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ある悪ガキの話~キョウダイ➀~
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今日も今日とて、使いっ走りとして任務を帯びた、または押し付けられたレイ。しかし、今日のお使いは普段のものとは一味違う。何せ目的地がお城だというのだから、あまり物事を重く受け止めない性格だと自負している自分も、何となく腹の下がムズムズして落ち着かない。
どうにかして気を紛らわせようと、既に見慣れた街並みを眺めながら歩いていたが、大して気持ちも整わぬままに城門へとたどり着いてしまった。
「む、何か用か。」
「あぁ、えっと…。これを届けに来たんだ。」
城へと向かってくるレイに気がついたのか、立っていた門番が声をかけてくる。こういった堅苦しい場所は、自分に何も落ち度がないにしてもなぜか身構えてしまう。いるだけで疲れてしまうような場所は、やはり苦手だ。
ユイから預かった手紙を見せると、門番の男は首をかしげる。
「手紙…。直接か?」
「ちょっと訳ありでな。手紙の相手に関しては…、こいつを出せば分かるって聞いて来たんだが。」
「確認しよう。」
正直、オレがここに来たのは城からの呼び出しに応じるって返事をするためなのだが、オレたちからすればとんでもなく高い壁にぶち当たっている状況のなので、少しでも失礼のないように、確実に対応しろとのユイからのお達しだ。普通なら門番に伝言を頼むなりしてもいいのかもしれないが、不安すぎると。
とは言え、オレはユイに依頼した男が誰か分からないので、こうしてその時に書いてもらったという相談依頼書をそのまま拝借してきた。だがなぜか、門番の男はさらに首をかしげている。
「…どうかしたのか?何か、不都合なことでも?」
「いや、内容は問題ない。というか、君は最近噂に聞く何でも屋だったのだな。国王様への説明に関して…。この依頼書の依頼人に会いたいということだな。しかし、うーむ…。」
「先輩、どうかしましたか?」
何か不備でもあったのだろうか。情報の行き違いがないように、どうにかして依頼してきた人間に直接返事をするようにしたいところだが、そのための手掛かりとなるのはこの依頼書だけ。依頼人がどんな奴かは直接対応したユイしか分からないし…。
出直すしかないか。そう思い浮かんだところに、もう一人の門番が近づいてきた。今までオレに対応していた門番よりも若いようだ。初めからこいつに話しかけてもらえていたら、多少気が楽だったかもな。
「あぁ、これなんだが…。この人物に会いに来たというのだが、思い当たらんくてな。」
「どれどれ…って!」
「どうした。誰か分かるのか。」
「あ、いえ、そのっ…。」
「はっきりせん奴だな。どこにいるんだ、そいつは。必要なら呼んできてやるから。」
「いぃぃいえ!そんなわけには…!」
「は?」
「あ、えっと、実はっ、自分、もしこの用件で尋ねてくる人がいたら、お通しするように言付かっておりまして!はい!」
「言付かってぇ?何だってお前に。しかも国王様への事業説明に関してなんて、そこらの下っ端の担当じゃないだろ。誰からの命令なんだ。」
「は、機密事項にて、内密にせよとのことでして!はい!」
「…だから、何でお前に…。はぁ、本当に言付かってんだろうなぁ。」
「もちろんです!」
「まったく…。では君、名前は。」
「レイってもんだ。」
「何か危険なものを持っていないか、一応確認させてもらう。」
「おう。」
城の中に入るのに、物騒なものを持っていないか体を叩かれながら確認される。本気で城に侵入しようとする奴なんかは、この程度で分かるような仕込み方をしていないだろう。果たしてどれだけの効果があるのかは分からないが、とりあえず、といった作業に大人しく応じる。
「…こんなものか。責任持って案内するように。」
「もちろんです!レイさん、自分が案内させていただきます!こちらです!さぁ!」
「おー…。」
「本当に大丈夫なんだろうなぁ…。」
それは俺のセリフだぜ、門番のおっさん…。
若い門番に案内されることになったが、やけに急かされる。確かにさっさと済ませられるなら、ありがたいことでもあるが…。それに、なぜか周りをキョロキョロと確認しながら進むので、これではオレよりもこいつの方が不審者じみている。城で働いている奴がこんな様子になるなんて、いったいオレは誰に会おうとしていて、どこに連れていかれようとしているのか…。
どうにかして気を紛らわせようと、既に見慣れた街並みを眺めながら歩いていたが、大して気持ちも整わぬままに城門へとたどり着いてしまった。
「む、何か用か。」
「あぁ、えっと…。これを届けに来たんだ。」
城へと向かってくるレイに気がついたのか、立っていた門番が声をかけてくる。こういった堅苦しい場所は、自分に何も落ち度がないにしてもなぜか身構えてしまう。いるだけで疲れてしまうような場所は、やはり苦手だ。
ユイから預かった手紙を見せると、門番の男は首をかしげる。
「手紙…。直接か?」
「ちょっと訳ありでな。手紙の相手に関しては…、こいつを出せば分かるって聞いて来たんだが。」
「確認しよう。」
正直、オレがここに来たのは城からの呼び出しに応じるって返事をするためなのだが、オレたちからすればとんでもなく高い壁にぶち当たっている状況のなので、少しでも失礼のないように、確実に対応しろとのユイからのお達しだ。普通なら門番に伝言を頼むなりしてもいいのかもしれないが、不安すぎると。
とは言え、オレはユイに依頼した男が誰か分からないので、こうしてその時に書いてもらったという相談依頼書をそのまま拝借してきた。だがなぜか、門番の男はさらに首をかしげている。
「…どうかしたのか?何か、不都合なことでも?」
「いや、内容は問題ない。というか、君は最近噂に聞く何でも屋だったのだな。国王様への説明に関して…。この依頼書の依頼人に会いたいということだな。しかし、うーむ…。」
「先輩、どうかしましたか?」
何か不備でもあったのだろうか。情報の行き違いがないように、どうにかして依頼してきた人間に直接返事をするようにしたいところだが、そのための手掛かりとなるのはこの依頼書だけ。依頼人がどんな奴かは直接対応したユイしか分からないし…。
出直すしかないか。そう思い浮かんだところに、もう一人の門番が近づいてきた。今までオレに対応していた門番よりも若いようだ。初めからこいつに話しかけてもらえていたら、多少気が楽だったかもな。
「あぁ、これなんだが…。この人物に会いに来たというのだが、思い当たらんくてな。」
「どれどれ…って!」
「どうした。誰か分かるのか。」
「あ、いえ、そのっ…。」
「はっきりせん奴だな。どこにいるんだ、そいつは。必要なら呼んできてやるから。」
「いぃぃいえ!そんなわけには…!」
「は?」
「あ、えっと、実はっ、自分、もしこの用件で尋ねてくる人がいたら、お通しするように言付かっておりまして!はい!」
「言付かってぇ?何だってお前に。しかも国王様への事業説明に関してなんて、そこらの下っ端の担当じゃないだろ。誰からの命令なんだ。」
「は、機密事項にて、内密にせよとのことでして!はい!」
「…だから、何でお前に…。はぁ、本当に言付かってんだろうなぁ。」
「もちろんです!」
「まったく…。では君、名前は。」
「レイってもんだ。」
「何か危険なものを持っていないか、一応確認させてもらう。」
「おう。」
城の中に入るのに、物騒なものを持っていないか体を叩かれながら確認される。本気で城に侵入しようとする奴なんかは、この程度で分かるような仕込み方をしていないだろう。果たしてどれだけの効果があるのかは分からないが、とりあえず、といった作業に大人しく応じる。
「…こんなものか。責任持って案内するように。」
「もちろんです!レイさん、自分が案内させていただきます!こちらです!さぁ!」
「おー…。」
「本当に大丈夫なんだろうなぁ…。」
それは俺のセリフだぜ、門番のおっさん…。
若い門番に案内されることになったが、やけに急かされる。確かにさっさと済ませられるなら、ありがたいことでもあるが…。それに、なぜか周りをキョロキョロと確認しながら進むので、これではオレよりもこいつの方が不審者じみている。城で働いている奴がこんな様子になるなんて、いったいオレは誰に会おうとしていて、どこに連れていかれようとしているのか…。
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