某勇 ~一方その頃、編~

ふくまめ

文字の大きさ
上 下
81 / 84

あなたは何タイプ?⑦

しおりを挟む
結局その夜は、テーブルに突っ伏して駄々をこねだしたアルバートをなだめてお開きとなった。お前もう酒飲まない方がいいよ…。

「…そういえば。」
「ん?」
「最近兄様は何やら大々的に催し物をするとかで、各地の芸術家や職人たちに声をかけているんです。」
「あぁ、確かそんなこと言ってたな。この間のハナビを作ったオヤカタにも声をかけてるとか。」
「そういえば、そんなこと言ってたわね。」
「どうやら各地の工芸品や芸術作品を街中に飾るんだとかで。」
「ほーそりゃまた、豪勢なことで。」
「今回の件で、ウィルさんにも協力いただく方向で動き出さないといいんですがねぇ。」
「「「…。」」」

帰り際、いつから待機していたのか従者らしき人間が数人やってきて、アルバートを回収していった。その時にこのやり取りが行われ、一瞬にしてオレたちを氷づかせた。『考えすぎですよねぇ』なんて酔っ払い特有の危機感のないヘラヘラした笑みを若干浮かべながら帰っていく後ろ姿に、オレは殺意を覚えたね、確実に。
そこそこ実現しそうなこと言い逃げしていくんじゃねぇ!!



「みんな、聞いてよ!俺今度行われる予定の芸術祭に、王子直々に参加依頼受けちゃったんだ!!」
「「「ああぁぁぁ~~~!!」」」
「え、何?何かダメだった!?」
「何かっていうか、全部。」
「何もかも全部だバカ!!」
「も、もうおしまいだ…!」
「えぇ?」

翌日、ギルドを開ける準備をしていたオレたちに、颯爽と爆弾を投下してきやがったウィル。三人とも頭を抱えて思い思いの絶望を味わっていた。ついこの間までこの恐怖を知らなかったユイも、今回ばかりは事の重大さに気がついたようだ。気がついてしまった。
ようこそ、こちらの世界へ。

「みんなそんなに…俺のどこがダメなんだよ…。」
「だから全部だっつの!あぁ~どうにかして阻止しねぇと…。」
「王子に直接訴えてみる?」
「す、少なくとも、あの時の感動具合からして、何かしらウィルを参加させようとするんじゃないかな…。」
「そもそも、あの王子が指揮とってんだろ?この芸術祭自体が怪しいもんだぜ。」
「「確かに。」」
「みんなひどいや。」
「じゃあ…どうすればいいの?このままにしておくわけにも…。」
「…よし、ウィル。お前これから大怪我して、祭りに参加できませんって言ってこい。」
「どこまで俺を参加させたくないの!ってか大怪我してる本人に不参加を伝えさせるのあんまりじゃない!?」

ウィルはひどいと拗ねているが、オレたちにとってそんな奴の態度は些細な問題だ。正直オレはいたって真剣にどうにかして参加を取り下げさせられないかと頭を悩ませている。あの浮ついた王子を説得させるのは難易度が高そうだし、ウィル自身に断れって言うのも拒否するだろうし…。
やっぱり事故に見せかけて怪我を…。

「で、でも、いくら何でも王子一人で企画しているわけじゃ、ないよね…?」
「そう、だとは思うけど…。」
「…だとしても、誰が一緒に企画運営しているなんて、オレたちに分かるはずないだろ。」
「あ、アルバートさんが作品の品評会をする予定だって言ってたよ。」
「「「…。」」」

あの野郎!昨日の話はほとんど事実だったんじゃねぇか!!

「…はぁ、もう…。」
「え?えぇ?俺、何か言っちゃまずいことだった…?」
「いや、もうお前はどうだっていい。こうなったらアルバートに直談判だ。」
「う、上手くいくかな…。」
「ここで上手くやれなきゃ、この街が地獄になるだけだ。オレたちにかかってる。」
「「…。」」
「…え、何の話なの、これ。」

よく状況を理解していないらしいウィルを尻目に、オレたち三人は早速城へと向かう。…いや、ウィルにはどうやったって理解できるはずもないか。地獄と化す原因の張本人だしな、無自覚だし。とにかく、このふざけた祭りとやらに一枚噛んでいるらしいアルバートに、どうにかしてもらう他ないだろう。
この街の運命は、オレたちの踏ん張りにかかっている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

男性向け(女声)シチュエーションボイス台本

しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。 関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください ご自由にお使いください。 イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました

処理中です...