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ある悪ガキの話~キョウダイ⑧~
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「…ま、そんな感じで、一番悪ガキだったのは勝手に村から出て行った兄貴の方だって話でしたとさ。」
「妹さんだったんですねぇ。弟さんかと思ってました。」
「気になるとこそこ?」
「それでお兄さんは無事にこの町まで来ることができたと。」
「…別にオレの話とは言ってないでしょう。」
「私も別にあなただとは言っていませんが。」
「…。」
やっぱりこいつは気に入らない。ニコニコ笑いながら人の揚げ足取りやがって。話も終わったことだし、早いところ依頼人が来てほしいところなんだが。あの若い門番はまだか?
「兄妹ですかー。実は私も双子ではないんですが、弟がいましてね。」
「…はぁ。」
今度はこいつの話を聞かなきゃなんねぇのか。まぁ自分が話し続けるよりかはいいか。適当に相槌打って、依頼人が早く来てくれることを願うしかないな…。
「弟は私よりも、何と言うか、無邪気というか天真爛漫というか。悪く言えば考えが足りないと言いますか。」
「今悪く言う必要ありました?」
「多少状況をかき回すこともありますが、周りからは好かれるような人物、ということですね。私自身、自分とは違う人間性を持っていると感じています。」
「…まぁ兄弟とは言え、違う人間ですから。」
「そうですねぇ。ですが、周りの人間はよく比べたがるものです。あなたにも覚えがあるのでは?」
確かに、レイはああなのに、ルーナはこうなのにと比べられるような言い方は散々されてきたな。大抵はルーナへの苦言として言われることが多かったが、オレたちが昔から煩わしいと思っていた会話ランキングでダントツだ。いや世の中の兄弟姉妹がいる人間がつけるランキング100年連続1位。もしくは「お兄さんなんだから」「お姉さんなんだから」と1位争いしているに違いない。
オレたちに関しちゃ双子なんだから、兄だろうが妹だろうが大して変わりがないっての。…子供の頃は、親に言われるままだからあまり疑問には思わないだろうが。
「まぁとにかく、自分にはない個性を持っている人間は、自分よりも優れているように思えてくるわけです。あなたが妹さんに村長の座を譲ったように。」
「だから、さっきの話はオレの話ってわけじゃ…。」
「そうでしたね。私も親から後継者として幼少の頃から指導されていましてね…。これがまた憂鬱なわけです。自分がやりたいことは、必ずしもそれではないということが分かっていない。いや、分かっていてもそんなことは関係ないと思っているのかもしれませんが。」
「…そう、かもしれませんね。」
親にどれだけ嫌だと訴えても、窘められる程度で代わりにルゥを連れていく、何てことはなかったな。あの時はルゥも嫌がっているのかと思っていたが、そういうわけでもなかったんだよな。ほんと、早いうちにあいつの気持ちや考えに気づいてやれていたら、せめて親父との仕事に一緒に来るように仕向けられたのかもしれない。
「ですが私は諦めません。」
「は?」
「私はいずれ、弟に継承権を譲るつもりでいるのです。最悪私が一旦継承して即後継者として指名して隠居するとか、そんなことも考えていましたが…。
そんな回りくどいことをしないでも、早々に皆には私が継承することを諦めてもらおうかと!今模索中ではあるのですが、その一端として今回の件を提案させていただきました。」
「そうですか…。ん?今回の件?」
「えぇ、今回あなた方何でも屋に相談させていただいた件に関してですが。…あなたはその件で来てくださったのでは?」
「え、は、そうですが…。提案させていただいたって。」
「はい、先日相談に伺ったのは私です。あぁ、偽名を使っているので少し面倒なことになってしまいましたかね。」
「依頼書には本名でお願いします。…じゃなくて!」
お前が依頼主だったのかよ!道理で誰も来ないわけだよ。もうここにいたんだからな!言えよ、最初に!
「もちろん内容は本物ですので、心配なさらなくて結構ですよ。依頼自体は正式なものです。」
「…そうですか。」
「ちなみに本名の方もお伝えしておきますね、これから一緒に仕事をしていくことになっていくかもしれませんし。
…申し遅れました、私はカイルと申します。先ほど少しお話した弟はアベルと言います。」
「はぁ、よろしくおねが…。」
身なり、話の内容からして高貴な家の出身。国の施策に関わるような依頼ができるような立場。兄がカイル、弟がアベルという兄弟。その要素が示す結果、それは…。
こいつこの国の第一王子じゃねぇか!!
そっちの方を先に言ってくれよ!一番大事な情報だろうが!
あぁ…、今日は安い酒を浴びるように飲んで気絶するように眠ってしまおう…。
ルゥへ、何だかんだ元気には過ごしていますが、オレはこれから胃痛と長い付き合いになりそうです…。
「妹さんだったんですねぇ。弟さんかと思ってました。」
「気になるとこそこ?」
「それでお兄さんは無事にこの町まで来ることができたと。」
「…別にオレの話とは言ってないでしょう。」
「私も別にあなただとは言っていませんが。」
「…。」
やっぱりこいつは気に入らない。ニコニコ笑いながら人の揚げ足取りやがって。話も終わったことだし、早いところ依頼人が来てほしいところなんだが。あの若い門番はまだか?
「兄妹ですかー。実は私も双子ではないんですが、弟がいましてね。」
「…はぁ。」
今度はこいつの話を聞かなきゃなんねぇのか。まぁ自分が話し続けるよりかはいいか。適当に相槌打って、依頼人が早く来てくれることを願うしかないな…。
「弟は私よりも、何と言うか、無邪気というか天真爛漫というか。悪く言えば考えが足りないと言いますか。」
「今悪く言う必要ありました?」
「多少状況をかき回すこともありますが、周りからは好かれるような人物、ということですね。私自身、自分とは違う人間性を持っていると感じています。」
「…まぁ兄弟とは言え、違う人間ですから。」
「そうですねぇ。ですが、周りの人間はよく比べたがるものです。あなたにも覚えがあるのでは?」
確かに、レイはああなのに、ルーナはこうなのにと比べられるような言い方は散々されてきたな。大抵はルーナへの苦言として言われることが多かったが、オレたちが昔から煩わしいと思っていた会話ランキングでダントツだ。いや世の中の兄弟姉妹がいる人間がつけるランキング100年連続1位。もしくは「お兄さんなんだから」「お姉さんなんだから」と1位争いしているに違いない。
オレたちに関しちゃ双子なんだから、兄だろうが妹だろうが大して変わりがないっての。…子供の頃は、親に言われるままだからあまり疑問には思わないだろうが。
「まぁとにかく、自分にはない個性を持っている人間は、自分よりも優れているように思えてくるわけです。あなたが妹さんに村長の座を譲ったように。」
「だから、さっきの話はオレの話ってわけじゃ…。」
「そうでしたね。私も親から後継者として幼少の頃から指導されていましてね…。これがまた憂鬱なわけです。自分がやりたいことは、必ずしもそれではないということが分かっていない。いや、分かっていてもそんなことは関係ないと思っているのかもしれませんが。」
「…そう、かもしれませんね。」
親にどれだけ嫌だと訴えても、窘められる程度で代わりにルゥを連れていく、何てことはなかったな。あの時はルゥも嫌がっているのかと思っていたが、そういうわけでもなかったんだよな。ほんと、早いうちにあいつの気持ちや考えに気づいてやれていたら、せめて親父との仕事に一緒に来るように仕向けられたのかもしれない。
「ですが私は諦めません。」
「は?」
「私はいずれ、弟に継承権を譲るつもりでいるのです。最悪私が一旦継承して即後継者として指名して隠居するとか、そんなことも考えていましたが…。
そんな回りくどいことをしないでも、早々に皆には私が継承することを諦めてもらおうかと!今模索中ではあるのですが、その一端として今回の件を提案させていただきました。」
「そうですか…。ん?今回の件?」
「えぇ、今回あなた方何でも屋に相談させていただいた件に関してですが。…あなたはその件で来てくださったのでは?」
「え、は、そうですが…。提案させていただいたって。」
「はい、先日相談に伺ったのは私です。あぁ、偽名を使っているので少し面倒なことになってしまいましたかね。」
「依頼書には本名でお願いします。…じゃなくて!」
お前が依頼主だったのかよ!道理で誰も来ないわけだよ。もうここにいたんだからな!言えよ、最初に!
「もちろん内容は本物ですので、心配なさらなくて結構ですよ。依頼自体は正式なものです。」
「…そうですか。」
「ちなみに本名の方もお伝えしておきますね、これから一緒に仕事をしていくことになっていくかもしれませんし。
…申し遅れました、私はカイルと申します。先ほど少しお話した弟はアベルと言います。」
「はぁ、よろしくおねが…。」
身なり、話の内容からして高貴な家の出身。国の施策に関わるような依頼ができるような立場。兄がカイル、弟がアベルという兄弟。その要素が示す結果、それは…。
こいつこの国の第一王子じゃねぇか!!
そっちの方を先に言ってくれよ!一番大事な情報だろうが!
あぁ…、今日は安い酒を浴びるように飲んで気絶するように眠ってしまおう…。
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