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保護者はつらいよ
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「やったー!じゃあ決まりね!今日は遅くまで語り明かすぞー!」
「おー!」
流された気がしないでもないが、今日はナインの家にお泊りだ!いやこの場合は釣られたというべきか?
「おい。」
「「ぴぇ。」」
何の作品について話すー?それとも鑑賞会から?自分のお勧めする作品の布教とか?と二人してきゃいきゃいと盛り上がっていると、頭上から低い声が降り注ぎ頭をがしりと掴まれる。思わずナインと一緒に出したことのない短い悲鳴を上げてしまう。あのすみません、掴まれている頭から冷えてくる気がするのですが。
「俺はな、ナイン。友達を紹介するために今日来たわけじゃないんだ。分かるか?」
「はぃ、もちろんです…。」
「新島さん、アンタも自分の状況分かってるか?アンタは訳も分からない状況に放り出されて、それを解明できるきっかけがないかってところなんだぞ?」
「はぃ、あの、その節は、大変お世話になりまして。」
「…二人してはしゃぎ過ぎ。」
「「すみません。」」
いけないいけない。社会人の端くれとして、あまりにも羽目を外し過ぎてしまっていた。郡司さんの言っていることが正論。反省。
「じゃ、俺も泊まるぞ。」
「えぇ!?」
「健人も?僕はいいけど、何でまた。」
「…新島さんを保護したのは俺だし、途中で放り出すのもな…。」
「ぐ、郡司さん、私十分お世話になってしまいましたし、これ以上迷惑をかけるわけには…。」
「別に迷惑なんて思ってない。…それに、これは単に俺の自己満足だし。」
「はぁ…。」
「…うんうん、分かったよ。今日はみんなでパジャマパーティと行こうじゃない!」
「だからそういう目的で来たんじゃないって言ってるだろ。」
何だかんだで郡司さんもこのお泊りに参加することになってしまった。これでは郡司さんの負担を減らすという目的が達成できず、本末転倒になってしまうのでは…。そう思うも、この家の主であるナインがオーケーを出している以上何も言うことはできない。
「あ、でも健人。明日仕事なんじゃないの?」
「…ここから出勤する。」
「そう?大丈夫?」
「大丈夫。…多分。」
少し不安になってきた。
「それじゃ、改めまして!ユキさんの歓迎会を開催したいと思います!」
「わーい…。」
「ようこそー…。」
「もう!ノリが悪いなぁ!それもこれも片づけを再開したせいなんだからね!」
「お前が普段から整頓してなかったせいだろうが!」
そう、私たちはお泊り会を決定したのはいいものの、重要なことを忘れてしまっていたのだ。ここはナインの家。…お分かりだろうか。部屋は無数にあれど、そこが機能できる状態にあるとは一言も言ってはいないのだ。
テーブルには再度注文したピザやらポテトやら唐揚げやらが所狭しと並べられていたが、私と郡司さんが真っ先に注文したのが飲み物だったのは想像に易いだろう。
「とにかくさ、これで泊まる部屋は確保できたんだから結果オーライでしょ!」
「そうそう、ナインだって分別頑張ってたし!」
「「ねー!」」
「…二人して懐かしいマンガだの何だのを読んでサボっていたことは許さんからな。」
「「…えへ。」」
「はぁ…。」
だって見つけてしまったものは仕方がない。本の片づけって読み出しちゃうところが怖いよね、止まらないんだもの。進まないんだもの。吸引機能でも搭載されているのか?ってくらい手から離れないんだもの。
本の魔力はかくも恐ろしい…。
そのせいか、私たちが足止めを食らってしまったマンガたちは仲良く紙紐でギッチギチにまとめられてしまっている。歪んでしまった表紙の主人公の顔が直視できない。…ごめんなさい、助けることができなくて。
「さぁさ、まずはお疲れ様の気持ちを込めて。カンパーイ!」
「カンパーイ!」
「乾杯。」
各々の飲み物を掲げて喉を潤す。非常に残念ではあるが、私の手に握られているのはアルコールではない。明日仕事だという郡司さんはもちろん、ナインもお酒はあまり好まないのだという。…まぁ見た目的にもアウトな感じするもんね。いくら実年齢的に大丈夫だとしても、あまり勧める気にもならない。年齢確認をする店員さんが気の毒になってくるくらい少年な見た目してるもの。
そんなこんなで自分だけお酒を飲むのもな、と思い有名バリスタ監修のコーヒーを頼んでもらった。うん、いい香り。
こうして、野菜を食べるようにナインに勧める郡司さんの声をBGMになかなかに濃かった一日が終わりに向かうのだった。
「おー!」
流された気がしないでもないが、今日はナインの家にお泊りだ!いやこの場合は釣られたというべきか?
「おい。」
「「ぴぇ。」」
何の作品について話すー?それとも鑑賞会から?自分のお勧めする作品の布教とか?と二人してきゃいきゃいと盛り上がっていると、頭上から低い声が降り注ぎ頭をがしりと掴まれる。思わずナインと一緒に出したことのない短い悲鳴を上げてしまう。あのすみません、掴まれている頭から冷えてくる気がするのですが。
「俺はな、ナイン。友達を紹介するために今日来たわけじゃないんだ。分かるか?」
「はぃ、もちろんです…。」
「新島さん、アンタも自分の状況分かってるか?アンタは訳も分からない状況に放り出されて、それを解明できるきっかけがないかってところなんだぞ?」
「はぃ、あの、その節は、大変お世話になりまして。」
「…二人してはしゃぎ過ぎ。」
「「すみません。」」
いけないいけない。社会人の端くれとして、あまりにも羽目を外し過ぎてしまっていた。郡司さんの言っていることが正論。反省。
「じゃ、俺も泊まるぞ。」
「えぇ!?」
「健人も?僕はいいけど、何でまた。」
「…新島さんを保護したのは俺だし、途中で放り出すのもな…。」
「ぐ、郡司さん、私十分お世話になってしまいましたし、これ以上迷惑をかけるわけには…。」
「別に迷惑なんて思ってない。…それに、これは単に俺の自己満足だし。」
「はぁ…。」
「…うんうん、分かったよ。今日はみんなでパジャマパーティと行こうじゃない!」
「だからそういう目的で来たんじゃないって言ってるだろ。」
何だかんだで郡司さんもこのお泊りに参加することになってしまった。これでは郡司さんの負担を減らすという目的が達成できず、本末転倒になってしまうのでは…。そう思うも、この家の主であるナインがオーケーを出している以上何も言うことはできない。
「あ、でも健人。明日仕事なんじゃないの?」
「…ここから出勤する。」
「そう?大丈夫?」
「大丈夫。…多分。」
少し不安になってきた。
「それじゃ、改めまして!ユキさんの歓迎会を開催したいと思います!」
「わーい…。」
「ようこそー…。」
「もう!ノリが悪いなぁ!それもこれも片づけを再開したせいなんだからね!」
「お前が普段から整頓してなかったせいだろうが!」
そう、私たちはお泊り会を決定したのはいいものの、重要なことを忘れてしまっていたのだ。ここはナインの家。…お分かりだろうか。部屋は無数にあれど、そこが機能できる状態にあるとは一言も言ってはいないのだ。
テーブルには再度注文したピザやらポテトやら唐揚げやらが所狭しと並べられていたが、私と郡司さんが真っ先に注文したのが飲み物だったのは想像に易いだろう。
「とにかくさ、これで泊まる部屋は確保できたんだから結果オーライでしょ!」
「そうそう、ナインだって分別頑張ってたし!」
「「ねー!」」
「…二人して懐かしいマンガだの何だのを読んでサボっていたことは許さんからな。」
「「…えへ。」」
「はぁ…。」
だって見つけてしまったものは仕方がない。本の片づけって読み出しちゃうところが怖いよね、止まらないんだもの。進まないんだもの。吸引機能でも搭載されているのか?ってくらい手から離れないんだもの。
本の魔力はかくも恐ろしい…。
そのせいか、私たちが足止めを食らってしまったマンガたちは仲良く紙紐でギッチギチにまとめられてしまっている。歪んでしまった表紙の主人公の顔が直視できない。…ごめんなさい、助けることができなくて。
「さぁさ、まずはお疲れ様の気持ちを込めて。カンパーイ!」
「カンパーイ!」
「乾杯。」
各々の飲み物を掲げて喉を潤す。非常に残念ではあるが、私の手に握られているのはアルコールではない。明日仕事だという郡司さんはもちろん、ナインもお酒はあまり好まないのだという。…まぁ見た目的にもアウトな感じするもんね。いくら実年齢的に大丈夫だとしても、あまり勧める気にもならない。年齢確認をする店員さんが気の毒になってくるくらい少年な見た目してるもの。
そんなこんなで自分だけお酒を飲むのもな、と思い有名バリスタ監修のコーヒーを頼んでもらった。うん、いい香り。
こうして、野菜を食べるようにナインに勧める郡司さんの声をBGMになかなかに濃かった一日が終わりに向かうのだった。
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