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結果は…
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「この間の検査の結果だけど…。」
「はい…。」
例にもれず、日を改めて胃カメラ検査(仮…もういらんかこの表記)の結果を聞きに病院へ。以前のエコー検査と違って、私がチラ見をして分かるような結果は張り出されていない。先生の口から伺うより他ない、緊張の一瞬だ。
「…問題なかったです。前から分かっていた弁の位置がずれている以外の奇形は認められませんでした。」
「…あ、ありがとうございます…!」
「よかったです。…でも、心臓に負担がかかっていることは変わりませんから、心臓のエコー検査は少し期間を開けてもう一回行いたいと思います。半年後くらいになりますね。」
「半年後…。」
「ちょっと先の話にはなるけど、このまま予約もしてしまいますね。」
検査の結果は無事異常なし、とのこと。とはいえ、元々奇形がある事実は変わらないので、このまま継続してみていく必要があるとのことだ。
次回は半年後…。すでに季節は夏に移り変わろうとしていた。
「…結果、どうだった?」
「ん、問題なかった。」
「よかったね…!」
「うん。でもやっぱり検査は続けていくようにした方がいいって。半年後にまたエコー検査しに来てってさ。」
「そっか…。でも、これでいったん落ち着いた…ってことなのかな。」
「そうじゃない?これで毎週のように病院に向かう日々とはおさらばだ!」
家に帰ると、母さんは心配そうに結果を聞いてくる。問題なしとの返事に、安心したように息を吐く。
確かに私も安心した。いったん落ち着いたというのも、そう間違いではないだろう。
しかし私は今回の件を受けて考えていたことがあるのだ。
「…ねぇ、母さん。」
「え?何?」
「うちさ、投資始めようと思う。」
「…は?」
「投資。株。」
「いやそれは分かるし、いいと思うけど…。」
「前から気になってたんだよねー、投資。」
そう、今回の騒動全体を受けて、私はよくよく考えてみることにしたのだ。
そして昔からやりたかったこと、いつかやろうと思っていたことを、今やろうと思い立った。
いつかそろえようと思っていたコミックスを大人買いするとか、投資を始めてみるとか、映画を見に行くとか、小説を書いてみるとか。
来ないかもしれない『いつか』のために、今我慢するのをやめようと。
「元々さ、現場仕事を歳いってからも続けるつもりはないんだけど、それが早まる可能性もなくはないからさ。それに備えてっていうか。」
「…。」
「ま、現代の経済から考えても、せっせと働くだけでなんとかなるような老後って難しいと思うのよね。金利だって渋いし。それでいいこともあるだろうけど。銀行に預けてるだけでお金が増える、なんて時代はとっくの昔に終わってるわけだし。こういうのは、若いうちから時間をかけて始めとかないとね。」
「…そっか、応援するよ。頑張って!」
「本当に声援だけー?お金の方の応援も、随時受け付けてますよー。」
「あはは、無理無理。」
死ぬまで現役、という目標を掲げることが悪いとは言わないが、正直達成は相当難しいだろう。私は死ぬ時ですら前のめりに、なんてスタンスではないのだ。
何より、自分の人生が平々凡々に済みそうにないことは、今回発覚してしまったわけだし。
「…では、半年ぶりにエコー検査をしてもらったわけですが…。」
「はい。」
それから半年間。自分なりに株やお金に関して勉強してみたり考えてみたり…。そして結構出かけるようになった。あくまで当社比(自分)といった具合ではあるけれど、完全にインドア派だった自分にしてみれば、今までになかった現象だ。映画だって一人で見に行く。…食事に関してはまだチェーン店以外は緊張するかな。とはいえ、こうして検査結果を聞きに来ているこの時期に、大人買いしたコミックスの映画放映も控えている。忙しくなるぞ…!
「半年前の検査結果と変わりないですね。肥大化が大きく進んでいるような様子は見られません。」
「…そうですか…!」
「この感じだと、次回は一年後にしておきましょうか。その期間内に何か異変や痛みなんかがあったらすぐに受診してください。」
「はい、ありがとうございます。」
「予約今もうしておきますね。お大事に。」
「はい。ありがとうございました。」
一年後の検査の予約票をもらって病院を出る。不安混じりのため息は、白い息になって解けて消えた。
雪がちらつくような曇天だが、気持ちは清々しいほどに晴れ渡っている。
「はい…。」
例にもれず、日を改めて胃カメラ検査(仮…もういらんかこの表記)の結果を聞きに病院へ。以前のエコー検査と違って、私がチラ見をして分かるような結果は張り出されていない。先生の口から伺うより他ない、緊張の一瞬だ。
「…問題なかったです。前から分かっていた弁の位置がずれている以外の奇形は認められませんでした。」
「…あ、ありがとうございます…!」
「よかったです。…でも、心臓に負担がかかっていることは変わりませんから、心臓のエコー検査は少し期間を開けてもう一回行いたいと思います。半年後くらいになりますね。」
「半年後…。」
「ちょっと先の話にはなるけど、このまま予約もしてしまいますね。」
検査の結果は無事異常なし、とのこと。とはいえ、元々奇形がある事実は変わらないので、このまま継続してみていく必要があるとのことだ。
次回は半年後…。すでに季節は夏に移り変わろうとしていた。
「…結果、どうだった?」
「ん、問題なかった。」
「よかったね…!」
「うん。でもやっぱり検査は続けていくようにした方がいいって。半年後にまたエコー検査しに来てってさ。」
「そっか…。でも、これでいったん落ち着いた…ってことなのかな。」
「そうじゃない?これで毎週のように病院に向かう日々とはおさらばだ!」
家に帰ると、母さんは心配そうに結果を聞いてくる。問題なしとの返事に、安心したように息を吐く。
確かに私も安心した。いったん落ち着いたというのも、そう間違いではないだろう。
しかし私は今回の件を受けて考えていたことがあるのだ。
「…ねぇ、母さん。」
「え?何?」
「うちさ、投資始めようと思う。」
「…は?」
「投資。株。」
「いやそれは分かるし、いいと思うけど…。」
「前から気になってたんだよねー、投資。」
そう、今回の騒動全体を受けて、私はよくよく考えてみることにしたのだ。
そして昔からやりたかったこと、いつかやろうと思っていたことを、今やろうと思い立った。
いつかそろえようと思っていたコミックスを大人買いするとか、投資を始めてみるとか、映画を見に行くとか、小説を書いてみるとか。
来ないかもしれない『いつか』のために、今我慢するのをやめようと。
「元々さ、現場仕事を歳いってからも続けるつもりはないんだけど、それが早まる可能性もなくはないからさ。それに備えてっていうか。」
「…。」
「ま、現代の経済から考えても、せっせと働くだけでなんとかなるような老後って難しいと思うのよね。金利だって渋いし。それでいいこともあるだろうけど。銀行に預けてるだけでお金が増える、なんて時代はとっくの昔に終わってるわけだし。こういうのは、若いうちから時間をかけて始めとかないとね。」
「…そっか、応援するよ。頑張って!」
「本当に声援だけー?お金の方の応援も、随時受け付けてますよー。」
「あはは、無理無理。」
死ぬまで現役、という目標を掲げることが悪いとは言わないが、正直達成は相当難しいだろう。私は死ぬ時ですら前のめりに、なんてスタンスではないのだ。
何より、自分の人生が平々凡々に済みそうにないことは、今回発覚してしまったわけだし。
「…では、半年ぶりにエコー検査をしてもらったわけですが…。」
「はい。」
それから半年間。自分なりに株やお金に関して勉強してみたり考えてみたり…。そして結構出かけるようになった。あくまで当社比(自分)といった具合ではあるけれど、完全にインドア派だった自分にしてみれば、今までになかった現象だ。映画だって一人で見に行く。…食事に関してはまだチェーン店以外は緊張するかな。とはいえ、こうして検査結果を聞きに来ているこの時期に、大人買いしたコミックスの映画放映も控えている。忙しくなるぞ…!
「半年前の検査結果と変わりないですね。肥大化が大きく進んでいるような様子は見られません。」
「…そうですか…!」
「この感じだと、次回は一年後にしておきましょうか。その期間内に何か異変や痛みなんかがあったらすぐに受診してください。」
「はい、ありがとうございます。」
「予約今もうしておきますね。お大事に。」
「はい。ありがとうございました。」
一年後の検査の予約票をもらって病院を出る。不安混じりのため息は、白い息になって解けて消えた。
雪がちらつくような曇天だが、気持ちは清々しいほどに晴れ渡っている。
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