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あなたは何タイプ?⑧
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城に到着はしたものの、オレたちは長い列に足止めを食らうことになってしまった。
「…これなんだよ。ちっとも進んでる感じがしねぇんだが。」
「結構な行列よね…。この先で何が行われてるのかしら?」
「も、もしかして、お祭りに参加する職人さんたちを、招集している、とか…?」
「…。おいウィル。お前何か聞いてねぇのか。」
「うーん…。確かに職人さんたちの候補を絞っているところだとは思うけど、こんな外でやることかなぁ?普通に城の中に招いて、作品を鑑賞したり話を聞いたりすると思うけど。」
「…確かに。」
こいつに普通を指摘されるのが本当に腹立たしいな。
「…と、いうことで、お前何を企んでんだよ。王子様よぉ?」
「真面目に視察に行こうと思えば、捕まるなんてついてないですねぇ。」
「真面目に、なんて嘘つくなよ。お付きの人間が見当たらねぇぞ?」
「…お付きがいると目立ってしまって、普段の市井の様子が分かりませんから!」
「よく回る口だぜ。」
「お褒めに預かり光栄です。」
コソコソと城の裏手から出てくる王子を確保。こいつ本当にいっつも抜け出してんだな、部下たちの苦労を考えると可哀そうになってくるぜ…。
「褒めてねぇ。…このお祭り騒ぎはお前の仕業なんだろ?何だってこんな…。」
「芸術は人を豊かにします。今こそ!国を挙げて国民たちの生活に潤いを!」
「私だったら、芸術祭よりも各国の食べ物の祭典の方が嬉しい。」
「僕も。」
「もちろんそちらの方にも手配済みです。」
「「本当!?」」
「お前らもう黙れ!…とにかくだ、オレたちはこの祭りとやらを開かせるわけにはいかねぇんだよ。」
「そう言われましても…。もうあちこち声をかけてしまっているので、開催を取りやめることなんてできませんよ。国外からも招いている方もいるんですから。」
「…その招かれているやつらがどんな奴らかは知らねぇが…、ウィルの絵だけは展示させるわけにはいかねぇんだ!」
「そろそろ俺泣いていい?」
「ウィル、可哀そうに。甘んじて受け入れてくれる?」
祭りの開催が阻止できないなら、せめてウィルの絵だけでも何とか…!そう思って王子に訴えるも、静かに首を横に振られてしまった。
「それはもっとあり得ません。今回の祭りの目玉は、ウィルさんの絵を鑑賞することなんですから!」
「ふざけてんのかてめぇは!」
「真剣ですよ!そのためにアルバートに見てもらっているのですから。」
「…アルバートは、今もウィルの絵を持ってんのか?」
「えぇ、展示の時まで保管してもらって…。」
「聞いたなお前ら!今すぐにアルバートから絵を奪って、何が何でも処理するんだ!!」
「「了解!」」
「あ、ちょっと!」
「処理って…。」
オレとユイとアレックスは一目散に駆け出す。目的地はアルバートの執務室。
「それで、何の騒ぎです?…いえ、予想はできますが。」
「だったら話は早え!ドアを開けられないように、なんか置くもの持ってきてくれ!!」
『ちょっと!何しようとしているんですか!開けてください、アルバート!!』
「兄様!?…本格的に阻止しようというのですね…。」
執務室に滑り込み、すんでのところでカイン王子とウィルが入らないようにドアを閉めることに成功する。ドアを叩きながら開けるように訴える声に負けないように、アルバートにバリケードを作るように指示を出す。相手が貴族であることをすっかり忘れていたが、アルバートは状況を理解したのかため息をつきながらも大きな石膏像を持ってくる。
さすがだ、同じ苦労をしてきただけのことはあるぜ。
「これで…よしっと!こんだけ置いたら簡単には入って来れないだろ。」
「い、今更だけど、こんなこと、王子様相手にして大丈夫なのかな…。」
「うーん…でも、今までもっと失礼なことしてきたんだから、いいんじゃない?どうでも。」
「…立場上、不敬だと叱責するべきなのでしょうが、まぁ相手が相手ですから…。それで、一応要件を伺いましょうか。」
「あぁ、もちろんウィルの絵を処分しに来た。隠さずにさっさと出してもらおうか。」
「やはりそうでしたか…。ですが、私としても思うところがなかったわけではないのです。こちらで、秘密裏に処理させていただこうかと、手を打っています。」
「何ですって!?」
「そ、そんなことして、大丈夫なの…!?」
「大丈夫、ではないかもしれません。しかし、これ以上芸術が蹂躙されていく様を見ているなんて耐えられません…!」
「アルバート…!しかし、秘密裏に処理って言ったって、どうしたんだ?」
アルバートの決死の行動を無駄にしないためにも、何か協力できないかと作戦を確認する。
「実は…私たちの領地から荷馬車がいくつか来ているのですが、その中に紛れ込ませて行方を眩ませてしまおうかと。」
「なるほど。」
「それはいい考えね。」
「では、その荷馬車はどこにあるのでしょうか?」
「この執務室の裏に、荷馬車隊を集めていますのでその中で…。」
「「「「ん?」」」」
「聞きましたね、ウィルさん!すぐに荷馬車を漁る…じゃなくて、荷を確認しなければ!」
「はい王子!危険なものが含まれていたら事ですからね!」
「お前ら、いつの間にー!?」
「はーはっは!ここは文字通り私の城ですから、抜け道の一つや二つ知っていて当然です!」
どこからか声が…と思ったら、執務室の机の下から王子とウィルが顔を出しているのが見えた。どっから顔出してんだお前ら!いや、そんなことより、今のオレたちの会話を聞かれたことが問題だ!このままじゃ先回りされて、ウィルの地獄絵図が回収されちまう。そんなことになったら…!
何が何でもオレたちが先に確保するんだ!
「…これなんだよ。ちっとも進んでる感じがしねぇんだが。」
「結構な行列よね…。この先で何が行われてるのかしら?」
「も、もしかして、お祭りに参加する職人さんたちを、招集している、とか…?」
「…。おいウィル。お前何か聞いてねぇのか。」
「うーん…。確かに職人さんたちの候補を絞っているところだとは思うけど、こんな外でやることかなぁ?普通に城の中に招いて、作品を鑑賞したり話を聞いたりすると思うけど。」
「…確かに。」
こいつに普通を指摘されるのが本当に腹立たしいな。
「…と、いうことで、お前何を企んでんだよ。王子様よぉ?」
「真面目に視察に行こうと思えば、捕まるなんてついてないですねぇ。」
「真面目に、なんて嘘つくなよ。お付きの人間が見当たらねぇぞ?」
「…お付きがいると目立ってしまって、普段の市井の様子が分かりませんから!」
「よく回る口だぜ。」
「お褒めに預かり光栄です。」
コソコソと城の裏手から出てくる王子を確保。こいつ本当にいっつも抜け出してんだな、部下たちの苦労を考えると可哀そうになってくるぜ…。
「褒めてねぇ。…このお祭り騒ぎはお前の仕業なんだろ?何だってこんな…。」
「芸術は人を豊かにします。今こそ!国を挙げて国民たちの生活に潤いを!」
「私だったら、芸術祭よりも各国の食べ物の祭典の方が嬉しい。」
「僕も。」
「もちろんそちらの方にも手配済みです。」
「「本当!?」」
「お前らもう黙れ!…とにかくだ、オレたちはこの祭りとやらを開かせるわけにはいかねぇんだよ。」
「そう言われましても…。もうあちこち声をかけてしまっているので、開催を取りやめることなんてできませんよ。国外からも招いている方もいるんですから。」
「…その招かれているやつらがどんな奴らかは知らねぇが…、ウィルの絵だけは展示させるわけにはいかねぇんだ!」
「そろそろ俺泣いていい?」
「ウィル、可哀そうに。甘んじて受け入れてくれる?」
祭りの開催が阻止できないなら、せめてウィルの絵だけでも何とか…!そう思って王子に訴えるも、静かに首を横に振られてしまった。
「それはもっとあり得ません。今回の祭りの目玉は、ウィルさんの絵を鑑賞することなんですから!」
「ふざけてんのかてめぇは!」
「真剣ですよ!そのためにアルバートに見てもらっているのですから。」
「…アルバートは、今もウィルの絵を持ってんのか?」
「えぇ、展示の時まで保管してもらって…。」
「聞いたなお前ら!今すぐにアルバートから絵を奪って、何が何でも処理するんだ!!」
「「了解!」」
「あ、ちょっと!」
「処理って…。」
オレとユイとアレックスは一目散に駆け出す。目的地はアルバートの執務室。
「それで、何の騒ぎです?…いえ、予想はできますが。」
「だったら話は早え!ドアを開けられないように、なんか置くもの持ってきてくれ!!」
『ちょっと!何しようとしているんですか!開けてください、アルバート!!』
「兄様!?…本格的に阻止しようというのですね…。」
執務室に滑り込み、すんでのところでカイン王子とウィルが入らないようにドアを閉めることに成功する。ドアを叩きながら開けるように訴える声に負けないように、アルバートにバリケードを作るように指示を出す。相手が貴族であることをすっかり忘れていたが、アルバートは状況を理解したのかため息をつきながらも大きな石膏像を持ってくる。
さすがだ、同じ苦労をしてきただけのことはあるぜ。
「これで…よしっと!こんだけ置いたら簡単には入って来れないだろ。」
「い、今更だけど、こんなこと、王子様相手にして大丈夫なのかな…。」
「うーん…でも、今までもっと失礼なことしてきたんだから、いいんじゃない?どうでも。」
「…立場上、不敬だと叱責するべきなのでしょうが、まぁ相手が相手ですから…。それで、一応要件を伺いましょうか。」
「あぁ、もちろんウィルの絵を処分しに来た。隠さずにさっさと出してもらおうか。」
「やはりそうでしたか…。ですが、私としても思うところがなかったわけではないのです。こちらで、秘密裏に処理させていただこうかと、手を打っています。」
「何ですって!?」
「そ、そんなことして、大丈夫なの…!?」
「大丈夫、ではないかもしれません。しかし、これ以上芸術が蹂躙されていく様を見ているなんて耐えられません…!」
「アルバート…!しかし、秘密裏に処理って言ったって、どうしたんだ?」
アルバートの決死の行動を無駄にしないためにも、何か協力できないかと作戦を確認する。
「実は…私たちの領地から荷馬車がいくつか来ているのですが、その中に紛れ込ませて行方を眩ませてしまおうかと。」
「なるほど。」
「それはいい考えね。」
「では、その荷馬車はどこにあるのでしょうか?」
「この執務室の裏に、荷馬車隊を集めていますのでその中で…。」
「「「「ん?」」」」
「聞きましたね、ウィルさん!すぐに荷馬車を漁る…じゃなくて、荷を確認しなければ!」
「はい王子!危険なものが含まれていたら事ですからね!」
「お前ら、いつの間にー!?」
「はーはっは!ここは文字通り私の城ですから、抜け道の一つや二つ知っていて当然です!」
どこからか声が…と思ったら、執務室の机の下から王子とウィルが顔を出しているのが見えた。どっから顔出してんだお前ら!いや、そんなことより、今のオレたちの会話を聞かれたことが問題だ!このままじゃ先回りされて、ウィルの地獄絵図が回収されちまう。そんなことになったら…!
何が何でもオレたちが先に確保するんだ!
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