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あるのっぽの話~兄弟③~
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家族みんなが忙しくしている間、僕が家のことをはじめとする雑用をこなす。そんな日々が変わらず続いていた。
そんなある日、父さんの診療所に急患が運び込まれた。大人2名。彼らは僕もよく知った夫婦だった。
「いるか、先生!急患だ!」
「診てやってくれ!出血がひどい!」
「いったいどうした!」
家からでも聞こえた異様な騒ぎに、僕も診療所を覗き込んだから、その時のことはよく覚えている。忘れられるはずもない。ひどい有様だった。担ぎ込まれた2人の体から大量の血が流れだし、運んできたであろう人の体までも真っ赤に染め上げていた。2人とも既に意識はないのだろう。ぐったりとしてピクリとも動かない。女性の薄く開いた口元からは血の気が感じられず、男性の方は、両足がなかった。
「作物の出荷に出たところを、魔獣に襲われたんだ!」
「あの道は国に魔獣被害を訴えていただろう!」
「こんな田舎まで兵士が出張ってくるはずがねぇ!」
「でも、生きてくためには…!」
「俺たちは見て見ぬふりか!上の奴ら…!」
「もういい!患者が優先だ!」
「先生…。」
「みんな、よくここまで運んでくれた。だがここからは部外者は席を外してもらう。アレックス!お前もだ!」
「!!」
「グライス!母さんと一緒に処置室の準備を。」
「はい!」
「処置に必要な薬品を取って来ます!」
父さんは人払いをするように村の人へと伝えていた。部外者を遠ざけ、緊急性のない患者には一旦診療を中止するようにと。父さんの思う部外者には、僕も含まれていた。
父さんは兄さんと母さんを引き連れて、患者さんと共に奥へと入ってしまった。僕へと目を向けることもなかった。今は患者さんが最優先だ、父さんが言ってたじゃないか。この状況からしたら当然だ。僕が今役に立てることなんて、父さんたちの邪魔をしないことだけだ。
それに、僕には気がかりなことがあった。こうしてはいられない、行かなきゃ。
やりかけだった家事を投げ出して、家とは違う方向に走り出した。
「アレックスー!」
「あ、レイ!」
ある場所に向かって走っていると、別の道から走って来るレイに出くわした。いつもとは違ったきっちりした服を着ているあたり、今日はお父さんから逃げ出せなかったようだ。
しかし、この騒動の中では勉強を続けられるはずもなく、こうして抜け出してきたみたいだ。普段であれば遊びに行くところだろうが、今日はそうもいかない。レイの顔色は悪く、引きつっている。きっと僕もそうだろう。
「おい、話は本当なのか!?」
「う、うん…!だから僕、いてもたってもいられなくて…。」
「早いところ行こうぜ!あいつが心配だ!」
「うん!」
レイは既にこの状況を知っているようだった。それもそうか。この村の重要な出来事は真っ先にレイの家へと伝えられる。きっと父さんが帰した村の人が、伝えに行った時に聞いたのだろう。
レイと一緒に目的の場所へと走り出す。僕たちの向かう場所はこの村の少しはずれ。あの夫婦はそこで農業をしていた。
そして2人は、ウィルの両親だ。
そんなある日、父さんの診療所に急患が運び込まれた。大人2名。彼らは僕もよく知った夫婦だった。
「いるか、先生!急患だ!」
「診てやってくれ!出血がひどい!」
「いったいどうした!」
家からでも聞こえた異様な騒ぎに、僕も診療所を覗き込んだから、その時のことはよく覚えている。忘れられるはずもない。ひどい有様だった。担ぎ込まれた2人の体から大量の血が流れだし、運んできたであろう人の体までも真っ赤に染め上げていた。2人とも既に意識はないのだろう。ぐったりとしてピクリとも動かない。女性の薄く開いた口元からは血の気が感じられず、男性の方は、両足がなかった。
「作物の出荷に出たところを、魔獣に襲われたんだ!」
「あの道は国に魔獣被害を訴えていただろう!」
「こんな田舎まで兵士が出張ってくるはずがねぇ!」
「でも、生きてくためには…!」
「俺たちは見て見ぬふりか!上の奴ら…!」
「もういい!患者が優先だ!」
「先生…。」
「みんな、よくここまで運んでくれた。だがここからは部外者は席を外してもらう。アレックス!お前もだ!」
「!!」
「グライス!母さんと一緒に処置室の準備を。」
「はい!」
「処置に必要な薬品を取って来ます!」
父さんは人払いをするように村の人へと伝えていた。部外者を遠ざけ、緊急性のない患者には一旦診療を中止するようにと。父さんの思う部外者には、僕も含まれていた。
父さんは兄さんと母さんを引き連れて、患者さんと共に奥へと入ってしまった。僕へと目を向けることもなかった。今は患者さんが最優先だ、父さんが言ってたじゃないか。この状況からしたら当然だ。僕が今役に立てることなんて、父さんたちの邪魔をしないことだけだ。
それに、僕には気がかりなことがあった。こうしてはいられない、行かなきゃ。
やりかけだった家事を投げ出して、家とは違う方向に走り出した。
「アレックスー!」
「あ、レイ!」
ある場所に向かって走っていると、別の道から走って来るレイに出くわした。いつもとは違ったきっちりした服を着ているあたり、今日はお父さんから逃げ出せなかったようだ。
しかし、この騒動の中では勉強を続けられるはずもなく、こうして抜け出してきたみたいだ。普段であれば遊びに行くところだろうが、今日はそうもいかない。レイの顔色は悪く、引きつっている。きっと僕もそうだろう。
「おい、話は本当なのか!?」
「う、うん…!だから僕、いてもたってもいられなくて…。」
「早いところ行こうぜ!あいつが心配だ!」
「うん!」
レイは既にこの状況を知っているようだった。それもそうか。この村の重要な出来事は真っ先にレイの家へと伝えられる。きっと父さんが帰した村の人が、伝えに行った時に聞いたのだろう。
レイと一緒に目的の場所へと走り出す。僕たちの向かう場所はこの村の少しはずれ。あの夫婦はそこで農業をしていた。
そして2人は、ウィルの両親だ。
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