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Ex.それからの事とこれからの事
猫博士による補講
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「まぁそれはそうと、人間が実際に猫ちゃんと生活を共にするようになったのは、大事な食料や書物をネズミなどの害獣から守るためだったと言われています。」
「今みたいに可愛がる目的じゃないんすね。」
「しっかり仕事があったんですね。でももちろん可愛がられていたとは思いますよ、なんたって猫ちゃんですから!」
「確かに。」
「エジプトと言えばミイラですが、猫ちゃんのミイラも見つかっているそうです。大事にされていた証拠ですよね。」
猫のミイラ…。それはそれで複雑なような。
「エジプトではワンちゃんも飼われていたようですね。名前も付けられて、家族のように過ごしていたことが伺える記録があるそうです。同じイヌ科の狼なんかが墓地によく出没することから、死者に関係深いと考えられてアヌビスという神様は黒い犬のような頭を持っています。」
「犬神様。」
「日本にも犬神はいますが、だいぶと違う存在ですね。アヌビスは冥界、つまり死者の国で裁判の手伝いをしている存在と言われています。」
何だか踊りが好きなバステトという猫神と違って、お堅い感じがする神様だな。…まぁ犬って義理堅いっていうか、しっかり者のイメージが確かにあるけども。
「ミイラを作ったり死者の魂を冥界に運んだり、魔術もできて裁判の補佐もして…。かなり優秀な神様なんですねぇ。」
「…浮気っすか。」
「へ?」
「あんなに猫ちゃん猫ちゃん言ってたのに。」
「え、いや、これはそういうことじゃ…!もちろん猫ちゃん大好きですよ!」
「…じゃあいいっすけど。」
「…だからって、ワンちゃんが嫌いなわけでもないんだけど…。」
「何か?」
「いえ何も!ともかく、様々な動物を神聖視していた、ということですね。中には虫の頭を持つ神様もいたとか。」
「それって偉いんすか…?」
「うーん、私たちの感覚からしたら不思議ですよね…。でもその神様は太陽神ですよ。複数の姿を持つ神様も珍しくないようなので、いくつかある姿のうちの1つが虫の姿なんでしょうね。」
当時の人間の感性はよく分からないが…。まぁその時代なりの敬い?みたいなもんがあったんだろうな。エジプトは砂漠にあるし、そこで生きていくこと自体が大変なのは想像できる。そんな場所でたくましく生きている生き物が神聖なもんに見えるってのは、分からないでもない。…でも太陽神の姿に虫を採用するのはやっぱり理解できない。
「ちなみにその太陽神、ラーという神様はすでに地上の統治を子孫である神々に任せて天上におられるそうなのですが、アヌビスもその家系なんだそうです。」
「家族経営なんすか、神様って。」
「経営って…世界の運営ですけどね。まぁ神話の初期はやはり神様も数が多くありませんからねぇ。そのあたりは兄妹間での婚姻でお話が進みますから。」
「え…。」
「神話ですからね!神様の感覚は私たち人間とは違うでしょうし…!そもそも婚姻すら必要としなかった神様も…いやその話はいいか。」
「?」
「とにかく、優秀なアヌビスも意外と苦労人なんですよ。なぜかそこに昼ドラも真っ青のドロドロ恋愛事件が巻き起こるんですよ…。」
「神話なのに…?」
「神話なのに。」
神様なんて、そこら辺さっぱりしてるもんだと思ってたんだが…。あんまり感情的にならなさそうというか。そういうとこは人間に似ている…いや人間が似ているというべきなのか…。
「まず4人の兄妹が生まれ、そのうち長兄と長女、次男と次女という2つの夫婦が誕生します。」
坂本さんが両手でピースサインをして説明を始める。本人は真剣そのものなのだが、ちょっと間の抜けた格好に見えてしまって笑いを必死にこらえる。それに気がついていないのか、坂本さんはさらに説明を続ける。
「ところがこの次女は、一番上のお兄さんのことが好きだったんです。」
「ん?」
「家族愛とかそういったレベルではなく、完全に男女の仲として、です。お姉さんとすでに結婚しているにも関わらず、関係を持とうと迫るのです。…ちなみに長男ご夫妻は仲良しですよ?」
「は、はぁ…。」
「もうそれはそれは熱烈でして…。しまいには手段を選ばずお姉さんに化けてまで関係を持ったんだそうです。…その結果、彼女は妊娠。出産するのですが、実は夫である次男は長男を敵視していまして…。事がバレればただでは済まないということで、その子を捨ててしますのです。」
「…。」
「その子は他の神に拾われて育てられるのですが、その親に捨てられて別の神様によって育てられたのがアヌビスと言われています。…ちなみに拾って育てたのが長女である神様だといわれています。」
坂本さんが指を折ったり交差させながら説明してくれているが、話が進むにつれてよく分からなくなってきた…。兄妹同士で結婚していて、兄妹間で不倫していて…?もう何なんだよこの世界観。
「簡単に言うと、夫と妹が不倫して生まれた子が捨てられ、その子をお姉さんが拾って育てた、ということですね。」
どこが簡単になっているのか分からないが、とにかく今後は犬にも優しくしてやろうと思った。
「今みたいに可愛がる目的じゃないんすね。」
「しっかり仕事があったんですね。でももちろん可愛がられていたとは思いますよ、なんたって猫ちゃんですから!」
「確かに。」
「エジプトと言えばミイラですが、猫ちゃんのミイラも見つかっているそうです。大事にされていた証拠ですよね。」
猫のミイラ…。それはそれで複雑なような。
「エジプトではワンちゃんも飼われていたようですね。名前も付けられて、家族のように過ごしていたことが伺える記録があるそうです。同じイヌ科の狼なんかが墓地によく出没することから、死者に関係深いと考えられてアヌビスという神様は黒い犬のような頭を持っています。」
「犬神様。」
「日本にも犬神はいますが、だいぶと違う存在ですね。アヌビスは冥界、つまり死者の国で裁判の手伝いをしている存在と言われています。」
何だか踊りが好きなバステトという猫神と違って、お堅い感じがする神様だな。…まぁ犬って義理堅いっていうか、しっかり者のイメージが確かにあるけども。
「ミイラを作ったり死者の魂を冥界に運んだり、魔術もできて裁判の補佐もして…。かなり優秀な神様なんですねぇ。」
「…浮気っすか。」
「へ?」
「あんなに猫ちゃん猫ちゃん言ってたのに。」
「え、いや、これはそういうことじゃ…!もちろん猫ちゃん大好きですよ!」
「…じゃあいいっすけど。」
「…だからって、ワンちゃんが嫌いなわけでもないんだけど…。」
「何か?」
「いえ何も!ともかく、様々な動物を神聖視していた、ということですね。中には虫の頭を持つ神様もいたとか。」
「それって偉いんすか…?」
「うーん、私たちの感覚からしたら不思議ですよね…。でもその神様は太陽神ですよ。複数の姿を持つ神様も珍しくないようなので、いくつかある姿のうちの1つが虫の姿なんでしょうね。」
当時の人間の感性はよく分からないが…。まぁその時代なりの敬い?みたいなもんがあったんだろうな。エジプトは砂漠にあるし、そこで生きていくこと自体が大変なのは想像できる。そんな場所でたくましく生きている生き物が神聖なもんに見えるってのは、分からないでもない。…でも太陽神の姿に虫を採用するのはやっぱり理解できない。
「ちなみにその太陽神、ラーという神様はすでに地上の統治を子孫である神々に任せて天上におられるそうなのですが、アヌビスもその家系なんだそうです。」
「家族経営なんすか、神様って。」
「経営って…世界の運営ですけどね。まぁ神話の初期はやはり神様も数が多くありませんからねぇ。そのあたりは兄妹間での婚姻でお話が進みますから。」
「え…。」
「神話ですからね!神様の感覚は私たち人間とは違うでしょうし…!そもそも婚姻すら必要としなかった神様も…いやその話はいいか。」
「?」
「とにかく、優秀なアヌビスも意外と苦労人なんですよ。なぜかそこに昼ドラも真っ青のドロドロ恋愛事件が巻き起こるんですよ…。」
「神話なのに…?」
「神話なのに。」
神様なんて、そこら辺さっぱりしてるもんだと思ってたんだが…。あんまり感情的にならなさそうというか。そういうとこは人間に似ている…いや人間が似ているというべきなのか…。
「まず4人の兄妹が生まれ、そのうち長兄と長女、次男と次女という2つの夫婦が誕生します。」
坂本さんが両手でピースサインをして説明を始める。本人は真剣そのものなのだが、ちょっと間の抜けた格好に見えてしまって笑いを必死にこらえる。それに気がついていないのか、坂本さんはさらに説明を続ける。
「ところがこの次女は、一番上のお兄さんのことが好きだったんです。」
「ん?」
「家族愛とかそういったレベルではなく、完全に男女の仲として、です。お姉さんとすでに結婚しているにも関わらず、関係を持とうと迫るのです。…ちなみに長男ご夫妻は仲良しですよ?」
「は、はぁ…。」
「もうそれはそれは熱烈でして…。しまいには手段を選ばずお姉さんに化けてまで関係を持ったんだそうです。…その結果、彼女は妊娠。出産するのですが、実は夫である次男は長男を敵視していまして…。事がバレればただでは済まないということで、その子を捨ててしますのです。」
「…。」
「その子は他の神に拾われて育てられるのですが、その親に捨てられて別の神様によって育てられたのがアヌビスと言われています。…ちなみに拾って育てたのが長女である神様だといわれています。」
坂本さんが指を折ったり交差させながら説明してくれているが、話が進むにつれてよく分からなくなってきた…。兄妹同士で結婚していて、兄妹間で不倫していて…?もう何なんだよこの世界観。
「簡単に言うと、夫と妹が不倫して生まれた子が捨てられ、その子をお姉さんが拾って育てた、ということですね。」
どこが簡単になっているのか分からないが、とにかく今後は犬にも優しくしてやろうと思った。
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