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魔法の言葉②
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「あー…んじゃ、『諸説あり』はどうだ?」
「それ魔法じゃなくて便利な言葉でしょ!」
「何だよ。何か面倒な説明するとき、これを言えば大体は解決する魔法の言葉だぞ。」
「それって経験則?」
「主にルゥの相手をすんのが面倒な時に言ってた。」
「レ、レイはそればっかだね…。」
「方向性が違う!なんかこう、その言葉を聞いたら元気が出ると頑張れるとか、そういうやつよ。」
「それじゃ…『大丈夫』とか?」
「『頑張ったね』とかは?」
「弱いわね!もっとガツンと来ないと!」
「何だよ、お前の判断基準。弱いとかガツンとか、何?」
なかなかユイさんのハードルが上がってきてしまっているようだ。自分の子供の頃を思い出しても、あまり心当たりはないのだが…。世の中にありふれた無難な魔法の言葉なら思いつくかもしれないが。
「えー…。『ちちんぷいぷい』?」
「『アブラカタブラ』?」
「『開けゴマ』」
「ガチの魔法の言葉じゃない。あとレイ!アンタの何よ、ゴマを開いてどうすんの?」
「いいだろ。これ唱えれば目の前の障害物が消えて、金銀財宝が手に入るらしいぜ。よく知らねぇけど。」
「そ、そんなのあるの…?」
「だったらよし!」
「え、いいの!?」
急に親指を突き上げたユイさんはご満悦だ。俺からすると魔法の呪文の範疇からはみ出していないか微妙なところだと思うけど…。まぁいいか。そもそも俺が思っていた魔法の言葉っていうのからはとっくにほっぽり出しての大喜利大会だし。
「それはそうと。ユイ、お前はどうなんだよ。さっきから聞いてばっかで、お前からは何も出さねぇじゃねぇか。」
「え、私?」
「ここまで言うんだ。何かあるんだろ、お前が思う魔法の言葉。」
「そ、そうね、うーん…。」
逆に聞かれるとは思っていなかったのか、レイに話を振られたユイさんは渋い顔をして考え込んでしまった。その様子を見てレイはニヤニヤと悪い顔をしている。そういうことするからユイさんにいじられるんだよ。羨ましい。後でどうなっても知らないからな。
「おーおー、何だぁ?オレたちに散々言っておいて、一つも浮かばないのかよ。」
「うるさい、今考えてるの。」
「そ、そもそも考えるものかなぁ…。」
「完全にお題に答える会になってたもんな。」
「親御さんが子供にどう言って聞かせるかって、かなり差があるだろうし…。その家族ごとの考え方の違いで、リアリストなんだったら思いつくのも大変そう。」
「あ、あとは、何か絵本とかに触れてたとか…?」
「こいつ絵本読むような柄かぁ?」
「あ!」
これは出ないんだろうなー、と雑談を始めた俺たちの横でユイさんはポンと手を叩いて声を上げた。何か思いついたようだ。
「あったあった!この言葉を聞いたら私は元気が出るわ、間違いない!というか、これで元気ややる気が出ない人なんていないはずだわ!」
「随分自信満々じゃねぇか。聞かせてもらおうか。」
「『言い値で買います』よ!」
「「「え?」」」
「『言い値で買います』」
「お前が一番現実主義じゃねぇか。」
きっと俺たちは大人になってしまったから魔法の言葉が効かなくなってしまったんだ。きっとそう。
多分、子供の間だけ魔法が使えるんだ。うん、そうだ。
きっと世の中の子供たちは魔法使いで、大人になると魔法が使えなくなってしまうんだ。
諸説あり。
「それ魔法じゃなくて便利な言葉でしょ!」
「何だよ。何か面倒な説明するとき、これを言えば大体は解決する魔法の言葉だぞ。」
「それって経験則?」
「主にルゥの相手をすんのが面倒な時に言ってた。」
「レ、レイはそればっかだね…。」
「方向性が違う!なんかこう、その言葉を聞いたら元気が出ると頑張れるとか、そういうやつよ。」
「それじゃ…『大丈夫』とか?」
「『頑張ったね』とかは?」
「弱いわね!もっとガツンと来ないと!」
「何だよ、お前の判断基準。弱いとかガツンとか、何?」
なかなかユイさんのハードルが上がってきてしまっているようだ。自分の子供の頃を思い出しても、あまり心当たりはないのだが…。世の中にありふれた無難な魔法の言葉なら思いつくかもしれないが。
「えー…。『ちちんぷいぷい』?」
「『アブラカタブラ』?」
「『開けゴマ』」
「ガチの魔法の言葉じゃない。あとレイ!アンタの何よ、ゴマを開いてどうすんの?」
「いいだろ。これ唱えれば目の前の障害物が消えて、金銀財宝が手に入るらしいぜ。よく知らねぇけど。」
「そ、そんなのあるの…?」
「だったらよし!」
「え、いいの!?」
急に親指を突き上げたユイさんはご満悦だ。俺からすると魔法の呪文の範疇からはみ出していないか微妙なところだと思うけど…。まぁいいか。そもそも俺が思っていた魔法の言葉っていうのからはとっくにほっぽり出しての大喜利大会だし。
「それはそうと。ユイ、お前はどうなんだよ。さっきから聞いてばっかで、お前からは何も出さねぇじゃねぇか。」
「え、私?」
「ここまで言うんだ。何かあるんだろ、お前が思う魔法の言葉。」
「そ、そうね、うーん…。」
逆に聞かれるとは思っていなかったのか、レイに話を振られたユイさんは渋い顔をして考え込んでしまった。その様子を見てレイはニヤニヤと悪い顔をしている。そういうことするからユイさんにいじられるんだよ。羨ましい。後でどうなっても知らないからな。
「おーおー、何だぁ?オレたちに散々言っておいて、一つも浮かばないのかよ。」
「うるさい、今考えてるの。」
「そ、そもそも考えるものかなぁ…。」
「完全にお題に答える会になってたもんな。」
「親御さんが子供にどう言って聞かせるかって、かなり差があるだろうし…。その家族ごとの考え方の違いで、リアリストなんだったら思いつくのも大変そう。」
「あ、あとは、何か絵本とかに触れてたとか…?」
「こいつ絵本読むような柄かぁ?」
「あ!」
これは出ないんだろうなー、と雑談を始めた俺たちの横でユイさんはポンと手を叩いて声を上げた。何か思いついたようだ。
「あったあった!この言葉を聞いたら私は元気が出るわ、間違いない!というか、これで元気ややる気が出ない人なんていないはずだわ!」
「随分自信満々じゃねぇか。聞かせてもらおうか。」
「『言い値で買います』よ!」
「「「え?」」」
「『言い値で買います』」
「お前が一番現実主義じゃねぇか。」
きっと俺たちは大人になってしまったから魔法の言葉が効かなくなってしまったんだ。きっとそう。
多分、子供の間だけ魔法が使えるんだ。うん、そうだ。
きっと世の中の子供たちは魔法使いで、大人になると魔法が使えなくなってしまうんだ。
諸説あり。
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