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どっちもどっち

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一体どういうことなのだろうか。
いつから私の家はファンタジー感満載のメルヘン空間になってしまったのだろう。いや、ついさっきまでお城がどうとか考えてニヤニヤしてしまっていた私に言えたことではないか…。
ぐるぐると走馬灯のようにどうでもいいことばかりが頭の中を駆け巡る。現実逃避をせずにはいられないだろ、こんなの。あまりの光景に固まってしまっていると、二足歩行の犬がラーメンどんぶりをテーブルに置いてこちらに向かってくる。
何、何です!?

「聞こえてんのか?…泥棒にしちゃ大荷物だし、間抜けだな。」
「…はぁ!?」

泥棒。
泥棒だって!?私が!?どこをどう見たらそんな風に見えるんだ!くたくたになって帰ってきてみれば、二足歩行の犬に家に上がられているし、そいつに家主である私が泥棒扱いされて。挙句の果てに間抜けだってぇ!?泥棒なのはそっちだろ!呑気にラーメンなんか作りやがって!私のラーメンだぞ!

「どうやって鍵を開けたのかは知らんが、空き巣するにしてもこの家を選んだのが運の尽きだったな。これからはもう少し下調べをしっかりしろよ。ま、これからなんてないけどな。」
「…言わせておけば…!空き巣なのはそっちでしょうが、このワンコロが!あんたがラーメンすすってる間に警察に通報してやるわ!」

疲れもあったのか、勢いに任せて盛大に啖呵を切ってスマホに手を伸ばす。緊急通報はロックを解除しなくても繋がるはず。見てなさいよ、ものの数秒であんたなんかお縄に、いや保健所行きにしてやる!

「ほー、自首するってのか。感心感心。」
「バカじゃないの!?あんたを警察に突き出すに決まってんでしょ!人の家に上がり込んどいて、何をのうのうと…!」
「ここはオレの家だ。」
「はぁ!?言い訳すんならもっとマシなのにしなさいよ!家主に向かってその言い訳で乗り切れると思ってんの!?」
「オレの家だ。」
「私の家!」

何こいつ。あまりにも堂々としすぎてる。普通警察呼ぶって言ったら、もう少しビビるもんじゃないの?それか、強硬手段に出ようとするとか…。深く考えないで警察を引き合いに出しちゃったけど、その可能性もあったな。こいつが錯乱するタイプじゃなくてよかった…。でも、私だってできることなら警察のご厄介ににならないで済むならそれに越したことはない。さっさと飛び出して逃げてくれればよかったのに…!予想していなかった相手の反応に、なかなか警察への通報ボタンが押せず睨みあっていると、向こうがため息をつく。

「…部屋間違ってんのか?あんた、何号室?」
「間違えるわけないでしょ。203号室でしょ、ここ。」
「住所最初っから言ってみて。」

何なの。部屋を間違えたのではないかと勘繰っているのか、二足歩行の犬は私の家の住所を確認し始めた。…まぁ確かに、現実的に起こり得そうな間違いではあるだろうけど。だけど今の私はそんな間違いを起こすような精神状態ではないのだ。至福の休日を満喫するために、かつてないほど集中力は研ぎ澄まされているのだから!そもそも犬がジャージ着て二足歩行して、人間の言葉を話すって何!?着ぐるみにしたって…なんで?って感じだし。覆面姿の強盗犯と一緒にしてはいけないぐらいに理解できないチョイス。不審者の極み!
ともかく、淀みなく住所を伝えた私の言葉に二足歩行の犬は顔を曇らせる。犬の表情なんてよく分からないけど。

「…ここの住所だな。」
「当然でしょ、自分の家なんだから。さ、いい加減不法侵入のコソ泥は自分だって認めたらどう?今だったら、このまま帰ってくれれば見逃してあげるけど?」
「だから、ここはオレの家だって。」

お互いにここが自分の家だと一歩も譲らない。というか、私の家なのは動きようのない事実なんだからさっさと明け渡しなさいよ!見え見えの嘘なんて、ついたって無駄じゃない!

ぐうぅぅ…。

玄関で押し問答を続けていると、ふいに空腹を告げる音が響く。

「…。」
「…あ、あんた!こんな真剣な時に何お腹鳴らしてんの!?立場ってもんを分かってないの!?」
「いや、オレじゃねぇよ。お前が」「私じゃない!!」
「…。」
「…。」
「まぁ…、とにかく上がれば。」
「…そうする。」

上がればって、ここは私の家なんだから当然!…見え見えの嘘ついてるのは、私も同じか。はぁ…頭が痛い気がする。おなかすいたなぁ。
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