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あなたは何タイプ?⑨
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「よーし、ここがその荷馬車隊…ってえぇ?」
「待ちやがれお前ら!先に見つけるのはこっちだ…っては?」
バタバタと執務室の裏に回り込んだオレたちの目に飛び込んできたのは、所狭しと並べられた荷馬車と積み荷たちだった。何だこの量!?
「おいアルバート!なんだってんだよこの数は!?どんだけ領地から連れてきてんだよ!」
「えーと大体100…いえ150だったかな…。」
「しっかり把握しとけよ!」
「どっちにしろ多すぎる!」
「な、なにがなんだか、もう分からないよ…。」
「…王子、これを探すんです?」
「そうする他ありませんね。」
正確な数は分からないが、とにかく大量なこの荷物たちを地道に確認するしかないのか…。考えただけで気が遠くなるぜ。
「さー、ここで立っていても始まりません!ウィルさん、行きましょう!」
「は、はい!」
「何で王子が一番やる気に満ちてんだよ、意外と脳筋か?」
「皆さん皆さん、ご安心ください。あの絵を荷物の中に忍ばせたのは私なんです。どこの荷馬車に紛れ込ませたか教えますよ。」
「そ、そうよね!仕込んだ張本人がこっちの味方なんだもの、何の問題もないじゃない!」
「よ、よかった…!じゃあ、どこの荷馬車に入れたのか…。」
数の多さに気を取られちまったが、よく考えれば確かにそうだ。アルバートがこっち側にいる以上、オレたちが不利になることなんてないじゃねぇか!
早速目的の物の場所を教えてもらおうか!
「えぇもちろんです。確かこの隊列の…四番目…この荷馬車です!」
「よし、ウィルたちにバレる前に、さっさとやっちまうぞ。」
「「うん!」」
「…この箱、じゃねぇな。こっちの包みは…織物か?おい、どこに入れたんだ。」
「おかしい…あれ、確かこの荷馬車だったはず…。あ、そこの人、この間積み荷を一つ追加したはずなんですが。」
「へ?この荷馬車にですか?うーん…あぁ!つい先ほど、積み荷の行き先ごとに馬車の位置も整えたんですよ!出立の時にスムーズになるように。ですので、おそらく荷物を追加したのはこの荷馬車ではないかと。」
…なんだかいやーな空気になってきたな…。荷馬車隊が配置転換?この数全部か?とはいっても、ここを管轄しているアルバートがそれを知らないはずはない。…ないよな?
「…。」
「おい、アルバート?何してんだよ。荷馬車の場所が変わったんだったら早いところそっちに移動しねぇと。」
「そ、そうだよ…!このままだと、先にウィルたちが見つけちゃうかも…!」
「そうよ…!まぐれでも、絵を紛れ込ませた荷馬車を当てちゃうかもしれないわ!どこ!どこに移動させたの!?」
「…ません…。」
「「「え?」」」
「分かりません!配置の変更を予定していたの、すっかり忘れていました!!」
「「「アホかーーーー!!!」」」
響き渡る大絶叫。こんなところでお約束のようなことしなくていいんだよ!なんなんだよ忘れてたって!このままじゃ、先に探し始めてたウィルたちの方が有利…!まずいことになった…!
「ユイ、アレックス!こうなったらこっちも手当たり次第に探すしかねぇ!もうこいつに期待しても無駄だ!」
「そうね!一つでも多く荷馬車を確認しないと!」
「あの…本当に申し訳ないのですが、そこまではっきり言われますと…。私も探しますから…。」
「キビキビ確認して、全速力で。」
「アレックスさんまで…。」
これ以上時間を無駄にすることはできない。さっそく方々に散って荷馬車の中を確認する。積まれている荷物は大きさも種類も様々で、一つ一つ確認するとなると骨が折れるが、そうする他ない。こうしている間にも、ウィルたちは正解の荷馬車を引き当てちまっているかもしれねぇ!
「ここでもねぇ…!ここも!」
「ない…!ここにもない!」
「ど、どこに入れちゃったんだよ…アルバートさん…!」
「面目ないです…!」
「ウィルさんの絵…あれがなければ、この祭典の成功が!」
「そこまで言っていただけるなんて、ちょっと照れます…。」
探せど探せど、一向に地獄絵図は見つからねぇ…。だが、ウィルたちの方からも見つかったらしい反応がないところを見ると、向こうもまだ見つけられてはいないようだが…。
時間の問題だ、急がねぇと。
「失礼します、アルバート様。荷馬車隊の第一陣、出立時間となりました!」
「あ、そうか、忘れてました!」
「忘れすぎだろお前!大丈夫か!」
「ここから遠方へも荷を運ぶ予定がありまして、複数の隊に分けて送り出すのです。ですので、荷馬車隊の整列を整えていたわけなんですねぇ。」
「んでそれをすっかり忘れてたんだろ、知っとるわぁ!」
「じゃ、じゃあ先に行っちゃう荷馬車から確認しないと…!」
「そういうことね、急ぐわよあんたたち!」
「「おう!」」
次から次へと…!なんだって面倒なことがこうも続くんだ!ウィルの絵が載った荷馬車が行っちまったら…!あれ、それはそれでいいのか?…ってそれじゃ遠いどこかが地獄になるだけだ!被害が広がっちまう!オレたちが無事ならそれでいいなんて…いや、それも捨てがたい…いやいやダメだ!そんなひどいことを…!
「第一陣、出ます!」
「何ですって!?ウィルさんまずいです、もしあの荷馬車に絵があったら…!」
「え!?荷馬車がもう!?」
「ち、気づかれたか!ユイ、アレックス、あいつらに回収されちゃまずい!」
「えぇ!」
「ぼ、僕たちで確保して、確実に処理しないと…!」
さらに苛烈になっていく地獄絵図争奪戦。ここで勝負を決める!
「待ちやがれお前ら!先に見つけるのはこっちだ…っては?」
バタバタと執務室の裏に回り込んだオレたちの目に飛び込んできたのは、所狭しと並べられた荷馬車と積み荷たちだった。何だこの量!?
「おいアルバート!なんだってんだよこの数は!?どんだけ領地から連れてきてんだよ!」
「えーと大体100…いえ150だったかな…。」
「しっかり把握しとけよ!」
「どっちにしろ多すぎる!」
「な、なにがなんだか、もう分からないよ…。」
「…王子、これを探すんです?」
「そうする他ありませんね。」
正確な数は分からないが、とにかく大量なこの荷物たちを地道に確認するしかないのか…。考えただけで気が遠くなるぜ。
「さー、ここで立っていても始まりません!ウィルさん、行きましょう!」
「は、はい!」
「何で王子が一番やる気に満ちてんだよ、意外と脳筋か?」
「皆さん皆さん、ご安心ください。あの絵を荷物の中に忍ばせたのは私なんです。どこの荷馬車に紛れ込ませたか教えますよ。」
「そ、そうよね!仕込んだ張本人がこっちの味方なんだもの、何の問題もないじゃない!」
「よ、よかった…!じゃあ、どこの荷馬車に入れたのか…。」
数の多さに気を取られちまったが、よく考えれば確かにそうだ。アルバートがこっち側にいる以上、オレたちが不利になることなんてないじゃねぇか!
早速目的の物の場所を教えてもらおうか!
「えぇもちろんです。確かこの隊列の…四番目…この荷馬車です!」
「よし、ウィルたちにバレる前に、さっさとやっちまうぞ。」
「「うん!」」
「…この箱、じゃねぇな。こっちの包みは…織物か?おい、どこに入れたんだ。」
「おかしい…あれ、確かこの荷馬車だったはず…。あ、そこの人、この間積み荷を一つ追加したはずなんですが。」
「へ?この荷馬車にですか?うーん…あぁ!つい先ほど、積み荷の行き先ごとに馬車の位置も整えたんですよ!出立の時にスムーズになるように。ですので、おそらく荷物を追加したのはこの荷馬車ではないかと。」
…なんだかいやーな空気になってきたな…。荷馬車隊が配置転換?この数全部か?とはいっても、ここを管轄しているアルバートがそれを知らないはずはない。…ないよな?
「…。」
「おい、アルバート?何してんだよ。荷馬車の場所が変わったんだったら早いところそっちに移動しねぇと。」
「そ、そうだよ…!このままだと、先にウィルたちが見つけちゃうかも…!」
「そうよ…!まぐれでも、絵を紛れ込ませた荷馬車を当てちゃうかもしれないわ!どこ!どこに移動させたの!?」
「…ません…。」
「「「え?」」」
「分かりません!配置の変更を予定していたの、すっかり忘れていました!!」
「「「アホかーーーー!!!」」」
響き渡る大絶叫。こんなところでお約束のようなことしなくていいんだよ!なんなんだよ忘れてたって!このままじゃ、先に探し始めてたウィルたちの方が有利…!まずいことになった…!
「ユイ、アレックス!こうなったらこっちも手当たり次第に探すしかねぇ!もうこいつに期待しても無駄だ!」
「そうね!一つでも多く荷馬車を確認しないと!」
「あの…本当に申し訳ないのですが、そこまではっきり言われますと…。私も探しますから…。」
「キビキビ確認して、全速力で。」
「アレックスさんまで…。」
これ以上時間を無駄にすることはできない。さっそく方々に散って荷馬車の中を確認する。積まれている荷物は大きさも種類も様々で、一つ一つ確認するとなると骨が折れるが、そうする他ない。こうしている間にも、ウィルたちは正解の荷馬車を引き当てちまっているかもしれねぇ!
「ここでもねぇ…!ここも!」
「ない…!ここにもない!」
「ど、どこに入れちゃったんだよ…アルバートさん…!」
「面目ないです…!」
「ウィルさんの絵…あれがなければ、この祭典の成功が!」
「そこまで言っていただけるなんて、ちょっと照れます…。」
探せど探せど、一向に地獄絵図は見つからねぇ…。だが、ウィルたちの方からも見つかったらしい反応がないところを見ると、向こうもまだ見つけられてはいないようだが…。
時間の問題だ、急がねぇと。
「失礼します、アルバート様。荷馬車隊の第一陣、出立時間となりました!」
「あ、そうか、忘れてました!」
「忘れすぎだろお前!大丈夫か!」
「ここから遠方へも荷を運ぶ予定がありまして、複数の隊に分けて送り出すのです。ですので、荷馬車隊の整列を整えていたわけなんですねぇ。」
「んでそれをすっかり忘れてたんだろ、知っとるわぁ!」
「じゃ、じゃあ先に行っちゃう荷馬車から確認しないと…!」
「そういうことね、急ぐわよあんたたち!」
「「おう!」」
次から次へと…!なんだって面倒なことがこうも続くんだ!ウィルの絵が載った荷馬車が行っちまったら…!あれ、それはそれでいいのか?…ってそれじゃ遠いどこかが地獄になるだけだ!被害が広がっちまう!オレたちが無事ならそれでいいなんて…いや、それも捨てがたい…いやいやダメだ!そんなひどいことを…!
「第一陣、出ます!」
「何ですって!?ウィルさんまずいです、もしあの荷馬車に絵があったら…!」
「え!?荷馬車がもう!?」
「ち、気づかれたか!ユイ、アレックス、あいつらに回収されちゃまずい!」
「えぇ!」
「ぼ、僕たちで確保して、確実に処理しないと…!」
さらに苛烈になっていく地獄絵図争奪戦。ここで勝負を決める!
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