28歳、曲がり角

ふくまめ

文字の大きさ
上 下
4 / 18

病院のシーフードカレー

しおりを挟む
このあたりで閑話休題といこう。
ここ数日、今までにないような頻度で病院に通うことになってしまっているので、病院の食堂でお昼を食べてから出勤することが多くなった。実は子供の頃、本当に小さいころだが、体が弱くて通院していた時期がある。その時と通っている病院は違うが、その時に食べたうどんを思い出す。軟らかく煮られた麺に温かい汁が検査や治療で疲れたお腹に染みるのだ、これが。
それはそれとして、今日はシーフードカレーを頼むが。

(この前は普通のカレー頼んだからなぁ。今日はシーフードにしよー。)

カレーが嫌いだという人間が、この世の中にいるのだろうか。そんな人間は存在しない、私はそう思っている。異論は認めよう。
カレーが、というか含まれている野菜や肉が苦手、という人は好まないかもしれない。具材の準備に少々手間取るが、その具材を煮込んで溶け出した栄養も余すところなくいただけてしまう、究極の料理。それがカレー。シチューもそうだろう。野菜スープもそうかな。…意外と究極の料理あるな。とにかくインドの方々に感謝。
とどのつまり、私はカレーが好きなのである。好きな食べ物ランキング第二位に君臨している料理だ。ちなみに第一位はそば。

「シーフードカレーのお客様ー。」
「はーい。ありがとうございます。」

セルフサービスの水も用意して、おしぼりで手を拭いて準備万端。では。

「いただきます。」

結論から言おう。結構辛い。

(あれ?これ…辛いな…?待て結構辛いぞ!?病院という幅広い年齢層の男女が出入りするこの環境で、スパイシーカレーと銘打っているのであればいざ知らず、シーフードカレーという名で登場するには少々刺激的なのでは?)

カレーが辛いのは当然でしょうとお思いのそこのあなた、我が家では甘口のルゥが必須なのである。理由はお分かりだろうが、私はそこまで辛い物に耐性があるわけではないのだ。我が家はあまり辛い物が得意でない人間が多く、昔からカレーは甘口なのだ。それでもカレーは好きだ。甘口カレー、いいでしょうに。何が言いたいのかというと、汗を滲ませながらカレーを口に運んでいる私は何も悪くはないということだ。

「…ごちそうさまでした…っ!」

完食。完璧である。想定よりも時間がかかってあわよくば食後にパフェでも追加注文でもしながらゆっくりしようと思っていた時間は無くなってしまったが、十分仕事に間に合う時間。うん、大丈夫。仕上げとばかりにコップに残っていた水を一気に流し込み、カウンターに食器を下げる。職員の方にごちそうさまでしたと小声で添えるのも忘れない。
春になったばかりの季節、日差しは暖かいがまだ風は冷たい。カレーで火照った体にはむしろ気持ちいい。清々しさすら感じる気持ちで職場へと向かう。途中隣の部署のお姉さんが車で出勤するところに出くわし、職場まで乗せてくれるという。なんてありがたい。お優しい…。

「職場まであと少しですし、そのまま行ってくださって良かったですのに…。わざわざありがとうございますー。」
「いやいや何言ってんの!まだ寒いしさー、一人で歩いてるとこ見たらほっとけないよ!病院行ってるって聞いたけど、大丈夫?」
「体感としては健康なんですけどねー。お騒がせしております。正直検査の結果がまだで何とも言えないんですけど…。あ、でも今日分かったこともあります。」
「え、どうだったの?」
「病院のシーフードカレーはけっこう辛いですね。」
「なんて?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

旧・革命(『文芸部』シリーズ)

Aoi
ライト文芸
「マシロは私が殺したんだ。」マシロの元バンドメンバー苅谷緑はこの言葉を残してライブハウスを去っていった。マシロ自殺の真相を知るため、ヒマリたち文芸部は大阪に向かう。マシロが残した『最期のメッセージ』とは? 『透明少女』の続編。『文芸部』シリーズ第2弾!

デッドライン

もちっぱち
ライト文芸
破壊の先に何があるか 国からの指示で  家電や家の全てのものを没収された とある村での話。 全部失った先に何が出来るか ありそうでなかった リセットされた世界で 生きられるか フィクション ストーリー

振られた私

詩織
恋愛
告白をして振られた。 そして再会。 毎日が気まづい。

咲かない桜

御伽 白
ライト文芸
とある山の大きな桜の木の下で一人の男子大学生、峰 日向(ミネ ヒナタ)は桜の妖精を名乗る女性に声をかけられとあるお願いをされる。 「私を咲かせてくれませんか?」  咲くことの出来ない呪いをかけられた精霊は、日向に呪いをかけた魔女に会うのを手伝って欲しいとお願いされる。  日向は、何かの縁とそのお願いを受けることにする。  そして、精霊に呪いをかけた魔女に呪いを解く代償として3つの依頼を要求される。  依頼を通して日向は、色々な妖怪と出会いそして変わっていく。  出会いと別れ、戦い、愛情、友情、それらに触れて日向はどう変わっていくのか・・・  これは、生きる物語 ※ 毎日投稿でしたが二巻製本作業(自費出版)のために更新不定期です。申し訳ありません。

もう一度『初めまして』から始めよう

シェリンカ
ライト文芸
『黄昏刻の夢うてな』ep.0 WAKANA 母の再婚を機に、長年会っていなかった父と暮らすと決めた和奏(わかな) しかし芸術家で田舎暮らしの父は、かなり変わった人物で…… 新しい生活に不安を覚えていたところ、とある『不思議な場所』の話を聞く 興味本位に向かった場所で、『椿(つばき)』という同い年の少女と出会い、ようやくその土地での暮らしに慣れ始めるが、実は彼女は…… ごく平凡を自負する少女――和奏が、自分自身と家族を見つめ直す、少し不思議な成長物語

実体化したのは俺が描いたキャラクター

食害
青春
とあることがきっかけで不登校になってしまった俺、「徠」は部屋にこもり趣味の絵を描くことにハマっていた。 両親はそんな俺を責め立てることなく、たくさんの画材を与えてくれていた。 だが、そんなある日たまたま両親から貰った"ペン"で絵を描いていた時、突然紙から手が飛び出してきて……!?

地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!

めーぷる
恋愛
 見た目はどこにでもいそうな地味系女子の小鳥風音(おどりかざね)が、ようやく就職した会社で何故か社長秘書に大抜擢されてしまう。  秘書検定も持っていない自分がどうしてそんなことに……。  呼び出された社長室では、明るいイケメンチャラ男な御曹司の社長と、ニコリともしない銀縁眼鏡の副社長が風音を待ち構えていた――  地味系女子が色々巻き込まれながら、イケメンと美形とぶつかって仲良くなっていく王道ラブコメなお話になっていく予定です。  ちょっとだけ三角関係もあるかも? ・表紙はかんたん表紙メーカーで作成しています。 ・毎日11時に投稿予定です。 ・勢いで書いてます。誤字脱字等チェックしてますが、不備があるかもしれません。 ・公開済のお話も加筆訂正する場合があります。

非実在系弟がいる休暇

あるふれん
ライト文芸
作家である「お姉ちゃん」は、今日も仕事の疲れを「弟くん」に癒してもらっていた。 とある一点を除いてごく普通の仲良し姉弟に、創作のお話のような出来事が訪れる。

処理中です...