異世界距離恋愛 (修正版)

ふくまめ

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身の危険⑤

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いろんな機械に通されて、次は改めて問診をするというのでナインと向かい合う形でイスに腰を下ろした。さすがに疲れてきた…。律儀に付き合ってくれている郡司さんは、少しも疲れた様子が見られない。さすがは警察官、一般人とは鍛え方が違うってやつかしらねー。

「んじゃ、確認も兼ねて…。お名前は新島有希子さんでお間違えないですか?」
「はい、そうです。」
「こちらに来られたのは、三日前と伺っていましたが?」
「はい。…ふふ。」
「もー真剣にやって!…生年月日と年齢、お間違えないですか?」
「…はい。」
「…二十八歳かぁ。」
「なに!?アラサーで何か問題が!?」
「何も言ってないじゃないか!単にさっきの戦隊もの談議に納得しただけだよ。やっぱり世代なんだなぁって。」
「あぁなんだ、それなら…ってやっぱり年齢いじってんの!?いい歳したおばさんが戦隊ものなんて何言ってんのって話!?」
「被害妄想が過ぎるよ!助けて健人!」
「そう言われてもな…。」

そうやって、大人になると自分が好きだったものを手放したり蓋をしたりして生きていかなきゃいけないなんて…ひどい世の中だと思いませんか!?大人がマンガやアニメを好きだっていいじゃない!それらを作り上げているのは大人ですよ。女が戦隊ものを好きだっていいじゃない。なんちゃらピンクだっているんだからさ、敵の女幹部だってキレイな人多いでしょうに。ビールのお供にマンガを読もうがコーヒー淹れながら戦隊ものを見ようがいいじゃない。まぁ大人になってからは休日お布団と仲良くするのに忙しいので、テレビの前までなかなかたどり着かないのか常なんだけども。

「んんっ…まぁいいでしょう。続けて。」
「あ、はい…。」

その後は、最近体調で気になっていることはないかなど、健康診断でも聞かれるような内容を確認。これで終わりかな?最初はどんなことをされるのかちょっと心配していたけど、何だかんだ楽しい検査だったかもしれない。

「…ふむふむ。」
「…何してるの?」

確認事項がすべて終わったのか、ペンを置いたナインは急に私に向かって手のひらを翳してきた。いや、翳すというか押している、ような動作だろうか。こう、上の方から下にかけて一定間隔に抑えているような…。何か意味があるのだろうか。

「んー、いや…。ユキさんは口元隠した方が可愛く見えるなって。いったあぁぁ!?」
「デリカシーゼロか!?ひっぱたくよ!?」
「もう叩いてるじゃないか!冗談なのに…。」
「今のはナインが悪い、謝れ。」
「ごめんなさい。」

急な爆弾発言に、私に向かって突き出されていたナインの手を咄嗟に叩き落してしまった。今日私と会うの初めてだよね?初対面の人間に対する態度かこれ。誠に遺憾である。…しかし思わず動いてしまったとはいえ、初対面の人の手を叩き落すなんてことをしてしまった私も悪かった。うん。眉間をトントンと指先で押さえながら気持ちを落ち着ける。そう、お互いテンションが上がって気持ちが緩んでしまっていただけだ。お互い様ってことで水に流そうじゃないか、それがいい。

「いや、私もごめんなさい。叩いたりなんかして。大丈夫?」
「問題ないよ!言い方が悪かったね。目元がチャームポイントだって言いたかったんだ。…いやこの場合は口元の方がチャームポイントってことになるのかな。」
「それ悪口じゃない!?」

咄嗟に手が出なかったことを褒めていただきたい。これはあれだ、特にコメントすることがなくて「愛嬌あるよね!」と絞り出すタイプのあれだ。…いや違うかもしれない。とにかく言えることは、今ナインが何を言おうが私の神経を逆なですることになりかねないということだ。

「ふぅー…。オーケーオーケー、分かった。もういい。とにかくこれで終わり?それじゃあ天才科学者様の分析結果を聞きましょうか。」
「うーんと…あ!ちょっと待って、大事な検査残ってた!」
「えぇ?まだ何かあるの?」
「うん!大丈夫、パパっとやっちゃうからさ。腕出して。」

うん?腕?出すの?

「忘れることろだったよー。血液検査!」

にこやかな笑顔でナインが取り出したのは注射器。私はここで死ぬのだろうか。
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