線も無視してびっしりと書かれた言葉の数々。
 ペンで書いた文字の羅列は、赤で修正されたり斜線で消されていたりしていたが、どうやら詞のようだった。その中のワンフレーズに見覚えがあって、紗良はスマホを取り出すと百鬼夜行の新曲動画を慌てて再生した。

 画面に映し出された歌詞と御堂のノートを見比べて、息をのむ。
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