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冒険気分②
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無事電車に乗り込み目的地へと向かう間、俺と新島さんは無言で揺られていた。バスの時と同じように、満員とは言えないながらもそこそこの人数が電車に乗っている。もちろん獣人も。ここまで普通に人間も獣人も入り乱れて行き来している環境を目にしたためか、新島さんも特にまじまじと見るような様子はなく慣れてきたようだ。
ほどなくして目的の駅に到着して、小声で新島さんに声をかける。俺たちは人の流れに乗ってホームに降りる。
「…さて、ここからどうするの?」
「ここに迎えに来てくれることになってる。」
「あぁ、待ち合わせてるのね。…どんな感じの人?男性?女性?」
散々変な奴だと説明していたせいか、新島さんは警戒するように相手を先に見つけようとあたりを見回している。…あいつが駅まで迎えに行くと言うので任せたが、今になって考えると自分たちで向かった方がよかったような気がしてきた。大丈夫だろうか、色々と。
「…あー、えっと。新島さん、今日会う相手ってちょっと変わってて…。」
「えぇ、それは聞いたけど。」
「その、性格的な部分もそうなんだけど…。」
「あー、いたいた!おーい健人!」
どう伝えたらいいもんか。獣人ですら見たことがない、聞いたこともないなんて言う新島さんだ。あいつのことを見たら…。そう頭を抱え始めた時、聞き覚えのある声が遠くから聞こえてきた。…なんてこった。
「いやースマホ忘れちゃってさ、すれ違わなくてよかったよ!」
「…えーっと?」
「あ、あなたが例の不審者さん?」
「ちょっと、誤解されるような言い方しないでください!…いや間違ってはいないですけど…。ってもしかして、あなたが…?」
パタパタと駆け寄ってくる気配に思わずため息が出る。話しかけられた新島さんも咄嗟に反応したものの、あいつの見た目に一瞬動きが止まる。…だから説明しようとしていたのに。
「あれ、健人から聞いてない?そう!僕はこの間健人にあなたについて相談を受けてたんだ。ナインです、よろしく!」
「…えっと…?」
「…間違ってません、本人です、こいつです。」
「えぇ!?だってどう見たって…。」
新島さんの確認するような視線に何度も頷いて返す。気持ちは分かるがこれが現実です、受け入れてください。
「どう見たって、子供じゃない!」
「子供じゃない!」
頭を抱えていかにも絶望している、といった様子の新島さんにぷりぷりと怒って見せるナイン。確かにナインの実年齢は俺よりもはるかに上。言い分としては間違っていないのだが、いかんせん本人の体格は完全に男子小学生のそれなのだ。そして自分の興味のあること以外には関心ゼロという性格が災いして、基本的に半袖Tシャツに短パン。肩から斜めにかけられたメッセンジャーバッグ。…完全にお使いに行かされている小学生にしか見えない。これはナインにも責任があると言っていいだろう。
「郡司さんが信頼していそうな感じだったから、さぞ落ち着いた大人な雰囲気の人かと思ってたのに!」
「え、嘘!?僕ってば健人に信頼されてるって!」
「勘違いだ。」
「それなのにこんな子供だったなんて!私どうなっちゃうの!?」
「だから子供じゃないって、失礼な人だな!まったく…。」
ぶつぶつ文句を言いながらも、車を停めているからと俺たちを案内し始める。まだショックから立ち直れていなさそうな新島さんに声をかけながら、大人しくナインについていく。随分と重いため息が背後から聞こえる。罪悪感がすごい。
「ナイン、あの人…新島さんはちょっと世間離れしてるっていうか…。あまり世の中のこと知らないんだよ。あまり怒らないでやってくれ。」
「分かった分かった。まぁでも、なかなか面白い人だね!健人は不思議な縁に恵まれているんだねぇ。」
「…嬉しくない。」
「いやーこれから話を聞くのが楽しみだよ!」
「おい…。」
「大丈夫大丈夫!ちゃんと人権には配慮するからさ!」
ナインの性格を知っている分、新島さんとはまた別の意味で心配になってくる。念のため釘を刺しておこうと声をかけると、案の定先ほどまでの態度が嘘のように上機嫌になっていた。スキップまでし始めそうなナインの様子に、自分からつけた話だったとはいえ頭が痛くなってきたのだった。
ほどなくして目的の駅に到着して、小声で新島さんに声をかける。俺たちは人の流れに乗ってホームに降りる。
「…さて、ここからどうするの?」
「ここに迎えに来てくれることになってる。」
「あぁ、待ち合わせてるのね。…どんな感じの人?男性?女性?」
散々変な奴だと説明していたせいか、新島さんは警戒するように相手を先に見つけようとあたりを見回している。…あいつが駅まで迎えに行くと言うので任せたが、今になって考えると自分たちで向かった方がよかったような気がしてきた。大丈夫だろうか、色々と。
「…あー、えっと。新島さん、今日会う相手ってちょっと変わってて…。」
「えぇ、それは聞いたけど。」
「その、性格的な部分もそうなんだけど…。」
「あー、いたいた!おーい健人!」
どう伝えたらいいもんか。獣人ですら見たことがない、聞いたこともないなんて言う新島さんだ。あいつのことを見たら…。そう頭を抱え始めた時、聞き覚えのある声が遠くから聞こえてきた。…なんてこった。
「いやースマホ忘れちゃってさ、すれ違わなくてよかったよ!」
「…えーっと?」
「あ、あなたが例の不審者さん?」
「ちょっと、誤解されるような言い方しないでください!…いや間違ってはいないですけど…。ってもしかして、あなたが…?」
パタパタと駆け寄ってくる気配に思わずため息が出る。話しかけられた新島さんも咄嗟に反応したものの、あいつの見た目に一瞬動きが止まる。…だから説明しようとしていたのに。
「あれ、健人から聞いてない?そう!僕はこの間健人にあなたについて相談を受けてたんだ。ナインです、よろしく!」
「…えっと…?」
「…間違ってません、本人です、こいつです。」
「えぇ!?だってどう見たって…。」
新島さんの確認するような視線に何度も頷いて返す。気持ちは分かるがこれが現実です、受け入れてください。
「どう見たって、子供じゃない!」
「子供じゃない!」
頭を抱えていかにも絶望している、といった様子の新島さんにぷりぷりと怒って見せるナイン。確かにナインの実年齢は俺よりもはるかに上。言い分としては間違っていないのだが、いかんせん本人の体格は完全に男子小学生のそれなのだ。そして自分の興味のあること以外には関心ゼロという性格が災いして、基本的に半袖Tシャツに短パン。肩から斜めにかけられたメッセンジャーバッグ。…完全にお使いに行かされている小学生にしか見えない。これはナインにも責任があると言っていいだろう。
「郡司さんが信頼していそうな感じだったから、さぞ落ち着いた大人な雰囲気の人かと思ってたのに!」
「え、嘘!?僕ってば健人に信頼されてるって!」
「勘違いだ。」
「それなのにこんな子供だったなんて!私どうなっちゃうの!?」
「だから子供じゃないって、失礼な人だな!まったく…。」
ぶつぶつ文句を言いながらも、車を停めているからと俺たちを案内し始める。まだショックから立ち直れていなさそうな新島さんに声をかけながら、大人しくナインについていく。随分と重いため息が背後から聞こえる。罪悪感がすごい。
「ナイン、あの人…新島さんはちょっと世間離れしてるっていうか…。あまり世の中のこと知らないんだよ。あまり怒らないでやってくれ。」
「分かった分かった。まぁでも、なかなか面白い人だね!健人は不思議な縁に恵まれているんだねぇ。」
「…嬉しくない。」
「いやーこれから話を聞くのが楽しみだよ!」
「おい…。」
「大丈夫大丈夫!ちゃんと人権には配慮するからさ!」
ナインの性格を知っている分、新島さんとはまた別の意味で心配になってくる。念のため釘を刺しておこうと声をかけると、案の定先ほどまでの態度が嘘のように上機嫌になっていた。スキップまでし始めそうなナインの様子に、自分からつけた話だったとはいえ頭が痛くなってきたのだった。
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