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明日の予定
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「…そういえば、明日なんだが。」
「え?」
「明日、俺仕事休みで。昨日言った知り合いに会う話、つけてあるから。」
カレーを完食して、皿を洗いながら新島さんに話しかけた。昨日急遽連絡した割に、電話の相手はすんなりと会うことを了承したのだった。決して暇な奴ではないと思うのだが…。まぁ昔からよく分からないところでやる気を出すタイプだったし、今回も好奇心が勝ったんだろうな。その好奇心の部分関して、新島さんに先に説明しておかなければ、と思ってのことだった。
「え、そんなすぐに…!ありがとう!」
「いやいいんだけど…。その、そいつ頭がいいのは確かなんだが、少し、いや結構変わり者で。」
「はぁ…?」
「…びっくりするかもしれないけど、悪い奴じゃないから。」
「…友達なんだ、郡司さん。」
「そういうわけじゃ…。」
確かに、俺じゃどうしようもなさそうな問題があった時なんかに連絡とったりはしてるが…。これが世間一般に言うところの仲の良さというものに該当するのかは疑問だ。というか、正直あれと同類にされるのは勘弁いただきたい。悪い奴ではない。それは間違いない。間違いないのだが…うん。
「まぁ、現状私にできることってかなり限られてるし。この状況に説明がつくかもしれないなら、行かない理由なんてないけど!」
「…ここに来た時から思ってたけど、本当に胆座ってるよな。」
「それ女性に向かって使う表現?バカにしてる?」
「いや、正直な感想。」
「はー、そうですか。…自分でも、驚きはしてもやけになろうとは思わないのは、なかなかだと思うわ。ただ理解が追いついてなくて、目の前のことに集中してるだけかもしれないけど。」
「…きっと、あいつが何か思いつくはずだから。」
「…うん。」
新島さんにとってはどんな人間なのかもわからない奴、しかも俺からの説明も現状怪しい奴判定に傾くような情報しかないってのに、そんな奴に話を聞きに行かなきゃなんないのは不安だろうな。…でもすまん。あいつが変人なのは本当のことなんだ。
「それで、私はどうすればいい?その会いに行く人って、ここの近くに住んでるの?」
「近所ではないな。電車で行く。昼前には出発したいからそのつもりで。」
「分かった。」
「…くれぐれも、平常心で頼む。」
「そこまで念を押されると逆に不安になってくるんだけど…。」
「…まぁ、大丈夫だろ。」
「ぜひそうであってほしいわ。…ってあぁぁ待って待って!」
台所の片付けも終わって、風呂の準備でもしようかと足を向けると、新島さんが急に目の前に躍り出て腕を広げる。あまりに必死な様子に思わずしっぽが逆立ってしまう。一体なんだというのか。
「あーえっと、その…郡司さんいない間、洗濯機を拝借しまして…。」
「…。」
「洗濯をさせてもらったんだけど、干す場所に困っちゃって…。浴室で乾燥させてもらってたの忘れてた!」
「あぁ…。」
「すぐに取り込んでくるから!ちょっと待ってて!」
そういえば、新島さんは出張から帰って来たばかりだと言ってたっけな。俺はあまり遠出するような経験はないが、旅先から帰ってきてすぐにすることといえば荷解きと洗濯であることは想像できる。…男の自分が手を貸すのもどうかと思うし、ここは大人しく待っているのが無難だろう。こういった細々とした部分は、他にもきっとあるのだろう。新島さんには何だかんだで不便な思いをさせているのだろうが、俺にはそれが思いつきすらもしない。こんな状況、稲荷先輩に知られたら来月までネタにされるのが想像できてしまう。…丸尾先輩に意見を求めるのが無難だな、今度聞いてみよう。
「お待たせしました!取り込んだから、お風呂どうぞー。」
「…おー。」
ゴソゴソと洗濯物らしき物をタオルでくるみながら新島さんはリビングへと戻ってきた。正直新島さんの方に先に風呂を勧めたい気持ちではあるんだが、俺がいると物の整理をするにも気を遣うだろうし、ありがたく先に入らせてもらうことにした。…ってここ俺の家なんだから遠慮するってのもなんだかな。そう思いながらも、今日は少しゆっくり浸かってくるか、なんて頭の隅で考えた。
「え?」
「明日、俺仕事休みで。昨日言った知り合いに会う話、つけてあるから。」
カレーを完食して、皿を洗いながら新島さんに話しかけた。昨日急遽連絡した割に、電話の相手はすんなりと会うことを了承したのだった。決して暇な奴ではないと思うのだが…。まぁ昔からよく分からないところでやる気を出すタイプだったし、今回も好奇心が勝ったんだろうな。その好奇心の部分関して、新島さんに先に説明しておかなければ、と思ってのことだった。
「え、そんなすぐに…!ありがとう!」
「いやいいんだけど…。その、そいつ頭がいいのは確かなんだが、少し、いや結構変わり者で。」
「はぁ…?」
「…びっくりするかもしれないけど、悪い奴じゃないから。」
「…友達なんだ、郡司さん。」
「そういうわけじゃ…。」
確かに、俺じゃどうしようもなさそうな問題があった時なんかに連絡とったりはしてるが…。これが世間一般に言うところの仲の良さというものに該当するのかは疑問だ。というか、正直あれと同類にされるのは勘弁いただきたい。悪い奴ではない。それは間違いない。間違いないのだが…うん。
「まぁ、現状私にできることってかなり限られてるし。この状況に説明がつくかもしれないなら、行かない理由なんてないけど!」
「…ここに来た時から思ってたけど、本当に胆座ってるよな。」
「それ女性に向かって使う表現?バカにしてる?」
「いや、正直な感想。」
「はー、そうですか。…自分でも、驚きはしてもやけになろうとは思わないのは、なかなかだと思うわ。ただ理解が追いついてなくて、目の前のことに集中してるだけかもしれないけど。」
「…きっと、あいつが何か思いつくはずだから。」
「…うん。」
新島さんにとってはどんな人間なのかもわからない奴、しかも俺からの説明も現状怪しい奴判定に傾くような情報しかないってのに、そんな奴に話を聞きに行かなきゃなんないのは不安だろうな。…でもすまん。あいつが変人なのは本当のことなんだ。
「それで、私はどうすればいい?その会いに行く人って、ここの近くに住んでるの?」
「近所ではないな。電車で行く。昼前には出発したいからそのつもりで。」
「分かった。」
「…くれぐれも、平常心で頼む。」
「そこまで念を押されると逆に不安になってくるんだけど…。」
「…まぁ、大丈夫だろ。」
「ぜひそうであってほしいわ。…ってあぁぁ待って待って!」
台所の片付けも終わって、風呂の準備でもしようかと足を向けると、新島さんが急に目の前に躍り出て腕を広げる。あまりに必死な様子に思わずしっぽが逆立ってしまう。一体なんだというのか。
「あーえっと、その…郡司さんいない間、洗濯機を拝借しまして…。」
「…。」
「洗濯をさせてもらったんだけど、干す場所に困っちゃって…。浴室で乾燥させてもらってたの忘れてた!」
「あぁ…。」
「すぐに取り込んでくるから!ちょっと待ってて!」
そういえば、新島さんは出張から帰って来たばかりだと言ってたっけな。俺はあまり遠出するような経験はないが、旅先から帰ってきてすぐにすることといえば荷解きと洗濯であることは想像できる。…男の自分が手を貸すのもどうかと思うし、ここは大人しく待っているのが無難だろう。こういった細々とした部分は、他にもきっとあるのだろう。新島さんには何だかんだで不便な思いをさせているのだろうが、俺にはそれが思いつきすらもしない。こんな状況、稲荷先輩に知られたら来月までネタにされるのが想像できてしまう。…丸尾先輩に意見を求めるのが無難だな、今度聞いてみよう。
「お待たせしました!取り込んだから、お風呂どうぞー。」
「…おー。」
ゴソゴソと洗濯物らしき物をタオルでくるみながら新島さんはリビングへと戻ってきた。正直新島さんの方に先に風呂を勧めたい気持ちではあるんだが、俺がいると物の整理をするにも気を遣うだろうし、ありがたく先に入らせてもらうことにした。…ってここ俺の家なんだから遠慮するってのもなんだかな。そう思いながらも、今日は少しゆっくり浸かってくるか、なんて頭の隅で考えた。
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