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じゃじゃ馬娘の嫁入り⑤
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ギルド冒険者の応接室にて。
「…なるほどねぇ、新規事業。なかなか面白いこと考えてるのね、エナちゃん。」
「えへへ、ユイお姉ちゃんも最近また忙しそうだね。何かまた新しいことするの?」
「うーんそれはまだ秘密ー。」
「えー?」
ギルドの代表であるユイとウィルに、エナの考えた馬の貸し出し事業について一通り説明する。どうやらユイはエナともともと知り合いだったようで、突然ギルドに来たことには驚いていたようだがすでに世間話に花を咲かせている。オレとウィルは完全に蚊帳の外だ。
「…おい、そろそろいいか?オレは世間話をしに連れてきたわけじゃなくてだな…。」
「あぁ、はいはい!そうだったわね。それで?実際のところどうなのよ、ウィル。」
そう、オレが思う土地の所有者。それは同郷のウィルだった。
「どう、と言われても…。確かに、俺の家はもう誰も住んでいないし、もともと作ってた畑なんかもある程度片付けて来たけど…。だからって、土地としてどうなっているかは分からないよ。手入れしていないだろうから荒れ放題だろうし。」
「そうよねぇ…。建物に関しては、住んでいる人がいない方が痛むのが早いって聞くし。土地に関しては整備が必要しても、建物が使えるならその方が儲けものよね。」
「あ、あの…。話を聞いてもらっておいて、あれなんですけど、いいんですか?実家の土地を使わせていただく方向で話が進んでいるんですけど…。」
「え?あぁ、それなら問題ないよ。さっきも言ったけどもう誰も使っていないんだ。俺も戻るつもりはないし。誰かがうまく使ってくれるっていうならその方がいいよ。」
「あ、ありがとうございます!」
「ただ、問題は実際に使えるものかどうかよね。…ウィルたちの村って、よそから来る人に冷たい、なんてことないわよね…?」
「んなこたないが…。まぁ今村にいないオレたちが勝手に話を進めるのもどうかと思うからな。そっちに関しても手は打ってある。ちょっと時間はかかるがな。」
「…何よレイ。随分と対応早いじゃない。そもそもあんた今日用事があるって早くに上がったんじゃなかったの?」
「…たまたまだ。」
「ふーん、まぁいいけど。じゃとりあえず、土地の所有者のウィルの了承は得たってことで今回はここまでかしらね。あとはレイが打ったっていう手がどうなるか、ね。」
「そうだね。それじゃエナさん、結果がどうなるか分からないけど、これからよろしくお願いします。」
「は、はい!こちらこそ!」
ウィルの両親はすでに亡くなっていて、他に親族もいない。オレたちが村を出る前に、ウィルは実家の畑なんかも片づけてしまっていた。村から離れてしまっているオレにはどの程度土地が使える状態にあるのか分かりようがないが、今日出した手紙でウィルの家が今どうなっているかを確認するようにも頼んでおいた。詳細が分かるまで少し時間がかかってしまうだろうが、今はそれを待つしかない。
数日後、オレは再び商人街へと来ていた。手紙の返事がそろそろ来ていないかと、確認しに来たのだ。
「邪魔するぞ、おっちゃん。手紙、来てるか?」
「おぉ、兄ちゃんか。もう少しでお前さんの村からの荷駄が到着する頃だ。ちょっと待ってな。」
「そうかい。そんじゃそうさせてもらうぜ。」
「…なぁ、何でこの間のエナ嬢ちゃんの話、あんなに親身になって聞いてくれたんだ?」
「あぁ?別にいいだろ。オレだって人からの依頼を聞いて回る身だ、親切で聞いてやることだってあるさ。」
「…お前さんまさか、エナ嬢ちゃんに気があるんじゃねぇだろうな!?」
「はあぁ!?何でそうなるんだよ!」
「エナ嬢ちゃんは確かに可愛い!頑張り屋だし親父さんの仕事を手伝おうと向上心もあって優しさにあふれている!まだまだ若いが魅力的なことに変わりなはい。いや!むしろそういった年頃の方が好みだって輩だっていると聞く!なんてこった、俺ともあろうもんがそんな奴をエナ嬢ちゃんに近づけちまうなんて…!」
「いい加減にしろよおっちゃんよぉ…!オレはそんな目で見てねぇし、変態なんかと一緒にすんな!そんな風に思いつくそっちの方がよっぽど怪しいぜ!」
「うぐぅ!?」
顔見知りとはいえ、客を変質者扱いしやがるとは…。むしろそんなことを次々と思いつくこのおっちゃんの方を警戒した方が賢明だぜ。…オレはただ、親や家のために頑張ろうとしているやつを応援してやろうって…。ただそれだけだ。
「…なるほどねぇ、新規事業。なかなか面白いこと考えてるのね、エナちゃん。」
「えへへ、ユイお姉ちゃんも最近また忙しそうだね。何かまた新しいことするの?」
「うーんそれはまだ秘密ー。」
「えー?」
ギルドの代表であるユイとウィルに、エナの考えた馬の貸し出し事業について一通り説明する。どうやらユイはエナともともと知り合いだったようで、突然ギルドに来たことには驚いていたようだがすでに世間話に花を咲かせている。オレとウィルは完全に蚊帳の外だ。
「…おい、そろそろいいか?オレは世間話をしに連れてきたわけじゃなくてだな…。」
「あぁ、はいはい!そうだったわね。それで?実際のところどうなのよ、ウィル。」
そう、オレが思う土地の所有者。それは同郷のウィルだった。
「どう、と言われても…。確かに、俺の家はもう誰も住んでいないし、もともと作ってた畑なんかもある程度片付けて来たけど…。だからって、土地としてどうなっているかは分からないよ。手入れしていないだろうから荒れ放題だろうし。」
「そうよねぇ…。建物に関しては、住んでいる人がいない方が痛むのが早いって聞くし。土地に関しては整備が必要しても、建物が使えるならその方が儲けものよね。」
「あ、あの…。話を聞いてもらっておいて、あれなんですけど、いいんですか?実家の土地を使わせていただく方向で話が進んでいるんですけど…。」
「え?あぁ、それなら問題ないよ。さっきも言ったけどもう誰も使っていないんだ。俺も戻るつもりはないし。誰かがうまく使ってくれるっていうならその方がいいよ。」
「あ、ありがとうございます!」
「ただ、問題は実際に使えるものかどうかよね。…ウィルたちの村って、よそから来る人に冷たい、なんてことないわよね…?」
「んなこたないが…。まぁ今村にいないオレたちが勝手に話を進めるのもどうかと思うからな。そっちに関しても手は打ってある。ちょっと時間はかかるがな。」
「…何よレイ。随分と対応早いじゃない。そもそもあんた今日用事があるって早くに上がったんじゃなかったの?」
「…たまたまだ。」
「ふーん、まぁいいけど。じゃとりあえず、土地の所有者のウィルの了承は得たってことで今回はここまでかしらね。あとはレイが打ったっていう手がどうなるか、ね。」
「そうだね。それじゃエナさん、結果がどうなるか分からないけど、これからよろしくお願いします。」
「は、はい!こちらこそ!」
ウィルの両親はすでに亡くなっていて、他に親族もいない。オレたちが村を出る前に、ウィルは実家の畑なんかも片づけてしまっていた。村から離れてしまっているオレにはどの程度土地が使える状態にあるのか分かりようがないが、今日出した手紙でウィルの家が今どうなっているかを確認するようにも頼んでおいた。詳細が分かるまで少し時間がかかってしまうだろうが、今はそれを待つしかない。
数日後、オレは再び商人街へと来ていた。手紙の返事がそろそろ来ていないかと、確認しに来たのだ。
「邪魔するぞ、おっちゃん。手紙、来てるか?」
「おぉ、兄ちゃんか。もう少しでお前さんの村からの荷駄が到着する頃だ。ちょっと待ってな。」
「そうかい。そんじゃそうさせてもらうぜ。」
「…なぁ、何でこの間のエナ嬢ちゃんの話、あんなに親身になって聞いてくれたんだ?」
「あぁ?別にいいだろ。オレだって人からの依頼を聞いて回る身だ、親切で聞いてやることだってあるさ。」
「…お前さんまさか、エナ嬢ちゃんに気があるんじゃねぇだろうな!?」
「はあぁ!?何でそうなるんだよ!」
「エナ嬢ちゃんは確かに可愛い!頑張り屋だし親父さんの仕事を手伝おうと向上心もあって優しさにあふれている!まだまだ若いが魅力的なことに変わりなはい。いや!むしろそういった年頃の方が好みだって輩だっていると聞く!なんてこった、俺ともあろうもんがそんな奴をエナ嬢ちゃんに近づけちまうなんて…!」
「いい加減にしろよおっちゃんよぉ…!オレはそんな目で見てねぇし、変態なんかと一緒にすんな!そんな風に思いつくそっちの方がよっぽど怪しいぜ!」
「うぐぅ!?」
顔見知りとはいえ、客を変質者扱いしやがるとは…。むしろそんなことを次々と思いつくこのおっちゃんの方を警戒した方が賢明だぜ。…オレはただ、親や家のために頑張ろうとしているやつを応援してやろうって…。ただそれだけだ。
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