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あなたは何タイプ?⑦
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結局その夜は、テーブルに突っ伏して駄々をこねだしたアルバートをなだめてお開きとなった。お前もう酒飲まない方がいいよ…。
「…そういえば。」
「ん?」
「最近兄様は何やら大々的に催し物をするとかで、各地の芸術家や職人たちに声をかけているんです。」
「あぁ、確かそんなこと言ってたな。この間のハナビを作ったオヤカタにも声をかけてるとか。」
「そういえば、そんなこと言ってたわね。」
「どうやら各地の工芸品や芸術作品を街中に飾るんだとかで。」
「ほーそりゃまた、豪勢なことで。」
「今回の件で、ウィルさんにも協力いただく方向で動き出さないといいんですがねぇ。」
「「「…。」」」
帰り際、いつから待機していたのか従者らしき人間が数人やってきて、アルバートを回収していった。その時にこのやり取りが行われ、一瞬にしてオレたちを氷づかせた。『考えすぎですよねぇ』なんて酔っ払い特有の危機感のないヘラヘラした笑みを若干浮かべながら帰っていく後ろ姿に、オレは殺意を覚えたね、確実に。
そこそこ実現しそうなこと言い逃げしていくんじゃねぇ!!
「みんな、聞いてよ!俺今度行われる予定の芸術祭に、王子直々に参加依頼受けちゃったんだ!!」
「「「ああぁぁぁ~~~!!」」」
「え、何?何かダメだった!?」
「何かっていうか、全部。」
「何もかも全部だバカ!!」
「も、もうおしまいだ…!」
「えぇ?」
翌日、ギルドを開ける準備をしていたオレたちに、颯爽と爆弾を投下してきやがったウィル。三人とも頭を抱えて思い思いの絶望を味わっていた。ついこの間までこの恐怖を知らなかったユイも、今回ばかりは事の重大さに気がついたようだ。気がついてしまった。
ようこそ、こちらの世界へ。
「みんなそんなに…俺のどこがダメなんだよ…。」
「だから全部だっつの!あぁ~どうにかして阻止しねぇと…。」
「王子に直接訴えてみる?」
「す、少なくとも、あの時の感動具合からして、何かしらウィルを参加させようとするんじゃないかな…。」
「そもそも、あの王子が指揮とってんだろ?この芸術祭自体が怪しいもんだぜ。」
「「確かに。」」
「みんなひどいや。」
「じゃあ…どうすればいいの?このままにしておくわけにも…。」
「…よし、ウィル。お前これから大怪我して、祭りに参加できませんって言ってこい。」
「どこまで俺を参加させたくないの!ってか大怪我してる本人に不参加を伝えさせるのあんまりじゃない!?」
ウィルはひどいと拗ねているが、オレたちにとってそんな奴の態度は些細な問題だ。正直オレはいたって真剣にどうにかして参加を取り下げさせられないかと頭を悩ませている。あの浮ついた王子を説得させるのは難易度が高そうだし、ウィル自身に断れって言うのも拒否するだろうし…。
やっぱり事故に見せかけて怪我を…。
「で、でも、いくら何でも王子一人で企画しているわけじゃ、ないよね…?」
「そう、だとは思うけど…。」
「…だとしても、誰が一緒に企画運営しているなんて、オレたちに分かるはずないだろ。」
「あ、アルバートさんが作品の品評会をする予定だって言ってたよ。」
「「「…。」」」
あの野郎!昨日の話はほとんど事実だったんじゃねぇか!!
「…はぁ、もう…。」
「え?えぇ?俺、何か言っちゃまずいことだった…?」
「いや、もうお前はどうだっていい。こうなったらアルバートに直談判だ。」
「う、上手くいくかな…。」
「ここで上手くやれなきゃ、この街が地獄になるだけだ。オレたちにかかってる。」
「「…。」」
「…え、何の話なの、これ。」
よく状況を理解していないらしいウィルを尻目に、オレたち三人は早速城へと向かう。…いや、ウィルにはどうやったって理解できるはずもないか。地獄と化す原因の張本人だしな、無自覚だし。とにかく、このふざけた祭りとやらに一枚噛んでいるらしいアルバートに、どうにかしてもらう他ないだろう。
この街の運命は、オレたちの踏ん張りにかかっている。
「…そういえば。」
「ん?」
「最近兄様は何やら大々的に催し物をするとかで、各地の芸術家や職人たちに声をかけているんです。」
「あぁ、確かそんなこと言ってたな。この間のハナビを作ったオヤカタにも声をかけてるとか。」
「そういえば、そんなこと言ってたわね。」
「どうやら各地の工芸品や芸術作品を街中に飾るんだとかで。」
「ほーそりゃまた、豪勢なことで。」
「今回の件で、ウィルさんにも協力いただく方向で動き出さないといいんですがねぇ。」
「「「…。」」」
帰り際、いつから待機していたのか従者らしき人間が数人やってきて、アルバートを回収していった。その時にこのやり取りが行われ、一瞬にしてオレたちを氷づかせた。『考えすぎですよねぇ』なんて酔っ払い特有の危機感のないヘラヘラした笑みを若干浮かべながら帰っていく後ろ姿に、オレは殺意を覚えたね、確実に。
そこそこ実現しそうなこと言い逃げしていくんじゃねぇ!!
「みんな、聞いてよ!俺今度行われる予定の芸術祭に、王子直々に参加依頼受けちゃったんだ!!」
「「「ああぁぁぁ~~~!!」」」
「え、何?何かダメだった!?」
「何かっていうか、全部。」
「何もかも全部だバカ!!」
「も、もうおしまいだ…!」
「えぇ?」
翌日、ギルドを開ける準備をしていたオレたちに、颯爽と爆弾を投下してきやがったウィル。三人とも頭を抱えて思い思いの絶望を味わっていた。ついこの間までこの恐怖を知らなかったユイも、今回ばかりは事の重大さに気がついたようだ。気がついてしまった。
ようこそ、こちらの世界へ。
「みんなそんなに…俺のどこがダメなんだよ…。」
「だから全部だっつの!あぁ~どうにかして阻止しねぇと…。」
「王子に直接訴えてみる?」
「す、少なくとも、あの時の感動具合からして、何かしらウィルを参加させようとするんじゃないかな…。」
「そもそも、あの王子が指揮とってんだろ?この芸術祭自体が怪しいもんだぜ。」
「「確かに。」」
「みんなひどいや。」
「じゃあ…どうすればいいの?このままにしておくわけにも…。」
「…よし、ウィル。お前これから大怪我して、祭りに参加できませんって言ってこい。」
「どこまで俺を参加させたくないの!ってか大怪我してる本人に不参加を伝えさせるのあんまりじゃない!?」
ウィルはひどいと拗ねているが、オレたちにとってそんな奴の態度は些細な問題だ。正直オレはいたって真剣にどうにかして参加を取り下げさせられないかと頭を悩ませている。あの浮ついた王子を説得させるのは難易度が高そうだし、ウィル自身に断れって言うのも拒否するだろうし…。
やっぱり事故に見せかけて怪我を…。
「で、でも、いくら何でも王子一人で企画しているわけじゃ、ないよね…?」
「そう、だとは思うけど…。」
「…だとしても、誰が一緒に企画運営しているなんて、オレたちに分かるはずないだろ。」
「あ、アルバートさんが作品の品評会をする予定だって言ってたよ。」
「「「…。」」」
あの野郎!昨日の話はほとんど事実だったんじゃねぇか!!
「…はぁ、もう…。」
「え?えぇ?俺、何か言っちゃまずいことだった…?」
「いや、もうお前はどうだっていい。こうなったらアルバートに直談判だ。」
「う、上手くいくかな…。」
「ここで上手くやれなきゃ、この街が地獄になるだけだ。オレたちにかかってる。」
「「…。」」
「…え、何の話なの、これ。」
よく状況を理解していないらしいウィルを尻目に、オレたち三人は早速城へと向かう。…いや、ウィルにはどうやったって理解できるはずもないか。地獄と化す原因の張本人だしな、無自覚だし。とにかく、このふざけた祭りとやらに一枚噛んでいるらしいアルバートに、どうにかしてもらう他ないだろう。
この街の運命は、オレたちの踏ん張りにかかっている。
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